表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人類の罪  作者:
止まっていた時間
42/89

伝えたい言葉

縛が一枚の紙を出す。


渡された紙を俺が読み上げる。


……なんで俺?


まぁ、いいや。


『ハクへ


この手紙を見つけたという事は、俺はもうこの世にはいないという事だな。


この手紙は、お前が嫌いなメガネヤローに頼んだ。


今でも、信じられない。

俺がALSになった時から少しずつ始めたこの研究が、今ではこんなにも人を助けている事が。


でも同時に、俺はこの研究を続けていいのか悩んでいる。

人を救える。その一方で……


生み出された者達に、俺達は何を背負わせているんだろうな。


これも全部、俺の罪だ。


俺は、お前が自分のクローンを作っていると知った時、初めて自分の罪に気付いた。


お前を、そこまで追い詰めていたんだって。

お前は俺の死を受け入れる事ができない。


でも、ハク。

俺はもう、自分の死を受け入れている。


お前はきっと俺を探すだろう。


でも、俺は自分のクローンを作らない。


そう決めた。俺は、お前の隣にいる為だけに、もう一人の俺を作ることはできない。


それは俺じゃない。


お前が愛した久遠理じゃない。


だけど気付いてしまった。


どうやら、俺のクローンを作ろうとしている奴らがいる。


しかも、この技術を人を救う為じゃなく、自分達の為に使おうとしている。


俺が死んだら施設は自動停止し、研究データは全て消えるようにした。


でも、完全に消去されるまで3年掛かる。


その前に……


俺のクローンを見つけてくれ。


俺を、誰かの操り人形にさせないでくれ。


俺が見つけた情報は、子ども達のファイルに残した。


赤丸がついた子達に全てを託した。


ハク、愛してる。


先に真美と上で待ってるぞ。


……まぁ、お前の事だから怒りながら来るんだろうな。』


読み終えると、縛の顔を見た。


絶望と悲しみ、喜び。


感情がぐちゃぐちゃだぁ。


重たい沈黙の中、先に口を開いたのは柊木さんだった。


「……想像と違うな。」


「もっと悪人だと思ってた。」


柊木さんの言葉に俺も頷く。


もっと、ワッハハハって笑う悪役みたいな人を想像してた。


漫画の見過ぎかも……


「……理は、もういない?」


「………もう、いない。」


そう言って、縛の膝が崩れて倒れる。


「縛?」


俺が声を掛けるが、縛は返事をしない。


「縛?!」


肩を揺らすと、縛は顔を上げてやっと俺を見る。


「……僕、理のそばにいるために、生まれたのに。いないって……じゃ、この14年間の僕の努力はなんだったのですか?」


そう問い掛けて来る縛に、俺は何も答えられなかった。


「僕はいったいなんのために……。」


縛を抱きしめる。


「俺と会う為に来たんだよきっと。きっとそうだよ。」


そう言うと、縛は涙を流す。


俺はその背中をポンポンと慰める。


「………いい所悪いんだけどさぁ、久遠のクローンはいるじゃないか?」


柊木さんが後ろから声を掛けて来る。

その言葉に俺は考える。確かに、俺のクローンを探してくれって書いてあった!


「縛!縛!久遠のクローンはいるんじゃない!?記憶とかはどうなのか分からないけど……。」


そう言うと、縛は「え?」と言う。


「ほらっ、ここ。」


柊木さんが手紙を持ちながら、もう片方の手で最後の文を指差す。


「俺を、誰かの操り人形にしないでくれ。だから、多分クローンは成功すると見込んでると思うぞ。」


「……すごい、探偵みたい。」


俺がそう言うと、柊木さんがため息を吐く。


「俺、一応、探偵事務所兼ネットカフェなぁ。」


そう言うと、少し得意げである。


その姿を見て、縛が小さく笑った。


あっ、笑った。


よかった。


やっぱり縛は笑ってる方がいい。


久遠って人がどんな人なのか。


俺が何者なのか。


まだ分からない事だらけだけど――


とりあえず今は、これでいい気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ