番外編 〜柊木一家大集合〜
「…………ねぇ、なんでここにいるんだっけ?」
「さぁー、僕にも分かりませんね。」
ここはのどかな田舎町。周りを見渡せば田んぼばっかり。知らなかったなぁ、柊木さん北海道出身だったのかぁ〜。
俺らは今、柊木さんの実家にいる。
「いやー申し訳ないね〜。なんにも用意できなくて。」
柊木さんのお母さんが、お菓子を持って来る。………ここの家系のお菓子チョイスって、伝統だったりする?
「いえいえ、急に訪問したのは俺らなので……。」
そう思いながら、俺はせんべいを手に取って、一つ縛に渡す。そしたら、縛はせんべいを押し返した。
ん?
せんべいじゃなくて、隣にある飴を手に取って食べる縛。こいつ、いつか糖尿病になるぞ。
そう思いながら、じとーっと見つめると縛は顔を逸らした。
俺は両手に持ったせんべいを、順番に交互に口へ運んでいく。
「あれ?正樹さん、そんなにお煎餅好きだったっけ?」
そう言う結愛ちゃんは、大きなシベリアンハスキーを2匹連れて来た。
うおっ、デカッ。
結愛ちゃん、ものの◯姫みたいだなぁ。
「まめとあずきよー。」
………この図体でその名前か?柊木さんの家らしい。てか、シベリアンハスキーに和風の名前もなかなか珍しいよなぁ。
そう思って見ていると、縛はハスキーに近付いて行く。
「触っていいですか?」
「いいよ〜。人好きだから、どんどん構ってあげて〜。」
そう言ったのは、柊木さんのお母さん。
縛は慣れた手でハスキーを愛でる。すごいなぁ、ハスキーがゴロンゴロンして、甘えとる。
ただ、本人はいつもの無表情のままだ。
……犬だけテンション高い。
いや、違うな。
よく見ると、縛の口元が少しだけ緩んでいる。
こいつ……楽しんでるな。
……………。
「あら?正樹ちゃんは触らないの?」
「ん?だ、大丈夫です。」
「そう?おりこうだから噛まないわよ。」
「……………………。」
俺は首をゆっくり振る。
「あらあら、じゃあお菓子一緒に食べましょう。」
そう言って、俺の隣に座る。そして、俺にチョコのお菓子を渡す。
「真美ちゃん、そういや〜正志はどこ行ったの?」
「正志さんならお父さんと、今日はパーティーだぁー!やっふーと言いながら市場に行きました。」
「あれまぁ〜、こりゃ今日お腹がはじけるね。」
と柊木さんのお母さんが豪快に笑う。
俺がチョコのお菓子を食べていると、結愛ちゃんにツンツンと肩を叩かれる。
手に持っていたのは、あのゲーム機じゃないかぁ!?
俺が目を見張ると、結愛ちゃんがニヤッとする。
そして俺は頷きながら、パチパチと音のない拍手をする。
「よく持って来てたね。」
「せっかく買ったのに、みんながいる時じゃないとね!」
そう言うと、結愛ちゃんがテレビにゲーム機を繋げる。
俺は縛にもどうかと聞こうと振り向いたが、縛はハスキーと戯れていた。
犬吸いしてる……。
犬同士仲がよろしい事で。
「できたよ〜!正樹さんはどっちのゲームがいい?」
結愛ちゃんが聞くと、俺は協力ゲームの方を指差す。
「いいね!これ最近人気なんだよね。こことか難しいらしいよ。」
そう言って俺にゲームの所を指差す。それを聞いていた真美ちゃんは柊木さんのお母さんと一緒に、どれどれと覗く。
バン
「ガッハッハッ!見ろよこれ!今日めっちゃいいのあった!」
そう言ったのは、大きなカニを持った柊木さんのお父さん。
「ちょっ、父さん。滴ってるー!」
柊木さんが慌てて、タオルを持って来る。
「あ?わりーわりー。旬じゃないのにこんな大きなカニがあって驚いたからよ。母さんに見せようと思って。」
「分かったから、もう少し落ち着いてくれ。また首やるぞ。」
「落ち着いてるわ。首の事はいいだろ、もう治ったんだから。」
「首のヘルニアは治りづらいし、すぐ戻って来るらしいぞ〜。」
「うげっ……お、俺はカニを洗ってくるわぁ。」
そう言った柊木さんのお父さんは部屋を出ようとする。
「父さん、私も行くよ〜。」
柊木さんのお母さんも席を立つ。
俺は聞き逃さなかった。
小声で「また、鍋割られたらたまったもんじゃない」って言ってた。
柊木さんのお父さん、結構豪快な人なようだぁ。
「ん?結愛は何してるんだ?」
そう言って、柊木さんがテレビを覗き込むと、騒ぎ出す。
「え?俺もやりたい。コントローラーもう二つ買ったろ?出してくれ。」
「えー、めんどくさい。」
「そんな事言わないでくれよ。なぁ?カニに免じてお願い〜。」
そう柊木さんが言うと、結愛ちゃんは文句を言いながら席を立って部屋を出た。
「優しい〜、ありがとうなぁ!」
その後ろ姿に柊木さんが大声で声を掛ける。
そして、席に座ると、机にあるせんべいを手に取る。俺の手にせんべいを乗せて来る。
……夫婦揃って餌付けの癖でもあるのかなぁ。
「佐伯はまめ達と遊ばないのか?」
縛を見ながら言う柊木さん。
「……大丈夫です。」
俺が言うとニヤッと笑う柊木さん。その頭を真美さんが叩く。
「もう、真美ちゃん何も言ってないだろ。」
「その悪巧みは引っ込ませてね。やったら、もう今日は一緒に寝ないから。」
「えー、そんな事しないよ〜なぁ〜真美ちゃん〜。」
柊木さんは何をしようとしていたのか、俺には分からん。
縛の方を見ると、まめ達と寝転がって溶けてる。
まぁ、リラックスしてるようでなによりです。
結愛ちゃんが戻って来た。
「はい、持って来たよ。」
そう言ってコントローラーを机の上に置く。
「おっ、ありがとうなぁー。」
柊木さんはコントローラーを受け取ると、お菓子からクッキーを結愛ちゃんの手に乗せる。
やっぱり餌付け癖があるようだぁ。
ゲームでチームをランダムで組む事になり、俺は結愛ちゃんと一緒。
柊木さんは真美ちゃんと一緒。
そしたら、柊木さんが「あー!」と言い出した。
「ずるい!なんで佐伯が一緒なんだよ。俺と一緒に組もう結愛。」
「ランダムだから。」
「えー!ずるい!ずるい!ずるい。」
バシッ………。
また、叩かれてる。
「ランダムだって言われてるでしょ。」
「えーでもー。」
「えーでもじゃない。私とじゃ不満な訳?」
「そんな事ないよ〜ただ負けるのは………」
真美ちゃんに睨まれてる。
ドンマイ、柊木さん。
俺がジェスチャーをすると、柊木さんは笑った。
「よーし、もうこれは勝ってやる。」
そう言ってゲームが始まると、皆が大騒ぎしている。
意外だったのが縛だぁ。
さっきまで寝転がっていたのに、ゲームが始まると、俺の後ろに来て、あれこれと口を出して来る。
「正樹さん、そっちじゃないですよ。あっちです。そうそう、そのまま……あっ、違いますよ。」
………うるさい。
俺がそう思って見ていると、
「なんです?」
と不思議そうな顔をしている。
こういう時は本当に察しが悪い。
「ほらっ!カニ鍋出来たよー!」
そう言って、柊木さんのお父さんとお母さんが鍋を持って来る。
「美味しそうーー!」
結愛ちゃんがそう言うと、ゲーム機を片付ける。
「本当いい匂いね。」
真美ちゃんが言っている間に、縛は慣れた手で食器類を配膳する。
「あらっ、助かるわぁ〜。」
柊木さんのお母さんが喜んでいると、お父さんはバシッバシッと縛の背中を叩きながら、
「兄ちゃん、客なんだから座りなぁ!俺らやるから。」
と言って笑っていた。
準備を終えると皆で「いただきます。」をして、また大騒ぎ。
こんな日が続くといいなぁ。




