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人類の罪  作者: 華
幸せの形
143/144

本領発揮

「…………。」


皆の視線が、俺に集まっている。


……ん?


なんだ??


俺は不思議に思いながら、口の中に残っていたベーコンを噛んだ。


もぐもぐ……。


「……ごくん。」


飲み込む。


「……正樹くん。」


「ん?」


獅鳳くんが、真剣な顔で俺を見つめていた。


「それ、どこまで考えて言ってる?」


「……え?」


どこまで?


俺は首を傾げた。


「え? 例え話だよ〜!」


思わず声が大きくなる。


「そんな偶然の話ないよ〜。」


俺はそう言いながら、コーンスープを一口飲んだ。


……うん。


美味しい。


「はは、そうだよなぁ〜。」


柊木さんが笑いながら同意した。


「さすがに、そこまで都合よくいくわけないよな。」


「でしょ〜?」


俺も笑って頷く。


しかし。


「いや……そうとも限らないかもしれないですよ。」


「……ん?」


隣から聞こえた声に、俺は顔を上げた。


……縛?


「え!? 縛までそうやって言うの!?」


「可能性の話ですよ。」


「…………。」


……えぇ〜?


「……まさか、双子の伝承に関係があるのか?」


獅鳳くんが呟いた。


その言葉に、皆の表情が変わる。


「この時代の獅鳳くんたちでさえ、双子についてこれほど隠しているんです。昔はもっと厳しく隠されていてもおかしくありませんよ。」


縛が静かに言った。


「…………。」


……確かに。


双子の伝承。


あの巻物。


尾野家が隠してきたもの。


「それに、昨日の方は男性のようですから。」


「……あ。」


俺はふと思い出して、iPhoneを取り出した。


画面を操作して、昨日見つけた写真の画像を開く。


「…………。」


そこには、あの子が写っていた。


俺は画面をじーっと見つめる。


……ん〜。


こうやって見ると……。


「……似てるなぁ。」


「何がですか?」


「昨日の人。」


俺は縛に画面を見せた。


「ほら。なんか、目元とか。」


縛は画面を覗き込む。


「…………。」


「ね?」


「……確かに、似ていますね。」


「でしょ?」


……でも。


本当に双子なのかなぁ?


「もし、双子だったらという前提で話を続けるとしても、それを証明するものがないじゃない?」


真美ちゃんが口を開いた。


「確かに、似ているというだけでは判断できないわ。」


「……そうだよな。」


獅鳳くんが腕を組む。


「おばちゃんの昔のことなんて、俺もほとんど知らねぇし。」


「…………。」


皆が考え込んだ。


……証明するもの。


……証明。


ん〜。


何かあるのかなぁ?


すると。


「……ここにいるじゃん。」


小鳥遊さんが、ぽつりと言った。


「……ん?」


俺は顔を上げる。


小鳥遊さんは、獅鳳くんを指差していた。


「…………。」


……え?


「……俺?」


獅鳳くんが自分を指差す。


「そう。」


小鳥遊さんが頷いた。


「……あ!」


道徳が声を上げる。


「そうか!」


柊木さんも顔を上げた。


「……ん?」


……何?


何が分かったの?


「DNA検査すればいいのか!!!?」


獅鳳くんが驚いたように叫んだ。


「…………。」


……あ。


そういうことか!!


「おおおお!!」


俺も思わず声を上げた。


「すごい!!」


「もちろん、それだけで双子だと断定できるわけじゃないけどね。」


小鳥遊さんが言った。


「でも、今まで知らなかった人と血のつながりが確認できれば、可能性はかなり高くなるでしょ?」


「……確かに!」


俺は頷いた。


「それなら、調べる価値はあるね!」


「そういうこと。」


小鳥遊さんが笑った。


「……問題は。」


縛が静かに口を開く。


「どうやって、あの方のDNAを採取するかですね。」


「…………。」


……あ。


確かに。


昨日会っただけの人だもんね。


「……直接お願いする?」


俺が提案すると、皆が一斉にこちらを向いた。


「…………。」


……ん?


「……正樹さん。」


「はい?」


「もし相手が何かを隠しているのなら、警戒される可能性があります。」


「……あぁ。」


そっかぁ。


「じゃあ、どうする?」


「まずは、あの二人を探してみましょう。」


縛が答えた。


「……探す?」


「はい。見つけたら、接触できる機会がないか確認します。」


「…………。」


……なるほど。


俺は頷いた。


こうして。


俺たちは、あの二人を探すことになった。


------------------------------------------------------


……二日後。


「……だめだ。」


柊木さんが椅子に腰を下ろした。


「全く見つからねぇ。」


「…………。」


俺は目の前のテーブルに頬杖をついた。


……うん。


見つからない。


本当に見つからない。


あれから二日間。


俺たちは船内で、あの二人の姿を探していた。


柊木さんは人が集まる場所を中心に。


縛は船内を移動しながら。


小鳥遊さんも、仕事の合間に様子を確認していた。


……なのに。


「……どこ行ったんだろう?」


俺は首を傾げた。


「縛は?」


柊木さんが聞いた。


「見かけたのか?」


「……何度か。」


「え!?」


俺は勢いよく顔を上げた。


「見たの!?」


「はい。ただ……。」


縛が眉を寄せる。


「すぐに人混みに紛れてしまいます。」


「……え?」


「こちらが近づこうとすると、いつの間にか姿が見えなくなるんです。」


「…………。」


……ん?


それって。


「……逃げてるってこと?」


「断定はできませんが。」


縛が頷く。


「偶然にしては、少し不自然ですね。」


「……確かにな。」


柊木さんが腕を組んだ。


「普通の乗客なら、そこまで人を避ける必要もねぇだろ。」


「……そうですよね。」


道徳も頷く。


「そもそも、初日から何度も近くにいたというのに、こちらが探し始めた途端に見つからないのも気になります。」


「…………。」


……あ。


そう言われると、確かに。


今までは、探してもいないのに何度も見かけた。


なのに。


今は、探しても見つからない。


……なんで?


「……やはり、何かありますよ。あの二人。」


縛が静かに言った。


「…………。」


皆が黙り込む。


……ん〜。


どうしよう。


このままだと、何も分からないじゃん。


「……困ったなぁ。」


俺はテーブルに突っ伏した。


その時だった。


カサッ。


「……ん?」


何かが擦れるような音がした。


俺は顔を上げる。


小鳥遊さんが、小さな透明の袋を持ち上げていた。


「…………。」


……袋?


中には、細い糸のようなものが数本入っている。


「……ん?」


俺は目を凝らした。


……あれ?


これって……。


髪の毛?


「……小鳥遊?」


柊木さんが眉を上げた。


「それ、まさか……。」


縛も袋を見つめる。


「……すでに採取していたんですか?」


小鳥遊さんがにっこり笑った。


「そのまさかですね。」


「…………。」


……え?


ええええ!?


「いつの間に!?」


俺が驚いて声を上げると、小鳥遊さんは楽しそうに首を傾げた。


「僕の職業、忘れてます?」


「…………。」


……職業?


小鳥遊さんの?


「…………。」


俺は考えた。


……えーっと。


小鳥遊さんは……。


……あ!!!


「お医者さんで、今はこの船の船医だぁ!!」


俺が叫ぶと、小鳥遊さんは嬉しそうに頷いた。


「そうそう。」


「…………。」


「だからね。」


小鳥遊さんは、髪の毛の入った袋を指先で揺らした。


「体調不良の相談や健康チェックで医務室に来てもらう機会があれば、直接話もできるでしょ?」


「…………。」


……え?


俺は小鳥遊さんを見つめた。


小鳥遊さんは、にこにこしている。


そして――。


ニヤッ。


楽しそうに笑った。

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