道徳の婚約者
俺はシュークリームを入れた袋を持って、玄関に立つ。
「おーーい。縛ーー!」
そう声を掛けると、2階から久しぶりに見るワイルドお兄さんが降りて来た。
最近はちょっとした寝癖も気にならなくなったのに、お出掛けとなると相変わらずの破壊力である。
「………正樹さん、それで行くのですか?」
俺は自分の格好を見る。
少しラフだけど、大丈夫じゃない?
そう思って、頭を傾げた。
「…………。顔がいいからって、努力しないと逃げられますよ。」
突然、縛が言い出す。
誰に!俺悪い事してないー!と思いながら、縛に手を引っ張られて、2階に行く。
ドーン
…………やだぁ〜壁ドンだぁ〜。
全然ドキドキしないわぁ。
あっ、まつげ長い〜!
ふざけた事を考えていると、目の前にコーディネートされた服が出された。
「こんな事もあるかと用意して正解でした。」
………。
俺のサイズいつ知ったのと聞きたいけど、余計な事を言ったら怒られそうなので、大人しく着替えた。
改めて、縛の用意した服を着て玄関に立つ。
うん。なんで玄関にいないの?
そう思っていると、車のエンジン音が聞こえた。
車にいるのかぁ〜、家を出て鍵を閉める。
案の定、車の中で待っていました。
どこのモデルさんでしょうね、あの方と眼福に拝んでしまう。
縛の運転でレストランに着くと、俺は思わずレストランの全貌を車の中で眺めた。
めっちゃラグジュアリーな所だぁ。
待って、膝ぷるぷるする。
ハクサマ、カンシャカンゲキ
「正樹さん、着きましたよ。」
いつの間にレストラン前に着く。
エ?チュウシャジョウハ?
「本日はご利用ありがとうございます。本日のご利用予定を伺ってもよろしいですか?」
「19時に桜庭と約束しています。」
「承知しました。では、こちらで降りて頂き、担当の者が案内いたします。」
車を降りると、縛は車の鍵を店の人に渡す。
エ?ナンデ?
店の人は、車に乗ると車をどこかに運転して行く。
「ク、クルマ。」
俺が言うと、縛が小さい声であれはドアマンで、駐車場に車を止めに行ってくれてると教えてくれた。
別世界だぁ。
「あ!シュークリーム。」
俺が思い出すと、縛は近くに居た担当にシュークリームが入っていると伝える。
「かしこまりました。では、食事後に提供いたしますね。」
持ち込みダメなんじゃ……。
そう思っていると、縛がここの店は持ち込み提供してくれるみたいと教えてくれた。
ワカリマセン、オレハドコニイルノ?
担当に部屋まで案内してもらうと、中には道徳が居た。
「あっ!先輩!ぴったりですね!」
道徳を見て少し安心した。
「モチロン、コウハイノダイジナトキニ、チコクスルワケナイダロ。」
俺がそう言うと、道徳は目を見張って、東雲さんに聞く。
「どうしたのですか?これ?」
「新しい世界に頭が追いついてないみたいなので、しばらくしたら治りますよ。」
そういうと、ふふと笑ってやがる。
それにつられて道徳も笑う………。
今に見てろ。
後ろから肩をトントンと軽く叩かれ、振り向くと、ほっぺをむにゅとされた。
………ダレデスカ?
俺のほっぺをむにゅとしているのは、和風美人が似合う女性が立っていた。
高校生?
「高校生じゃないですよ。もう20歳です。」
そう優しく答える女の子。
「先輩、口から出てますよ〜」
道徳は爆笑である。
「噂通りのイケメンですねー!」
むにゅむにゅしながら、彼女は俺の肩から顔を出すように、縛を見る。
「久しぶりです、縛さん。」
縛はそんな彼女を見ながら、珍しく驚いていた。
今日は表情筋仕事してるみたいです。
「ほ、穂乃果さん。」
縛がそう言うと、穂乃果さんはニコッと綺麗に微笑んだ。
道徳に促され、俺らが席に着くと、次々と料理が運ばれて来る。
今日は中華だぁ。
なんで??
「先輩が好きなラーメンが出るからですよ。」
またもや口に出ていたのかぁ。
ん!?ラーメン出るの!?
「え?ラーメン出るの??何の味付け?」
一気に元気になった俺を、皆が笑う。
いいもん。
ラーメンは正義です。
笑いが落ち着いた頃、俺は穂乃果さんに聞く。
「穂乃果さんはなんで縛を知っていたのですか?」
穂乃果さんは縛の方を見ると、縛は頷く。
「縛さんは、14年間同じ家で暮らした家族だからですよ。」
穂乃果さんの言葉に縛は少し驚いた。
「家族?」
道徳が聞くと、穂乃果さんが頷く。
「はい。私のお兄ちゃんです。」
「……俺はただ居候していただけです。」
縛は静かに否定した。
「縛さん、昔からそう言いますよね。」
穂乃果さんは困ったように笑う。
「でも違います。」
「学校で嫌なことがあった時、何も聞かず隣にいてくれたのも、熱を出した時に看病してくれたのも、毎年誕生日にこっそりプレゼントを用意して置いてくれたのも。」
「全部、縛さんです。」
縛は何も言わなかった。
「私にとっては、ずっと家族でした。」
穂乃果さんの目に涙が浮かぶ。
「道徳から縛さんの名前を聞いた時、もう一度会いたいって思いました。」
「お願いです。」
「お兄ちゃんとして、結婚式に来てください。」
「……。」
「正樹さんと一緒に。」
縛は少しだけ目を伏せる。
「ずっと成長を見守っていましたから。」
そして優しく笑った。
「喜んで行きますよ。」
縛は俺の手を静かに握る。
「正樹さんと一緒にね。」
「あ、はい。大事な後輩の結婚式なので、死ぬ気でも縛連れて行きますよ!」
そう言うと、また皆が笑った。
先まで泣いていた穂乃果さんは道徳に慰められ、一緒に喜んでいた。
………。
グゥー。
めっちゃ美味しそうな匂いがする。
この料理達がいけない。
俺は悪くない。
明日からは18時に1話ずつ、毎日更新とさせて頂きます。
正樹達の物語を考えるのが楽しく、今では作者自身も正樹達の人生を追っています。
追えば追うほど沼です(笑)
書きたい気持ちはたくさんありますが、残念ながら時間が足りません。
作者は現実に向き合わないといけないのです。
死ぬ気で働きます♡
ご理解頂けると嬉しいです。
私も正樹と同じ会社に入りたかったです。




