時代の流れですごい!
「よっ!兄ちゃん誘ってくれてありがとうなぁ〜。」
相変わらず無精髭を生やしながら、歩いてくるおっさん。柊木である。その後ろに、ポニーテールをした女の子と、少し小柄で優しそうな女性がいた。
「正樹くん!ありがとう!実はここ気になっていたんだー。」
元気よく話す結愛に、隣の女性が話しかける。
「まぁ、年上の人には敬語使いなさいって言ったでしょー、もうー。あっ、私柊木の妻、柊木真美です。まみちゃんって呼んでね!」
明るい女性だぁ、でも結愛ちゃんのお母さんって感じがする。
「佐伯 正樹と東雲 縛です!」
俺が自分と縛を紹介すると、縛は真美さんの方を見て驚く。
「ご姉妹いたりしますか?」
と突然真美さんに聞く縛。どうした?らしくないぞ?
「あら?姉妹はいないけど、兄なら1人いるわよ?」
キョトンとしながら答える真美さん。
「どうした?東雲〜まさか!?だめだぞ!真美は俺の奥さんだからなぁ!」
柊木さんは真美さんと縛の間に入り、縛を睨みつける。真美さんはあらっ〜と言いながら嬉しそう……ラブラブな事で……その横を見ると、結愛はiPhoneをいじってた。どうやら通常運転らしい。
「席予約してるので、入りましょう!」
そう俺が柊木さんを引っ張って、寿司屋さんに入ると、真美さんと結愛ちゃんも後ろに続く。
「……世の中には似てる人が3人はいると言われてるから、可能性がないわけでもないかぁ……」
最後に歩いていた縛は何かを呟いたが、その呟きは風の音にかき消された。
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「縛〜〜、早く来いよ。」
いつまでも店の前で考え事してる縛を呼ぶと、ハッとした顔で近付く。
「ほらっ、柊木さん達先に座ったから、俺の隣なぁ。」
そう縛を引っ張って、机に向かうと、柊木さんがこっちへ手を振る。
「お待たせしました!食べましょ!」
そう言うと、タッチパネルでどんどん注文していく。ん?縛が固まってる。
「どうした?」
俺が聞くと、縛が回転トレーを見て指差す。
「なんですか?これ?お寿司が回ってる?」
ん?回転寿司だから、回ってるの当たり前じゃないか??
「あっ!もしかして初めての回転寿司ですか?」
結愛ちゃんが聞くと、頷く縛。……マジかぁー、金はあるなぁと思っていたけど、想像以上かもしれない。
「おっ?じゃ初めての回転寿司だし、おすすめ聞くか?」
柊木さん、面白がってるでしょ。ちょっ!どこでそのロシアンルーレット寿司を見つけたの!?回転寿司屋さんに置いていい商品じゃないよ。え!縛!頼むなぁ!
「あらあら〜。」
真美さんはうふふと笑ってるし、穏やかだぁ。
寿司が届いて、みんなでワイワイしながら食べてる中で、俺は結愛ちゃんに合図した。了解!と手でジェスチャーする結愛ちゃん。
「あっ、間違えて抹茶パフェ頼んでしまった〜。抹茶食べれないのに〜。」
そう言う結愛ちゃんはチラッと縛を見る。結愛ちゃん、バレるバレる!と俺は焦った。
柊木さんは好意で
「じゃ、俺が……つっー。」
と話し終える前に、真美さんに手をつねられていた。
……強い。
「……僕食べれるので、食べますよ。」
縛がそう言うと、結愛ちゃんが
「本当ー!やったー!助かる〜」
と嬉しそうに笑う。俺は縛が見えない所でナイスー!とグッとサイン。結愛ちゃんはタッチパネルをこっちに見せて、大トロを指差す。
ちゃっかりしてる。
どうぞ食べてください〜とジェスチャーをする。
「なんですか?さっきからうるさいですよ。」
と言いながら、重なった皿を一つ一つ流す所に入れる縛。……どうやら、回転寿司気に入ったらしい。
「い、いや〜暑いなぁ〜と思って!アハハ。」
手をパタパタする俺に、縛はそうですか?と不思議そうにする。鋭い時が多いのに、こういう時は本当鈍感。
「そういや、佐伯。今日本当に寿司だけか??」
柊木さんが大トロを食べながら聞く。……待って、それ何皿目??柊木さん??
「あっ、いや。実は今日育ててくれた人に会って。その人からこれ貰ったのですよー。」
箱を取り出すと、目の前で柊木さんが固まってる。真美さんが肘で何度も突っつく。結愛ちゃんも何故か、大トロを持ったまま固まってる。
「ん?どうしたんですか?」
俺が聞くと、柊木さんが口をパクパクする。縛は隣で同じくキョトンとする。そして目が合い、2人で頭を傾げる。
「そ、育ててくれた人?」
柊木さんが口を開くと、あーと俺は納得して話す。
「俺児童養護施設で育って、その時の施設長ですね。」
柊木さんがワタワタしていると、結愛ちゃんが
「私てっきりどこかのボンボンで、ニートしてると思ってた。」
めっちゃはっきり言うね!さすがJK。
「今有給取ってて、ちゃんと働いてるよー。」
と言うと、そうかーと大トロを食べ始める結愛ちゃん。
柊木さんはどうすればいいのか分からずに、ワタワタしてる。んーやっぱ、皆気になる事なのかなぁ〜と柊木さんを眺めていると、真美さんが箱を手に取る。
「立派な箱ね、この箱を貰ったの?」
俺は頭を振って、
「箱は貰ったのですが、中身は施設に入る前に付けていたものです。あの日の物です。」
そう言うと、柊木さんは真剣な顔になって、真美さんの手から箱を受け取る。結愛ちゃんも気になるのか、真美さんと席を交換して、覗き込む。
「これネームタグだなぁ。何で持ってるんだ?」
柊木さんが聞くので、
「施設長から貰いましたよ?」
その言葉に柊木さんがしばらく考え込む。そして、口を開く。
「いいか、事件に関わった証拠品は全て警察が保管してるはずだぁ。それが保管されずにここにある事がおかしい。これは誰かが意図的にやったとしか思えない。」
その言葉に、確かにー!と皆で顔を見合わせる。
「じゃ、何で持ってたのかなぁ?」
結愛ちゃんが不思議そうにする。
「誰かが持たせたんじゃないですか?」
縛が少し身を乗り出して真剣な顔で言う。口元に抹茶が付いているので、キリッとしても台無しだぁ。無言でティッシュを渡す。
「まぁ、とりあえず一つ情報が増えた事でいいじゃないですか?」
そう言う俺を信じられないという顔で見る柊木さん。え?なんか言ったっけ??
はぁーと深いため息を吐きながら、ネームタグを眺める柊木さん。
「まぁ、いいのか?よくないけど。もう警察じゃないし、いいか。にしてもネームタグって言っても、名前と数字だけしかないしなぁ〜」
独り言を話してたと思ったら、何やら葛藤している様子。結愛ちゃんも見たいー!と言いながら、ネームタグを持つ。
「すごい、なんかいっぱい数字が並んでる。何これ?」
と興味津々だぁ。
「何だろうなぁ〜。」
柊木さんも不思議そうに覗き込む。
「家にいる時に、俺らも話したのですが、分からなくて……」
情報が入ったと思ったら、情報がすぐ消える。
…………少し重たい雰囲気になった。
真美さんもネームタグを覗き込んでいると、結愛ちゃんに貸してと言う。
しばらくネームタグを持って眺めた後、
真美さんが口を開く。
「これ?ポケベルじゃない??」




