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人類の罪  作者: 華
幸せの形
107/144

Happy Wedding!

すごい。俺がドキドキしてきた!!!


別に俺が結婚するわけじゃないんだけど。


なんだろう! この緊張感。


俺は落ち着かず、何度も座り直す。


「正樹さん。」


俺は縛の方を向く。 


「ん?」


「少し落ち着いてください。」


縛が呆れたように俺を見ていた。


「だって道徳が結婚するんだよ!?」


「知ってます。穂乃果さんも結婚します。」


「なんか緊張しない!?」


「正樹さんほどではありません。」


そう言って、縛は正面へ視線を戻す。


船内に造られたチャペルは、初日に見た時とはまるで違っていた。


真っ白な椅子には華やかな花が飾られ、その間を花びらで彩られた一本のバージンロードが伸びている。


正面の大きな窓には白いカーテン。


その向こうには、どこまでも続く青い海が広がっていた。


やがて神父さんが入ってくる。


さっきまで小さく聞こえていた話し声が止まり、チャペルの中が静かになった。


そして音楽が流れ始める。


扉が開き、道徳が入って来た。


ゆっくりとバージンロードを歩いてくる。


「…………。」


おお! いつもと全然違う。


真っ白な礼服に身を包んだ道徳は、いつもより背筋が伸びて見えた。


……礼服着ると、いつもの百倍くらいかっこいいなぁ。


いや、いつもがかっこ悪いって意味じゃないよ? 多分。


道徳が正面に立つ。


少し緊張しているのか、いつもの笑顔とは違って表情が硬い。


そして――。


「新婦の入場です。」


司会者の声が響く。


全員の視線が後ろの扉へ向いた。


音楽が変わり、ゆっくりと扉が開いた。


「…………。」


わぁ。


思わず声が出そうになった。


純白のウェディングドレス。


細かな刺繍が入った長い裾が床に広がり、その上には光を受けて小さな飾りがキラキラと輝いている。


髪は綺麗にまとめられ、白いベールが肩からふわりと落ちていた。


その手には、白を基調とした花束。


昨日まで普通に話していた穂乃果さんとは、まるで別人みたいだった。


「綺麗だね。」


俺が小さな声で言うと、縛も隣で静かに頷いた。


穂乃果さんは仁志さんと腕を組み、ゆっくりと歩き始める。


……はずだった。


「あれ?」


二人が立ち止まった。


どうしたんだろう? 何か忘れ物?


俺が首を傾げていると、司会者が口を開いた。


「ここで、もうお一方。新婦より、一緒に歩いていただきたい方がいらっしゃいます。」


「ん?」


「東雲縛様。前へお願いいたします。」


「…………。」


「え?」


思わず俺が縛を見る。


縛も珍しく目を見開いていた。


「縛?」


「……聞いてません。」


だよね!?


周囲から小さな笑い声が聞こえる。


縛は戸惑いながら立ち上がると、司会者に促されるまま穂乃果さんのところへ向かった。


穂乃果さんは驚いている縛を見て、嬉しそうに笑う。


そして、仁志さんとは反対側の腕を縛の腕に絡めた。


三人で歩き始める。


仁志さんと。


穂乃果さんと。


縛。


なんだか不思議な光景なのに――。


すごく温かかった。


三人はゆっくりとバージンロードを歩き、道徳の前までたどり着く。


縛は穂乃果さんの手を道徳へ託すと、そのまますぐそばに用意されていた席へ案内された。


道徳が穂乃果さんの手を握る。


二人が向かい合った。


神父さんの声が、静かなチャペルに響く。


病める時も。


健やかなる時も。


互いを愛し、支え合うことを誓う。


二人の声が重なった。


そして――。


道徳が穂乃果さんのベールを上げる。


ゆっくりと顔を近づけていく。


二人の唇が重なった。


その瞬間。


天井から真っ白な羽が舞い落ちてきた。


「わぁ……。」


ひらひらと。


ゆっくり。


二人を包むように降ってくる。


まるで、天からも二人のことを祝福しているみたいだぁ。


俺は拍手をしながら、二人を見る。


いいなぁ。


家族になるって。


きっと、こういうことなんだろうなぁ。


------------------------------------------------


結婚式を終え、俺たちはそのまま披露宴会場へ移動した。


「縛!」


少し先を歩いていた縛を見つけ、俺は駆け寄る。


「びっくりしたね!」


「……本当に聞いてませんでした。」


まだちょっと困惑してる。


「でもよかったよ!」


「そうですか?」


「うん!」


俺たちは一緒に披露宴会場へ入る。


そこにはチャペルとはまた違う光景が広がっていた。


大きなシャンデリア。


綺麗に並べられた料理。


色とりどりの花で飾られたテーブル。


あちこちから楽しそうな笑い声が聞こえてくる。


しばらくして道徳と穂乃果さんが入場すると、会場中から大きな拍手が起こった。


そして乾杯。


グラスを持って前に立ったのは、獅鳳くんだった。


「道徳、穂乃果さん。結婚おめでとう。」


いつもの獅鳳くんより、少しだけ真面目な声。


短い言葉のあと、グラスを掲げる。


「二人の幸せを願って――乾杯!」


「乾杯!!」


グラスがぶつかる音が、あちこちから聞こえる。


料理が運ばれ、笑い声が響く。


道徳も穂乃果さんも、本当に幸せそうだった。


そして――。


「それでは、新郎新婦によるケーキ入刀です!」


会場の中央に、大きなウェディングケーキが運ばれてくる。


「でっか……。」


何段あるんだ、あれ。


食べ切れるのかな。……余ったら貰えないかなぁ。


二人が並び、大きなナイフを手にする。


「せーの!」


二人がケーキへナイフを入れた。


パチパチパチパチッ!!


大きな拍手。


皆からの祝福の歓声。


俺も思いっきり手を叩く。


その時だった。


ガタンッ。


「ん?」


ケーキを運んできたワゴンが、小さく揺れた。


誰かがぶつかった?


ガタンッ。


もう一度。


今度はさっきより大きく揺れる。


周りの人たちも気づいたのか、少しずつ拍手が止まっていく。


「……なんだ?」


スタッフの一人がワゴンへ近づく。


そして、下の扉に手をかけた。


カチャッ。


扉が開く。


「…………え?」


最初に見えたのは――手だった。


赤い……

血に濡れた手。


次の瞬間。


中から人が崩れ落ちた。


両手。


両足。


その口までテープで塞がれている。


全身が血に濡れていた。


「きゃああああああああ!!!」


誰かの悲鳴が会場中に響き渡る。


椅子が倒れ、食器が落ちる。


さっきまでの歓声が、一瞬で悲鳴へ変わった。


「凰真!!!」


獅鳳くんが駆け寄る。


床に倒れた凰真くんの体へ手を伸ばした、その瞬間。


「触るな!」


小鳥遊が獅鳳くんの腕を掴んだ。


「でも!」


「動かすな!」


いつもの間延びした声じゃない。


小鳥遊はすぐに凰真くんのそばへ膝をつく。


首元に指を当てる。


そして顔を近づけ――。


呼吸を確認する。


「…………。」


「おい……。」


獅鳳くんの声が震える。


「小鳥遊……。」


「…………。」


小鳥遊は何も答えなかった。

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