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人類の罪  作者: 華
幸せの形
116/144

海の漂流物

山の上に、光が見える。


あそこに、なんかあるのか?


「縛ーー!!!はやくーーー!!!」


クルーズ船の近くまで行った正樹さんの声に、僕は振り向く。


「はい。今行きます。」


僕はそう返事をすると、再度視線を山の上に向けた。


「……光、なくなってますね。」


視線の先に映ったのは、生い茂った木々だけだった。


-----------------------------------------------


「縛ーー!!!はやくーーー!!!」


俺は後ろにいる縛に目線を向けると、なんか上の空だった。


「はい。今行きます。」


そう言うと、縛は再び顔を上げる。


なんだ?星空でも見てるのか?


不思議に思いながらも、俺には早く確かめないといけないことがある!!!


「ちょ、佐伯、痛い痛い!」


柊木さんが俺の手を叩きながら言うと、俺はそっちを見る。


あ、力込めすぎた。


グッと柊木さんの腕を掴んでた。


でも、柊木さんめっちゃ筋肉質なのか、あんまり掴めない。


「す、すみません!」


「もう着くから、手離してもいいと思うが?」


「はい!」


俺が手を離すと、柊木さんは真美ちゃんのところに行き、「まみちゃん〜」と甘えていた。


真美ちゃんの隣にいる結愛を見ると、めっちゃ冷たい目をしていた。


うん。これが柊木家の日常なんだなぁ。


クルーズ船の近くまで来ると、道徳達も急ぎながら帰って来た。


「お?どうした?」


柊木さんが言うと、道徳が焦った様子で口を開く。


「あ、凰真のことで気づいたことがあったんです。」


「え?」


「凰真が運ばれた時のことを思い出したんです!」


「もしかして、光るやつに関係ある?」


「え!?そうです!先輩も!?」


「多分、気づいたことは違うけど……関係あると思う。」


「じゃあ、一緒に行きましょ!」


「行く!」


「「獅鳳(くん)のところへ!!!」」


やっぱり同じだったのか!!


そうと決まれば行かないと!!


柊木さんも一緒に来ようとしていたが、道徳は穂乃果ちゃんを柊木さん達に任せることにした。


そして、俺と道徳と縛は、広いクルーズ船の中で獅鳳くんを探す。


部屋。


食堂。


ホール。


海側のテラス。


どこにもいない。


どうしようかと悩んでいると、縛が口を開く。


「船橋は探しました?」


「まだ!!」


そう言うと、俺らは近くにいた船員を見つけて事情を話す。


船員は「上に確認します」と言うと、すぐに連絡を取ってくれた。


そして許可をもらい、俺らはそのまま船橋へ連れて行ってもらった。


あ!いた!!


「獅鳳!」


「ん?どうした、道徳?」


振り返った獅鳳くんの顔色は悪く、目の下にはクマができていた。


「分かった!」


「……何が?」


道徳は獅鳳くんの肩を掴むと、勢いよく揺らす。


「あの腕時計!!おじさんのやつ!!」


「え?親父?」


「そう!!あれ、絶対おじさんがずーっとつけてたやつ!!」


「ん?待て待て。俺の理解力が落ちたのか?」


獅鳳くんが混乱していると、縛が口を開く。


「道徳さん、少し落ち着いてください。最初から状況を説明してください。」


「あ、そ、そうですよね!じゃあ、最初から話しますね。」


「はい。」


「今日、穂乃果さんと店を回っていた時に、偶然時計屋さんに入ったんですよ。」


ん?


今、ノロケ入った?


「そこで偶然、おじさんの昔の写真を見つけたんです!」


「お、おう?ここ開発したの親父だしなぁ。」


「その写真に写ってたおじさんがつけていた腕時計が!!」


「腕時計が?」


「凰真が運ばれた時に、凰真の手から落ちたんです!」


「あ?」


え?


あの腕時計、獅鳳くんのお父さんの?


でも、なんで?


なんで凰真くんが持ってたんだ?


「いやいや、そのはずないぞ。あれはおばちゃんのところにあるはずだぞ?見間違いじゃないか?」


「いや、見間違えてない。」


道徳がそう言い切ると、俺も口を開く。


「獅鳳くんのお父さんのかどうかは分からないけど、俺もあの腕時計を二回見た。」


「え?」


「一回は道徳と同じ。結婚式で凰真くんが運ばれた時。」


みんなが頷く。


「そして、もう一回は……海に落ちてたマネキンが腕に巻いてた時。」


「本気で言ってます?正樹くん。」


「うん。間違いない。」


「……待て。待ってくれ。ちょっと頭を整理させろ。」


獅鳳くんは船橋を出ると、近くにあったベンチに座った。


「はぁー……。」


そう言いながら、考える人みたいなポーズをする。


「凰真が持ってた腕時計を、道徳と正樹くんが見た……。それと同じ腕時計を、正樹くんは海に浮いてたマネキンでも見た……。」


獅鳳くんがブツブツと呟く。


「でも、親父の腕時計はおばちゃんが持ってたはずだ。」


「……はい。」


縛が静かに返事をする。


「おばちゃんは、今回の事件の被害者として亡くなってる。」


獅鳳くんが顔を上げる。


「それなのに、凰真が持ってた。」


「そうです。」


「しかも、同じ腕時計を正樹くんはマネキンでも見た……。」


獅鳳くんの表情が変わる。


「……いや、待てよ。」


突然、獅鳳くんが勢いよく立ち上がった。


「正樹くん!」


「は、はい!」


「あのマネキン、今どこにある!?」


「え?」


ど、どうしたのかなぁ?!


俺が驚いていると、縛も何かに気づいたように顔を上げた。


「……まさか。」


「早く確認するぞ!」


獅鳳くんがそう言うと、縛も頷く。


「行きましょう。」


「え?え?何!?」


俺だけ分からない!!


「回収した漂流物は保管されてるはずだ。案内する!」


獅鳳くんが駆け出すと、二人もついて行く。


え?!


訳が分からないまま、俺もついて行く。


そして、走ること約十分。


ようやく保管室に着いた。


「はぁ、はぁ、はぁ……。」


俺は上がった息を整えるのに必死。


でも、三人とも余裕な顔をしている。


……運動しよ。


そう決心した俺だった。


「わりぃ!急いで来てもらって。」


獅鳳くんが目の前の船員に言うと、船員は首を横に振る。


「だ、大丈夫です!!今、鍵開けます。」


大きな体格にそぐわない、優しい声だった。


意外だぁ。


俺はまじまじと船員を見つめると、縛に背中を叩かれた。


ごめんっ!


そう思いながら、自分の背中をさする。


いたい。


ガチャ。


開いた扉の向こうには、広い保管室があった。


傘。


キャリーケース。


服。


ドライヤー……。


とにかく、たくさんの落とし物が置かれている。


俺らは歩きながら、保管室の中を見て回った。


……おかしい。


なんで?


あんな大きい物が、なんで……?


「……ありませんね。マネキン。」


その言葉に、俺らは誰も返事をしなかった。

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