赤い瞳
今は早朝の8時、隣のベッドではスヤスヤと寝ている正樹が見える。
産まれて初めて人と喧嘩したという感覚に、まだ少し恥ずかしさを感じる。僕は起きて、ベッドを降りると机にある資料を手に取る。
いよいよ、今日は鈴鳴りダムに行く日。
見つけ出すと約束した……あと、少し待っててください。
「んぁ?ん?」
後ろから声が聞こえる。どうやら正樹が起きて来た。でも、声的にあれは寝惚けているので、しばらくはベッドから起き上がれないだろう。
僕が身支度をしていると、正樹が起き上がって来る。相変わらずの寝起きの悪さだぁ。あの人とまるで違うのに、なんでかあの人と重なってしまう。
顔も性格も、趣味もまったく違うのに不思議と隣にいる事が落ち着く。
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し、視線を感じる。
朝から縛からなにやら、じっと見つめられている。あれは多分無意識だぁ。
時々じぃーっと何か考え事をしている事があるので、俺は気にせずに鈴鳴りダムへ行く準備をする。
ん〜ネームタグ落としたら嫌だから、置いて行こうかなぁ〜〜。
うぅーん、でもなぁ、あった方がいいよなぁ〜。
とりあえず持って行こう。
俺はネームタグを首に掛けた。
コンコン
ドアを叩く音がしたから、開くと柊木さん一家が立っていた。
「おはようございます。」
「おう!おはよう!飯食ったら行こうぜ!」
どうやら朝ご飯のお誘いみたい……俺は準備終わったけど、縛は……そうだよなぁ。お前ってそういうやつだよなぁ。
もう靴を履いていた縛を見て、俺も靴を履きながら話す。
「いいですね!ご飯食べたらすぐ行きましょ!」
「車はもう用意できてるみたいだしなぁ、そういえば俺ここの朝ビュッフェ食べるの初めてだなぁ。」
柊木さんが言うと、俺も回想する。確かに〜北海道来て早々ホテルの部屋に引きこもって資料やらパソコンやら調べてたわぁ〜。
「あらっ?いつも呼んでるのに、あー、おーとか返事しないから食べ逃すのよ。」
そう言う真美ちゃんに、結愛ちゃんもそうだそうだと同意する。
それは、悪うございました。
朝ビュッフェの所に着くと、俺は目をキラキラさせた。
なんだぁ!ここは!天国かぁ!!
俺がキョロキョロしていると、縛はどんどん、俺の皿に物を乗せて行く。
……全部好物だったことに、俺はゾクッとした。
うん、これが縛だよなぁ〜。
お腹を満たすと、ロビーに車の鍵を取りに行く。
「ふぅーお腹いっぱい。」
結愛ちゃんは自分のお腹をポンポンと叩く。
ロビーに着くと、縛がホテルマンに声掛けをする。
「東雲です。鍵取りに来ました。」
「あ!オーナー待ってました。これ鍵です。今日は皆さんでお出かけですか?」
そうホテルマンに聞かれると、縛は鍵を無言で受け取る。
ありゃまぁ〜相変わらずだぁ。
「そうですよー、皆で鈴鳴りダムに行くんですよ。」
そう言うと、ホテルマンは動きを止めて固まる。
どうした?
「す、鈴鳴りダムですか?」
「そうですよ?」
「あー、そしたら日が暮れるまでに帰って来た方がいいですよ!」
少し額に汗が流れるホテルマン。
「え?夜も星が見えるから綺麗だって……。」
後ろから真美ちゃんが言う。
ホテルマンは口に手を当てて、小さい声で話し始めた。
「あそこ、実は開発する時に色々あったみたいで……俺のじいちゃんが若い時、近くに住んでいたみたいですけど。じいちゃんの話では、ダム工事とトラブルになった住民が皆行方不明らしいです。」
「え?そんなの引っ越しただけじゃない?」
真美ちゃんは思わず言葉にする。
「いや、一晩で全員いなくなります?しかも、村もあったはずなのに、痕跡もないんですよ。」
「え?」
「だから、じいちゃんからは皆神隠しにあったと言われたんですよ。しかも、今も鈴鳴りダムで、夜になると出るらしいですよ。」
「何が?」
「何かって決まってるじゃないですか?幽霊ですよ!幽霊!」
「え!!」
「しかも、ダム工事をした人達は皆あの後不審死しているので、皆祟りだと言っているんです。」
そうコソコソと話すホテルマンの後ろから、別のホテルマンが近付くと、ぐいっと首根っこを引っ張られた。
「オーナーすみません!こいつオカルトが好きで、よくこういう迷信を言うんですよ。」
「迷信じゃないですよ、先輩マジだって。」
「おまえ、またそんな事言って。自分だって、この間夜に行ったけど、無事だったじゃん。」
「そうですけど、でも、前回行った時に見ましたもん!森の中で光る赤い瞳!あれ絶対に祟りですよ!」
「またまた〜。こいつは俺が連れて仕事に行くので、オーナー達はぜひ北海道を楽しんでくださいね。」
「先輩!本当だって!」
「分かったから、仕事しなぁ。」
そう言って、2人はこっちの返答を聞く前に、どんどん離れて行く。
俺らは顔を見合わせた。
どうやら、思ったより簡単にはいかないようだ。




