おくりもの
柊木さんの運転で、俺達は2時間かけて鈴鳴りダムの近くにある駐車場に着く事ができた。
さすが観光地、観光客が所々に見られて、売店やカフェまである。
清々しい空気に緑あふれる森、これはマイナスイオンが漂ってそうだ。
とてもさっきのホテルマンが言っていたような場所だと思えない。
「なんだ?普通の観光地じゃねぇか?」
柊木さんも疑問なようだ。縛はと言うと、周囲をキョロキョロと見渡すと、何故か少し驚いていた。
「どうした?」
「いえ、ここって確か前に村があったのですよね?」
そう言った縛に、俺もさっき見た新聞記事を思い出す。確かに、開発の時にトラブっていたよね。
跡形もないのも、逆に珍しいよなぁ……
そう思いながら、俺らは鈴鳴りダムの近くまで行く。
んー、普通のダムという感じだなぁ。
そう思いながら、他の観光客と一緒にダムを見ていると、
「かぁー!」
と久しぶりに聞く声がした。
おいおい、ここ北海道だぞぉ?いる訳ない。
そう思っていたが、隣の観光客が声を上げる。
「珍しいー!白いカラスじゃない!?写真撮ろう。」
「おー、珍しいなぁ。そういえば近くで白いカラスを神の使いとして祀っている神社があったなぁ。」
「え?そんなのあったっけ?」
「あったあった。俺もさっき店で教えてもらったけど、場所がダムの山の上らしいんだよ。」
「えー、それって観光できない神社ってこと?」
「らしいな、なんでも昔ここにあった村の神社らしいぜ。」
……白い鴉を祀った神社?
確かに珍しいなぁー、ってことはあの鴉は別の個体か??
「かー?」
そう思っていると、カラスが空から降りて、俺の前に止まった。
何やらキョトンとしてる。
「………よー?北海道に来たのか?」
いつものように話しかけると、カラスは俺の肩に乗って来た。
「うぉ、珍しい。」
どうやら俺の知ってる白い鴉のようだ。
鴉が嘴に何か持っている事に気付くと、手を差し出した。
「かぁー!」
そう鳴くとカラスは俺の手のひらにカードを置いて行き、飛び立っていく。
「………?」
なんだと思って見ると、カードには
『鈴鳴りダム セキュリティカード』
と書いてあった。
……マジかー。
そう思った俺は、周りをキョロキョロ見た後ポケットにしまう。
その一連の動きを当然、一緒に行動していた柊木一家と縛が見ていた。
柊木さんと縛が寄って来る。
「おい、白い鴉なんて珍しいじゃん!
よく懐いていたなぁ!」
そう言う柊木さんにカラスとの出会いを言おうと思ったが、縛が柊木さんの顔を押し除ける。
「何を落として行ったのですか?」
なんだか少し確信的な聞き方だなぁと思いながら、ポケットからチラッと見せる。
「まさか!?」
縛が驚いて少し声が大きくなる。
俺はそっとその口を手で塞ぎ、
「しー!」
とジェスチャーをする。
柊木さんにもそっと耳元で伝えると、頷き合った。
真美ちゃん達の所に戻って行くと、真美ちゃんは何かを察してくれたようで、カフェに行こうと言ってくれた。
「カフェラテ1つ、ホットコーヒー2つ、キャラメルマキアート2つください。」
注文を終えて、席に座ると、柊木さんが口を開く。
「いや〜、何もなかったなぁー。一回近く観光してホテル行くか?」
そう言う柊木さんに、縛も俺も頷く。
結愛ちゃんは少し不満そうに、
「えー、せっかく来たならもう少し調べていこうよ。」
と柊木さんを揺らす。
「普通の観光地だなぁ。ここ。うん。」
そう言う柊木さんに思わず、心の中で演技が下手だぁと呟いた。
「えー、もう。」
「お待たせしました。ごゆっくりお過ごしください。」
店員が飲み物を配膳して行く。
配膳された飲み物に思わず笑いそうになる。
そうだよなぁー。
縛がキャラメルマキアート頼んだなんて思わないよなぁ。
真美ちゃんと縛は何も言わず、お互いの飲み物を交換する。
「じゃ、これ飲んだら近くで行きたかった牧場行きましょ〜。その後はホテルでゆったり過ごしましょうか?」
真美ちゃんの提案に皆で頷く。
その後は、雑談しながらカフェで過ごし、近くの牧場にも行った。
帰り道の車で、結愛ちゃんが寝たのを確認すると、柊木さんが発言する。
「今回の調査、結愛は連れていけない。まだ幼過ぎる。」
その意見に全員が頷く。
「今日夜に、俺らでもう一回鈴鳴りダムに行く。」
「危険じゃない?」
「これから、ホテルの部屋に戻って縛がシステムを調査してくれる。それが終わり次第、俺らは向かう。真美ちゃんは、結愛を頼んだ。」
「分かったわ。ならホテルに着いた後も、いつものようにするのよ皆。結愛ちゃんに察せられたら、行くと言って聞かないから。」
また、皆で頷く。
ホテルに戻った後は、柊木さんは家族と過ごす事にした。
今後何があるのか分からないから。
俺と縛はホテルマンの話を含め、再度ダムの調査をする事にした。
なんであいつがここにいるのか分からない。
俺は机の上を見る。
『鈴鳴りダム セキュリティカード』
あいつが俺に渡してくれたもの。
でも、なんとなく今日これをもらった事は、偶然じゃない気がした。




