布団合戦
俺が箱を持って固まっていると、縛が近付く。
「どうしたのですか?」
俺は急いで、箱に蓋を閉める。
「あっ、なんでもないよ!小鳥遊さんが北海道のお土産何かなぁって言っててさぁ〜。」
「……電話口から、名前を何回も呼ばれてましたよ?」
………そうだった!小鳥遊さんと電話中だった!
「もしもし〜小鳥遊さんですよ〜。正樹くんどうしたのですか?小鳥遊さん、話聞いてもらえなくて悲しい。しくしく。」
電話口からそんな声が聞こえた。
「あー!ごめんなさい!!帰って来たばかりだから、疲れてぼ〜っとしちゃって〜。」
「あっ、やっと正樹くん復活しましたね。帰って来たばかりだから、無理せずに休んでくださいね〜。あっ、何か困り事があったら忘れずに小鳥遊さんにも伝えるのですよ。さっきから呼ばれているので、小鳥遊さんは仕事に戻ります。黒わんこと仲良くするのですよ。」
そう言って、小鳥遊さんは電話を切った。
顔を上げると、縛は不機嫌そうだった。
「……どうしたの?」
「何もないですよ。その箱、あのメガネのですか?」
なんで、小鳥遊さんがメガネを掛けてるの知っているんだろう〜。あっ、前迎えに来た時に見たのか〜。なるほどー。
「まぁ、そんな感じ?」
「なんで疑問系なんですか?」
そう言いながら、俺の手から箱を取り上げると、ゴミ箱に捨てた。
そういえば、前も小鳥遊さんからもらったネームタグ捨てようとしてたなぁ……なんか恨みでもあるのか?
「それ、俺の大事な物かもしれないけど?」
俺が言うと、縛は「はっ」と鼻で笑った。
感じ悪いかも〜とちょっとイラッとしていたら、柊木さんが入って来た。
「お〜い。今度は東雲もいなくなってどうするんだ〜。」
そう言って、俺の顔を見て固まった。
「どうした?東雲にいじめられたか?顔真っ白だぞ?」
「心外ですね。」
そう言いながら、縛は柊木さんを連れてキッチンを出て行く。
あれは、何か気付いたなぁ〜。
あー。しっかりしないと。
「ちょっ!俺も行くよー!」
そう言って俺は、2人の後を追いかけて行った。
北海道から帰って来たのに、なんだかバタバタだぁ〜。
あっという間に一日が終わり、俺はアヒルの隊長と今日も風呂場で鉢合わせ。
………な、仲間が増えてる!
アヒルの隊長を見ると、隣にはメロンを被ったアヒルがいた。北海道で縛が悩んでいたのはこれかぁー。と、お土産屋さんでやたらと長い時間が掛かった縛を思い出す。
あまりにも長いから、俺は近くのカフェでメロンパフェを食べた。
買い終わった縛が来ると、メロンパフェは売り切れていて、俺のパフェを奪ったのを思い出す。
最近ますます遠慮しなくなったなぁ。
そう思いながら、俺は自分の口角が上がっているのに気付く。案外この日常を楽しんでいるようだぁ〜。
風呂を終え、ベッドで寝る。
最近は、縛の夢遊病がなくなり、1人で快適に使う事が増えた。
ん〜最高!!!
目を閉じて浮かぶのは、昼間の箱の事。
考えれば考えるほど寝られず、俺は自分の枕を持って2階に行く。
2階に行くと、珍しく縛はもう寝ていた。
別に怖い訳じゃないし。
うん。
そうだよ、怖くないんだから。
そう思い、俺はそっとベッドの端っこに寝転がった。
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………………ゴッ
い、いたーい!!!!
俺は痛みで起床した!一番最初に目に映ったのは床だった。顔を上げると、縛がベッドから見下ろしていた。
「痛いのだけど!!!」
俺が叫ぶと、縛が淡々と話す。
「ここ僕のベッドですよ。」
知ってる!!だから何!?
「これ僕の布団。」
「知ってる!」
「その布団をぐるぐる巻きにして、独り占めしていたのは正樹さん。」
「…………。」
俺そんなに寝相悪かったっけ?
「ひ・と・り・じ・め」
「それは……悪かった。でも、俺なんで床にいるの?」
「それはですね。寒かったので、布団を引っ張ったら、綺麗に転がって行きました。」
悪気もなく言うその表情を見て、優しく取ったらいいだろと喉まで出掛かったけど……人の物を取るのがいけないと思い、そっと胸にしまった。
ピンポーン。
インターホンが鳴り、俺が立ち上がろうとしたが、鼻から血が出て、床にポタポタ落ちてる。
「うわぁー!」
床に落ちた血を急いで、服で拭う。よかった!!その近くにある、高級そうなマットじゃなくて!!
縛はティッシュを手に取ると、俺に渡して階段を降りて行った。
この鼻血、絶対さっき床にぶつけたやつ!!俺は頭を下に向けながら、鼻を圧迫する。これ鼻にあざができたら、道徳に笑われそう〜。
そう思っていたら、縛が不機嫌な顔で帰って来た。手にはあの箱を持っていた。特徴的なカラー使いだから、すぐ捨てると思ったわぁ〜ちょっとは成長したなぁ。
「はい、メガネヤローからの箱ですよ。」
「お〜ありがとう〜。」
そう受け取って、箱を開けようと思ったが、一瞬過ぎったのは昨日の光景。少し指先が震える。
「開けないのですか?」
縛が言うと、俺は再度箱を見る。意を決して、目を閉じて開ける。
縛から何も声がしない。
俺はそっと目を開けると、中には小鳥遊さんの手紙と施設から出て毎週届くサプリが入っていた。
「あっ、小鳥遊さんからの箱かぁー。」
安堵しながらそう言うと、縛は頭を傾げる。
「そう言ったでしょ?」
不思議そうにしていた縛をほっといて、俺は手紙を出す。手紙には、北海道で疲れているでしょうから、安眠薬も入っています。と書かれていた。
施設にいる頃から、度々夢見が悪く、不眠になる事が多かった。そのせいか、体調を崩しやすく、病気になりやすかったので、風邪予防の為にもサプリが送られてくる。
「いつものやつかぁ〜。」
俺が言うと、縛は目を見開く。
「これなんですか?」
「ん?サプリと安眠薬。」
「いえ、そういう事ではなくて、なんでサプリが施設から来るのですか?」
「あー、病院と連携しているから。施設を出る前に、希望すればサプリが毎月届けられるようになっているよ。」
そう言うと、縛が「なるほど」と言っていたが、あれは納得してないね。
「あっ!今何時?!」
縛が自分のiPhoneを出す。
「8時半ですね。」
「あーーー!大変ギリギリだぁ!!縛!シュークリームの店開いちゃうー!」
1時間並んでやっと買えるというシュークリーム。開店は10時。お店までは徒歩15分。タイムリミットは、8時45分。急げー!!!!!
そう思って俺が立ち上がると、またもやぽたっと鼻から血が………ティッシュ詰めてよかった!!
そう思って俺は急いで用意をして、玄関に向かうと、なぜか玄関にはもうすでに縛がいた。
「俺買ってくるよ。」
「……早く行きますね。」
そう言って縛は家を出た。一緒に行ってくれるのーと皆はきっと思うだろう。違うよ。あれ、他に何かあるのかなぁと気になっているだけだよ。昨日iPhoneでチェックしてたのを見てた。
俺は縛の後に続き、約束の分と、夜会う道徳達へのお土産分も買った。




