鈴鳴りダム
深夜
ホテルの部屋に男3名が集まった。
「何か分かったか?」
柊木さんが口を開くと、俺はパソコンから顔を上げた。
「……俺は、何も出なかったけど、ホテルマンの話を聞いて、ちょっと七不思議みたいなのは見つけた。」
「なんだ?それ?七不思議?」
「ホテルマンが言っていたように、確かに赤い瞳みたいな七不思議があるみたい。その中で気になったのは、深夜から早朝に掛けて聞こえる機械音かなぁ。」
俺がそう言うと、縛は自分のパソコンをこっちに向ける。
「その話を聞いて、僕も不思議な所を見つけました。」
「七不思議か?」
柊木さんが真剣な顔で言っていたが、縛は無視する。柊木さん泣くぞ。
「ここです。ここ見てください。」
パソコンの画面を見ると、そこには鈴鳴りダムと周辺の電気使用量が表示されていた。
「ん?これのどこが不思議なんだ?」
柊木さんが聞くと、縛はもう一つの画面を出す。
「あれ?この二つどれも鈴鳴りダムの?」
「そうです、申告されている電気使用量と実際の電気使用量が違うんです。しかも、実際の方が2倍も電気を使用している。」
「「それって!まさか!?」」
「そうです、確実に何かありますね。これは黒です。」
そう縛が言うと、俺は14年前の事件が本当にあったものだと少し実感してしまう。まさか、本当に――……
俺が考え事をしていると、2人はもう上着を着て、鈴鳴りダムに行く準備を始めていた。
俺は遅れを取らない為に、自分も用意を始める。資料を見て突然思い出す。そう言えば、白い鴉を祀った神社の話も気になるなぁ。
柊木さんと縛は準備を終え、部屋を出ようとする。俺はパソコンを片手に追いかける。
車の中では皆集中していたからか、異様な静かな空気が流れていた。
ガタッガタ
俺のキーボードの音だけがやけに聞こえる。
「佐伯、何調べてる?」
そう言う柊木さんは地図にホテルマンが話してた話や七不思議の話から、怪しい所に丸をつけている。
「昼間、観光客が話していた、白い鴉を祀った神社。どうやらダムの中にあると聞いて、気になるんですよね。」
「確かに少し気になりますね。白い鴉を祀っている神社なんて、初めて聞きます。」
縛は少し食い気味で答える。
「そうだよなぁ。しかもダムの中にあるっていうから不思議だよなぁ。」
3人それぞれ気になる事を話すと、一番最初に行く怪しい所を見つけた。
「やっぱり、ここが一番最初がいいなぁ。」
柊木さんが言っていたのは、赤い瞳が見えたという噂が何個もネットにも書かれていた所。場所は、ダム周辺に点々としていた。
「こんなにバラバラだと逆に何かありそうだ。」
「そうですね。バラバラで調べるよりは一緒に行動した方がいいですね。」
俺が言うと、3人で頷く。意外だぁ、縛は1人で行くとか言いそうなのにー
鈴鳴りダムの近くは昼間の賑やかさが嘘のような光景だった。柊木さんのアドバイスで、車を鈴鳴りダム近くに停め、木や枝で車を隠した。
最初の場所に向かうと、ダムの職員が巡回をしていた。ホテルにいる時に、巡回の時刻表をチェックしててよかった。
巡回交代の5分がチャンス。
誰が先に行くかと顔を見合わせると、柊木さんが先に行くとジェスチャーする。
次の瞬間、柊木さんは音もなく走り出した。
「…………。」
いつもの明るくて、結愛ちゃんに怒られている姿とはまるで違う。
無駄のない鋭い動き。
周囲を見る真剣な目。
……そうだった。
この人は14年前、あの事件で特殊部隊に選ばれた人だった。
そう感心していると、柊木さんがこっちに来いとジェスチャーする。
後に続いて俺らも進むと、突然柊木さんが止まる。
そして小さな声で言った。
「赤い瞳の正体分かった。あれだぁ。」
そう柊木さんが指差す方向を見ると、目視できるかできないかの距離で見える赤外線センサーが付いている防犯カメラだった。
「……でも、おかしくないか?」
柊木さんが呟く。
「ここ、ただの観光地だよな?あの赤い瞳の噂が全部これだとしたら、とんでもない数じゃないか?」
誰も答えなかった。
ただ、その赤い瞳だけが、静かに森を見渡していた。




