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人類の罪  作者: 華
幸せの形
113/144

蛍

「お待たせしました。こちら、ソーキそばとサーターアンダギーです。」


店員さんが目の前に持って来たソーキそば。


ホカホカの湯気と共に、美味しそうな匂いが漂ってくる。


「いただきますーー!!!」


俺が箸を割ると、隣で縛が店員さんに「ありがとうございます」と代わりにお礼をしてくれた。


早速!一口目!!


まずはスープー!


くぅー!!!うまっ!!!


次は麺!!


俺は一口分を箸で取ると、鼻いっぱいに入ってくる美味しい香りを味わう。


ズ、ズズー。


う、うまーーー!!!


麺と絡んだスープがうまい!!!!!!!!!!!!!!!!


次は、チャーシューも一口。


う、うまぁーーーーー!!!!!!


「正樹さん。」


うま、うま!うますぎる!!!


「正樹さん!」


「うま!う、うま?」


「声に出てますよ。」


「う、うまうま?」


「…………。日本語でお願いします。」


「お、た、大変!美味し過ぎて日本語忘れるところだった!」


俺がそう言うと、店内のあっちこっちからクスクスと笑う声が聞こえた。


はっ!!ここ、店の中だった!!!!


恥ずかしい!!!


穴の中に入りたいーー!!!


そう思いながら、縛の服のチャックを下げると、その中に潜り込もうとする。


「…………はぁー。」


縛のため息が聞こえ、俺は目の前にある筋肉に気づく。


ごくっ。


「え、縛が筋肉マンになった。」


「なってません。早く出てください!」


「は、はい!」


そう言うと、またもや店の中から笑い声が聞こえる。


俺が顔を上げると、斜め前にいる女の子と目が合った。


ん?珍しい髪色してる。


お?琥珀色の目?


まぁ、今時珍しくもないか。


そう思っていると、向こうも俺が見ていることに気づいたのか、ニコッと俺に笑顔を向けた。


その笑顔に、俺は思わず顔を赤くする。


その瞬間、隣から椅子がわずかに軋む音がした。


見ると、縛がいつの間にか俺との距離を詰めている。


肩が触れそうなくらい近い。


「……正樹さん?」


いつもより少し低い声で呼ばれ、俺は反射的に縛を見た。


縛は女の子のほうを一度だけ見たあと、すぐに俺へ視線を戻す。


その顔は笑っているのに、目だけがまったく笑っていなかった。


「な、なに?」


「いえ。何しているのかなぁと思いまして。」


「え?」


「……いえ、何でもありません。」


そう言いながら、縛は俺の前に置かれたソーキそばを、俺のほうへ少し押し出した。


「冷める前に、食べてください。」


「う、うん。」


俺が女の子から視線を戻すと、縛はようやく少しだけ表情を緩めた。


けれど、俺がまたちらりと斜め前を見ようとすると、縛の指がテーブルの上でぴくりと動く。


「正樹さん。ほら、早く食べないと麺伸びますよ。」


なんだ、その冷たい声は。


そう思いながら、自分のソーキそばに顔を戻す。


「スピードが命。」


俺はそう言うと、目の前の麺に集中した。


隣から冷たい視線を感じるけど、無視!無視!!


俺はそう思いながら、ひたすら目の前のソーキそばのみ!!!!


しばらくして、隣の縛はやっと動き、サーターアンダギーを食べる。


甘い物に癒されたのか、隣から冷たい風がなくなった。


うん。これから縛用に甘い物持ち歩こう。


うんうん。


そう決意して、俺は目の前のソーキそばを食べ終える。


「ごちそうさまでした!」


俺が食べ終えると、縛が荷物を持って立ち上がる。


「ん?」


「行きますよ。」


いつもゆったりしている縛にしては珍しい。


そう思いながら俺が立つと、縛が俺の背中を押す。


「先に外で待っててください。」


「ん?ご飯のお金。」


「共有財布から今日出すので、いいですよ。」


「え!いいの!!?」


「いいですよ。」


「やったー!ラッキー!」


共有財布とかいつも生活費にしか使えないのに〜。ふふ、ラッキー。


俺がスキップしながら、店を出る。


縛ははぁーと後ろでため息をつきながら、俺が赤面した女性を見て、


「本当、面食いですね。」


とボソリと言っていたことに、俺は気づかなかった。


俺が店を出ると、シロは目の前の木に止まっていた。


本当、今日人がいる時にいるの珍しいなぁ。


「シロ、お待たせ〜。」


俺がそう言うと、シロは「カァー」と鳴きながら顔を背ける。


「ん?」


反応が微妙なシロに、俺は首を傾げる。


すると、後ろから縛の声が聞こえた。


「何、野生動物に挨拶しているのですか?」


「……シロは知ってる動物です。」


「そういう意味で言っていたわけじゃないですけどね。」


「ん?」


「まぁ、いいです。ほらっ、行きますよ。ジェラートの店行きますよ。」


縛に腕を引っ張られながら、俺はそのまま歩き出す。


「え、シロは?」


「野生動物なので、ほっといて大丈夫です。」


「え、えーーー!シローーーーー。」


俺が声を上げると、シロは「カァ」と鳴いて、顔を少し上げる。


なんか鼻で笑われた気がする。


俺はモヤモヤしながら縛に引っ張られ、そのままジェラートの店へ。


すると、そこには結愛ちゃんがいた。


「あれ!?正樹くんと縛くんじゃん。やっぱここの店来るよねぇー。」


結愛ちゃんがニコニコしながら走って来る。


相変わらず青春の輝きが素晴らしい。


「当たり前ですね。ここのおすすめは食べないとですね。」


縛は当たり前だぁみたいな雰囲気出してるけど、俺は初めてだよ。


「何かおすすめなの?」


俺が聞くと、結愛ちゃんが看板を指差す。


「これ、ちんすこう味!美味しいらしいよ!」


そう言うと、ちょうど店から柊木さん達が出て来る。


「お、結愛ちゃん。ちゃんと待ってたなぁ〜。えらいぞー。」


柊木さんがそう言うと、ジェラートを結愛ちゃんに渡す。


「あらあら、結愛ちゃんはもう高校生ですよ。あんまり小さい子扱いすると、口聞いてもらえなくなるわよ。」


真美ちゃんがそう言うと、「そうだそうだ」と隣にいた結愛ちゃんがジェラートを食べながら頷く。


「お?佐伯達じゃん。」


「柊木さん達、偶然ですね!」


「さっきぶりだなぁ〜。」


そう雑談しながら、俺は看板をチラッと見る。


え、待って。


「ソーキそば味がある。」


俺が言うと、柊木さんが驚く。


「なんだ突然。」


そう言うと、俺の視線の先を見る。


「……うまいのか、それ。」


「世の中はチャレンジですよ!!縛ー!!!」


俺が後ろを振り向くと、縛がいなかった。


え?


「なんですか?」


声がして振り向くと、縛が店内から出て来た。


その手にはダブルのジェラートがある。


「はやっ。」


「ジェラートは逃げますからね。」


「いやいや、逃げないよ。」


俺がそう言うと、縛は返事もせずジェラートを食べる。


まぁ、いいか。


「……見て!ソーキそば味があるよ!」


俺が言うと、縛は嫌そうに眉間に皺を寄せる。


「邪道です。」


そう言うと、また自分のジェラートを食べた。


その禍々しい紫色と水色のジェラートは何?


とツッコミたいが、突っ込んだら終わりだということは、さすがに俺も知ってる。


そう思いながら、俺はジェラートを注文する。


「お待たせしました。」


店員さんからジェラートを受け取ると、俺は店を出た。


「ん?皆いない。」


俺がキョロキョロと辺りを探すけど、誰もいない。


外も暗くなって来たし、仕方ないので看板の前に立ってソーキそば味のジェラートを食べる。


「…………。」


冷えたスープの味がする。


俺はさっき食べた温かいソーキそばを思い出しながら、ジェラートを食べていると、目の前に急に小さな光が現れた。


「ん?」


俺がその光に視線を合わせると、その光はチカチカと点滅していた。


そう思っていると、また目の前に光が現れる。


「………これ、蛍?」


俺はそう言うと、チカチカ光る蛍についていく。


ガサッ。


ガサッ、ガサッ。


どんどん道を進むと、なんだか草が増えて来たような気がする。


いつの間にか、持っていたジェラートも食べ終えていた。


蛍が葉っぱに止まり、チカチカと光る。


「綺麗〜。」


そう思いながら、しゃがんで蛍を見る。


すると、一匹。


また一匹。


暗闇の中に、どんどん小さな光が増えていく。


「スゲェー!!!」


俺が感動していると、


「カァー。」


聞き慣れた声がした。


「ん?」


俺が振り向く。


ガサッ。


木と木の間から、一人の女性が出て来る。


銀色の長い髪は月の光に照らされ、キラキラと輝いていた。


その周りを、たくさんの蛍が飛び交っている。


暗闇の中で、琥珀色の瞳がやけに目を惹く。


…………綺麗。


俺がその光景に圧倒されていると、女性の肩から見慣れた姿が顔を出した。


「カァー。」


シロだぁ。


「え?」


ガサッ。


さらに、女性の後ろの草むらが揺れる。


そこから姿を現したのは、白い獣。


その後ろには鹿。


さらに、その奥にも様々な動物達がいる。


…………。


銀色の長い髪。


琥珀色の瞳。


肩にはシロ。


周りには蛍。


そして後ろには動物達。


…………ものの◯姫だぁ!!!



【縛と正樹の共有財布裏話】

1.縛7割入金、正樹3割入金(強制)

※正樹は「半分ずつにしよう!」と言いましたが、それを巡って縛と喧嘩。3日間口を聞かない状態が続きました。結局、縛が落ち込んでいるのを見て、正樹が折れました。

【後日の正樹によるコメント】

ありがたいけど、なんか最近周囲から囲まれている気がする………。うん。きっと気のせいだと思う。

うん、多分。

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