表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人類の罪  作者:
止まっていた時間
38/89

柊木さんに掴まれながら、俺は縛に近付こうとする。


でも、それを柊木さんは許さない。

俺は柊木さんをじっと見る。


今行かないと、縛はこのまま戻って来ない。


そんな気がした。


「はぁー。」


柊木さんはため息をつくと、ゆっくり手を離した。


俺は縛に近付く。


「これで不思議仲間だぁ。」


そっと、縛の手を握る。


縛の指先に微かに力が入る。


あー……


なんでか分からないけど、縛も怖かったんだ。


「ほらっ、もう夫婦ごっこやってないで説明しろ。」


柊木さんが後ろから声を掛ける。

ただ、心なしか少し離れている気がする。


まぁ、確かに柊木さんからしたら、不思議生命体が2体いるようなもんだ。


「……実は、僕………ある人の記憶があるんです。その人の記憶が、僕を突き動かすんです。」


ここに来て初耳である。


「そして、その人の記憶だと、鉄格子が掛かっていて、掃除ロボットが動いているという事は、この施設には今、人がいないという事らしいです。」


「誰の記憶だ?」


柊木さんが聞くと、縛は握っている手にさらに力を入れる。


「………東雲 ハクです。」


「はぁ?それお前の名前じゃないか?」


柊木さんからの質問に、縛は答えられず、ただ手を握り締めるだけだった。


「…………。」


東雲ハク。


同じ名字。


同じ記憶。


でも、縛はその名前を自分の事のようには言わなかった。


いや、言えなかったのかもしれない。


まるで、知らない誰かの名前を呼ぶみたいに。


「……縛。」


名前を呼ぶと、縛はゆっくり顔を上げ、俺と目を合わせる。


「じゃあ、今俺の手握ってるのは誰でしょう?」


「……え?」


「俺を見つけてくれたのは誰でしょう?」


縛は何も答えない。


「家に帰ったら、ご飯作って置いてくれるのは?」


「…………。」


「俺の家に気付いたら住み着いたのは?」


「それは……」


「東雲縛でしょ?」


そう言うと、縛は目を見開いた。


「ハクって人の記憶があるのかもしれないけどさ」


俺は握った手に力を入れる。


「今ここにいるのは、甘い物大好きな縛じゃん。」


「…………。」


「だから、難しい事は後で一緒に考えよう。」


俺は目の前の大きな扉を見る。


「今は、この先に何があるのか確かめよう。」


そう言うと、俺は柊木さんを見る。


「おいおい、俺を悪者にするんじゃねぇ。俺は全員の安全を守る為にも聞いているんだ。」


そう言うと、柊木さんが頭をポリポリと掻く。


「ほらっ、突っ立ってないで行くぞ。」


そう言って、柊木さんはいつものように俺達の前に立つ。


ありがとう、柊木さん。


-----------------------------------------------------------------------


扉に入ると、俺らはその異常さにすぐ足を止めた。


「なんだこれは……。」


暗闇の中で光るカプセル。


あれはなんだ?


ピッ……ピッ……


コポッ……


止まっていたはずの機械音が、静かな部屋に響いていた。


でも――


俺はこの音を知っている。


理由は分からない。


なのに、懐かしいと思ってしまった。


カプセルに引き寄せられるように近付く。


中には胎児がいた。


なんだ、これは?


周囲には割れたカプセルもある。


柊木さんは俺の後に続いて進む。


そして、一つの割れたカプセルの前で足を止めた。


「何か気になる事ありました?」


柊木さんは答えない。


ただ、そのカプセルに残された小さなプレートを見つめていた。


「……柊木さん?」


呼び掛けても、その視線は動かなかった。


まるで、そこに書かれた文字から目を離せないみたいだった。


「ここ資料ありそうですよ。」


部屋の奥から聞こえた縛の声に、俺達はそちらへ向かう。


そこにはたくさんのファイルが並んでいた。


『生命と精神について』


『神と人間』


『病の根源』


……難しいものばっかりだぁ。


そう思っていると、同じ形のファイルが大量に並んでいる事に気付いた。


なんだ?


俺は一番最後に置かれたファイルを手に取る。


『FILE:H-200』


数字が書かれていた。


200。


その下に書かれた名前を見て、俺は息を止めた。


『NAME:SINONOME HAKU』


「……ハク?」


さらに下へ視線を落とす。


そこに書かれていた文字に、俺達は言葉を失った。


『東雲ハクの記憶・人格継承実験』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ