ひとときの休息
日付超えちゃいましたーーー!!!
遅れました!!間に合わなかった!!!すみません!!
今回はひとときの休息回です!
正樹達には少しだけ事件を忘れて、沖縄を満喫してもらいました!
……少しだけね。
太陽の心地よい日差しに、汗がじわじわと出て来る。
目の前にはもちろん――。
ザザーン……。
ザザーン……。
「海だぁぁぁぁぁーーー!!」
俺は両手を広げながら、透き通った海へと向かう!
青い空!
白い砂浜!
そして、どこまでも続く綺麗な海!!
最高ーーーー!!!!!
昨日までの出来事が嘘だったんじゃないかと思うくらい、目の前には穏やかな景色が広がっていた。
そのことに心がチクリと痛む。
「正樹さん!走ったら転びますよ!」
後ろから長袖を着た縛の声が聞こえて来る。
「大丈夫だよーー!」
俺は暑苦しい縛を振り返って見る。
「あなたの大丈夫は信用できません!」
「なんで!?」
俺は海まであと一歩の所で足を止めた。
「今までの自分の行動を振り返ってください!」
「…………。」
俺何もしてないしなぁ〜。
そう思いながら浮かんだのが、救命ボートでの頭ゴンッと2日間昏睡。
そして起きた時に増えた謎のタンコブ。
俺のせいじゃなくない?
そう思いつつ、縛の方を向くと縛が険しい顔をしている。
……とりあえず何か言わないと……。
「……気を付けます。」
「そうしてください。」
縛は満足そうにすると、自分の長袖を捲り上げる。
袖の中から現れたのは筋が見える腕。そして、袖を捲り上げる長い指。
俺は思わず唾を飲み込む。
……いやいやいや。うん。喉乾いた!
俺は大人しく歩くことにすると、縛がいつの間にか隣に来る。
ぅ……おかしい!同じ汗かいてるのにいい匂いする!!
同じ洗剤なのに!!!
そう思いながら縛の方を向くと、長袖の上着から見える凛々しい胸筋。そして、屈んだ時に見えた6個に割れた腹筋。
……ごくっ。
俺は思わず目を逸らすことができなかった。
そう思っていると、縛が急に俺の前に近付いて来る。
ッ!!ちかっ!近い!
「な、なに!?」
そう言うと、縛が俺の顔を覗く。
まつげながっ!
「何とはなんですか?焼けますよ?」
そう言いながら、どこから出したのか上着をもう一枚取り出すと、俺の肩に被せる。
「はい、着てください。」
……だから、縛はドラ◯もんか!?
俺はどこから出したのか確かめるため、縛の周りをぐるっと一周して観察したが、謎は解けず、そのまま上着を着る。
その俺の姿を縛が唇を舐めながら見ていたことには気付かなかった。
シロはそんな縛を見て、縛の肩に降りると、頭を突っつく。
「……。」
「うぉ!シロ何してるの!?」
俺は微動だにせず止まっている縛を突っつくシロを急いで止める。
シロを腕の中に抱っこすると、シロは不服そうに「カァー」と鳴き、俺の腕の中で暴れる。
「シー!あそこにいる閻魔様を怒らせると俺でも止められないぞー!」
俺が小声でシロに言うと、縛が後ろから声をかける。
「聞こえてますよ。」
「やばい!」
そう言って俺が腕を広げると、シロは飛び立って行く。
俺も空に飛んでいきたいーーー!!!!!
「先輩、朝から元気ですね……。」
いつの間にか、後ろから道徳達も砂浜へ降りてくる。
「おー!道徳!海だぞ!」
俺は道徳に顔を向けると、道徳の顔に疲れが出ているのが見えた。
「見れば分かりますよ。」
そう言うと、道徳は少しクスッと笑って隣の穂乃果ちゃんを見る。
「ふふ、いつも楽しそうですね。」
道徳はそんな笑っている穂乃果ちゃんを、そりゃ嬉しそうに見つめる。
なんか、急に胃がぁ……胃もたれしちゃう〜。
「おうおう、元気なのはいいことだぁ。」
そう言いながら、柊木さんが頷きながら歩いて来る。後ろには真美ちゃんと結愛ちゃんもいる。
「ふふ、同じ船にいたのになんだか久しぶりだね。」
真美ちゃんがそう言うと、柊木さんがガハハと笑い出す。
「まぁ、その方が真美ちゃんを独り占めできるから俺は嬉しいけどなぁ!!」
柊木さんがそう言うと、真美ちゃんは柊木さんを睨む。
「ま、まぁ!とりあえず今日は遊べ遊べ!」
柊木さんが大きな声で俺達を海へ送り出す。
……昨日から完全にお父さんだな。
「柊木さんも来ないの?」
「俺はいい!若い奴らで行ってこい!」
「柊木さんもそんなに歳変わら――」
「行ってこい!」
「はい!!」
怖っ。
俺はすぐに海の方へ向き直る。
その時――。
カァー!
頭の上を白い影が通り過ぎた。
「おっ!シロ!」
珍しく人が多い所に来てる。
すっかり元気になったシロは、そのまま海の方へ飛んでいく。
「おーい!遠くまで行くなよー!」
カァー!
返事をするように鳴くシロに、縛は後ろでため息をつく。
「……正樹さん。」
「ん?」
「カラスに話しかけても分かりませんよ。」
「昨日アイス巡って会話してた奴が何言ってんだよ。」
「…………。」
「…………。」
パッと縛が目を逸らす。
ふん、勝った。
やったーー!!初めて縛に勝ったぞぉー!!!
「ふふっ。」
突然、隣から笑い声が聞こえた。
見ると、穂乃果ちゃんが口元を押さえて笑っている。
「ご、ごめんなさい。二人って本当に仲良いんですね。」
「え?」
俺と縛は同時に顔を見合わせる。
「一緒に住んでますから、人並みには……。」
「同居人だからね!」
俺が言うと、またもや顔を見合わせた。
「…………。」
「…………。」
「お互い素直になったらどうです?」
道徳が呆れたように俺達を見る。
「……仲良いよなぁ!」
「普通です。」
「縛!!」
ふん!なんだよ普通って!
俺はこんなに一緒にいるから、仲良いと思ってるのに!!
「まぁまぁ。」
穂乃果ちゃんが笑いながら道徳の腕にそっと手を絡める。
その瞬間。
「…………。」
道徳の動きが止まった。
ん?顔、赤くない?
「道徳?」
「な、なんですか?」
「りんごだぞぉ?」
「馬に蹴られますよ!」
「海だけど。」
「海にも馬がいますからね!」
「へぇー。」
「なんですか、その顔!」
なるほど〜。これが新婚かぁ。
俺がニヤニヤしながら二人を見ていると、恥ずかしくなった道徳が穂乃果ちゃんから離れようとする。
しかし――。
ガシッ、ギュッ。
穂乃果ちゃんが頑として離さない。
「…………。」
道徳の顔がさらに赤くなる。
「道徳。」
「なんですか。」
「幸せそうだな。」
「うるさいです!!」
その声が、静かな砂浜に響き渡った。
それから俺達は海でたくさん遊んだ。
いやー!!沖縄の海綺麗ーーーーー!!!!!!
ぐぅー。
「お腹空いたのですか?」
縛が俺に聞くと、俺は頷く。
「おーーい!!そろそろ飯にするぞー!!」
そっちを向くと、柊木さんが少し離れた所でビールを片手に肉を焼いていた。
「もう!ご飯でしょ、お父さん!」
結愛ちゃんがプンプン怒っていた。
それを見て、俺らは大笑いしながら柊木さん達の所まで行く。
BBQを食べ終えると、せっかくだから午後からはそれぞれ別行動することになった。
柊木さん達は結愛ちゃんの行きたい場所へ。
なんか恋が叶う神社らしい。
さりげなく、柊木さんと真美ちゃんが手を繋いでいたのは見なかったことにしよう。
うん。本当ラブラブだなぁ。
そして道徳と穂乃果ちゃんは――。
もちろん二人きり。
新婚だからなぁ〜。
ふふふ。これ以上邪魔しちゃ年上として面目が立たないよ。
そして俺はと言うと、もちろん隣にはいつもの縛。
俺が縛を見ると、縛は眉間に皺を寄せる。
「不満ですか?」
「いえ、とんでもございません。」
まぁ、いつも通りだなぁ。
俺らは何をするかというと、そりゃもちろん!!
「次、あっち行きましょう。」
「また!?」
縛の手には、さっき買ったばかりのアイス……そして反対の手には、何かよく分からない沖縄のお菓子が入った袋。
そう。
縛様のデザート巡りである。
「縛、さっき昼飯食ったよね?」
「食べましたよ。」
「その後アイス食ったよね?」
「食べましたね。」
「その手に持ってるの何?」
「お菓子です。」
「見れば分かるよ!!」
なんでそんな細い体に入って、太らないんだよ!!!
「正樹さんだって、さっきからずっとソーキそばの店探してるじゃないですか。」
「違う!」
「何がですか。」
「ぞーきそば!!」
「ソーキそばです。」
縛は呆れた顔をしながら言う。
「ぞーき!」
「ソーキ。」
「ぞーき!!」
「ソーキです。」
お互いにまたもや顔を見合わせる。
「…………。」
「…………。」
俺は、負けないぞ。
「ぞーき。」
「ソーキ。」
「ぞーき!!」
「正樹さん。」
縛は突然止まると、後ろの店を指差す。
「ん?」
「一生食べられなくてもいいんですか?」
そう言うと、店の看板を指差す。
俺は疑問に思いつつ見ると……。
『沖縄そば・ソーキそば』
「ソーキそばです。」
「よろしい。」
くっそぉぉぉぉ!!
ずるいー!
俺は悔しさを噛み締めながら店に入る。
「…………。」
「…………。」
「何か言うことはないですか?」
「ありがとうございます!!」
そう言って、俺は全力で店の中に向かって走り出す。
「正樹さん!走らない!」
「ソーキそばぁぁぁぁぁ!!」
「さっき昼食べたでしょう!」
「そばは別腹!!」
「そんな別腹ありませんよ!それにここ店の中!」
ある!!
ラーメンが入るなら、そばだって入る!!
店に入ると、店員の目が点だぁ。
「い、いらっしゃいませ。」
そして店の外ではシロが、
カァー!
と鳴く。
………どこかに潜れる穴はありませんでしょうか?
縛が後ろで呆れながら言う。
「2名です。」
「は、はい。お好きな席にどうぞ。」
そう言うと、店員さんが席を案内してくれた。
にしても、今日は海に縛のデザートとソーキそば。
んー、充実してる!!!
俺はこの時。
本当に事件のことを忘れていた。
だから――。
俺達が店に入ってから、ずっとこちらを見つめている人がいたことなんて。
この時の俺は、気付きもしなかった。




