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人類の罪  作者:
止まっていた時間
20/89

ご機嫌斜め

ネームタグを持って店を出ると、見慣れた黒い人が見える。


…ん?あれ縛じゃねぇ?

どこ見てるんだ?あいつ。


「おーい、縛〜。」


と俺が声を掛けると、縛はこっちを見る。俺が笑顔で手を振ると、ヘルメットをこっちに投げる。

うぉっと、あぶなぁ!


「あぶないよ!ヘルメットを突然投げるなぁ!?ん?これなんのヘルメットだぁ?」


持っているヘルメットを持ち上げて、眺めていたら、縛はポンポンと近くにあるバイクを叩く。

……なんだ?その高そうでかっこいいバイクは!?


「なに!なにこれ!?買ったの?スゲェー、カッケー。」


そう言うと満足そうにヘルメットをかぶって、バイクに跨る。そして、自分の後ろを指差す。

おー、さすがワイルドイケメン。よくバイクが似合うことで!俺もヘルメットを被ると、バイクに跨る。


…………いや、喋れよ。


と今更ながら、1人で話していた事に気付く。


どんどん変わっていく景色に、さっきまでの不満も吹っ飛ぶ。


やはりバイクってロマンあるよなぁ〜。


そう思いながら、景色を見て思わず鼻歌が出る。


縛は何も言わずに、ただバイクを走らせていた。


家に着いて降りると、縛はまたもや無言のままこっちをじっと見る。


家でも時々こうやってじっと見る事があるから、もう慣れた。そういう時に、声を掛けるとすぐ機嫌が良くなるから、俺はこれを構ってちゃんモードと呼んでいる。


「今日用事があったんじゃなかったのか?」


「……すぐ終わった。」


「ふーん、まぁ迎えに来てくれてありがとうなぁ。」


「別に……迎えに行ったわけじゃない。」


そう縛はぶつぶつ言いながらも、口角が上がってるぞーと俺は心の中でツッコミをする。


鍵穴に鍵を入れて、突然気付く。


あれ?俺店の場所教えていたっけ?


恐る恐る振り返ると、素晴らしい笑顔で立っているご機嫌なボーイがいるじゃないか。


……うん、俺は何も気づいてない。


この話はおしまい。


リビングのソファーに座ると、机の上に箱を置く。


「なんですか?それ?」


あっれーさっきまでご機嫌だったのに、急に機嫌がまた悪くなったぞ〜ソファーに先に座ったのがいけなかったのか??


「これ?施設長の小鳥遊さんから貰った。」


そう言った瞬間、縛の眉がピクリと動いた。


……ん?なんか今、地雷踏んだ?


縛は無言のまま箱を手に取ると、そのままゴミ箱の方へ歩き出した。


「ちょちょ、ちょっと待ったー!それ俺の物!」


ピクッと動きを止めて、じとーっとこっちを見つめる縛。慌てて近寄り、縛の手から俺の箱を取り返す。


「これ大事なんだから。」


そう言うと、縛はさらにご機嫌が悪くなり、眉間に皺を寄せたままソファーに座る。まったく意味不明である。また捨てられると困るから、とりあえず説明する事にした。


「これ、俺が施設に入る前に付けてたネームタグなんだって。」


そう話すと、縛はギョッとした目でこっちを見る。


「……施設に入る前?」


「そうそう。俺も覚えてないんだけど、小鳥遊さんが保管してくれてたみたい。」


その言葉を聞いた縛は、もう一度箱を手に取った。


今度は捨てるためじゃなく、確かめるように。


中に入っていたネームタグを取り出し、じっと見つめる。


「……なんだ、これ?」


めっちゃ初めて見ましたみたいな顔してる。


「なにって、これネームタグ。」


そう言ったけど、何言ってるんだぁみたいな顔しとるぞ〜〜。


ぐぅー……


断じて言おう、俺ではない。


ぐぅー……


お互いに顔を見合わせた。


「夜ご飯、牛丼はどう?」


俺が提案すると、縛は机の引き出しからチラシを出した。


「これがいい。」


持っているチラシを見ると、回転寿司の広告だった。確かに美味しそうだけど……ん?……丸が付いてある。


抹茶パフェに丸が付いてある。


……迎えに来てもらったし……


「ラーメンがいい。」「これがいい。」


2人で拳を前に出すと、


「さいしょは、ぐー、じゃんけんぽん!」


やったー、俺の勝ちーーー!!!!ラーメン!!!


と思ったが、縛がしょんぼりしているのを見て。


「あー、でも寿司も食べたい気分になったなぁ〜。やっぱ寿司行こう〜。」


そう言うと、元気になった縛は出かける準備を始める。


目的は多分パフェだけど、あの性格だからきっと頼みたくても、頼まないだろうなぁ〜。


iPhoneを出して、柊木さんに連絡する。


『今から新しく開いた寿司屋さんに行くんですが、よかったらみんなで一緒に行きませんか?奢りますよ〜。』


こういう時こその女子高生パワーを頼るべき。

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