ソラ
「ここがダムの管制塔かぁ。なんか想像より普通だなぁ。」
俺はそんな管制塔の中を見てキョロキョロする。
「僕ちょっと、機械で調べるので、周囲気をつけてください。」
そう言われた俺は柊木さんと一緒に、防犯カメラの映像を見る。
すると、柊木さんが監視カメラの映像を見て驚く。
「どうしたんですか?」
俺が聞くと、柊木さんがモニターを指差す。
「数が合わない。」
「え?」
「赤外線センサーが付いた防犯カメラの映像が一つもない。」
そう言われると、確かにモニターには、森を映した映像はなかった。
え?じゃ、あの数の赤外線センサーが付いている防犯カメラは何のために??
考え事をして防犯カメラの映像を見ていると、俺は一つのモニターから目が離せなくなった。
そのモニターを見ると、俺はどこか懐かしくて、少し寂しい気持ちになった。でも、その理由は分からない。
そのモニターをじっと見ていると、柊木さんがあっと声を出す。
つられた方を見ると、映像には交代の職員が歩きながらこっちに向かってくる。
「やばい、縛。来た。」
「大丈夫です。今監視システムに一時的な処理を入れました。」
縛が澄ました顔で話す。
俺は目線を戻して、柊木さんに声を掛けた。
「柊木さん、これ何に見えます?」
俺の指差した方に柊木さんが顔を近付けて見る。
「これ?鳥居のはじっこじゃないか?少ししか映ってないけど。」
「俺、ここに行きたいです。」
「はぁ?そんな時間ないぞ。」
柊木さんがそう言うと、縛は立ち上がって俺達の所に来る。
「いや、行きましょう。ここの施設には何もデータはなかったです。でも、電力使用量の情報が近くの建物を示していました。近くに何か建物があるとすれば、ここかもしれないですね。」
と縛はそのモニターを指差す。
でも、この場所へはどうやって行けばいいのか……悩んでいると、ふっと近くにもう一つの扉があるのを見つけた。
「あの扉で行けるじゃない?」
俺がそう言うと、縛と柊木さんが顔を見合わせた。
扉の前まで行くと、鍵が掛かってなかった。
俺はドアノブを押すと、すぐ目の前に森が広がっていた。
一歩踏み出そうとすると、急に腕が引っ張られた。
「待って。赤外線センサーの防犯カメラがあるかもしれないから、俺が先に行く。」
柊木さんがそう言うけど、俺はこの森にはないと思った。
柊木さんを先頭に進んで行く、縛は解析端末の地図を見ながら場所を指示。
森の分かれ道に着くと、縛の指示が止まった。
「どうした?」
「……ないです。」
「何が?」
「この先の道は地図には示されてないです。」
そう言うと、全員が止まった。でも、何でだろう、俺はこの道を知っている。そんな不思議な考えがよぎる。
「……俺、多分道案内できる。」
「はぁ?地図もないのに?」
柊木さんがそう言うと、俺は頷く。
「理由は分からないですけど、何でかこの道は知ってるみたいです。」
そう言うと、2人が息を呑む。
「多分、失った記憶に残っていたのかも。」
俺はそう話すと、歩き始めた。
俺はこの森を知ってる。
この森で誰かと会った気がする。
俺が歩みを止めず、歩き進めて行くと、獣道に入った。
前を見ると、見慣れた白い影。
月に照らされて、神々しく輝く。
あー、こいつだぁ。
俺はこの森で、こいつに会った。
目の前まで進むと、俺はしゃがんだ。
「よっ、朝ぶりだなぁ……案内頼むわぁ。」
俺がそう言うと、
「かぁー」
返事するかのように答えたこいつ。
白い鴉……ソラだぁ。
俺は多分こいつと昔一回会った事がある。
ソラは付いてこいとばかりに、こっちを振り向きながら飛んで行く。
後ろに付いて行くと、俺らは神社に着いた。
神社の名前は、長い年月のせいか削れて読めなくなっていた。
鳥居の近くには、村の名前を書いた看板もあった。
『鈴鳴り村』
その後ろには地図があった。
村の地図だぁ。
来た方向からは木々に隠れて、村なんて見えなかった。
俺は地図を見ていたから気付かなかった。
柊木さんも、縛も。
ただ黙って、水面を見ていた事に。




