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六甲おろし

ダンジョン時代と言う殺伐とした世界であるが、いや殺伐だからこそなのだろう。

娯楽を人々は尊ぶ。

特にスポーツは「スキル」の登場で大きく姿を変えた。

当初は「スキル」の使用は禁止されたが誰が使っているか分からないし「スキル」自体が個人の才能として世界的に認められたからだ。

例えばパラ選手でも「スキル」によっては健常者にも勝る事が出来るのも大きい。

ある意味、平等になったのだ。


そして100m走は2秒を切る様になった。

体操やフィギュアスケートなんてもう何回転回っているか目視出来ない。

どれもハイスピードカメラが必須となった。

勿論、観測系の「スキル」を持っている人間には極上の娯楽だ。

それに彼等アスリートは自身のスポーツを心の底から愛しているからそのスポーツに対応した「スキル」を授かるのだ。

それ以外の心根でスポーツをしている人間は必然的に排除され健全性が大きく向上した。


そんな超人スポーツに変貌したのだ。


---


「ストライッッック、アウゥゥゥト!!!」


西宮の阪◯球場に審判の怒号が響き渡る。

全観客の腹に打ちつける重低音。

何も選手だけが「スキル」を持っている訳では無い。

審判と言うポジションに対応した人間もいるのだ。

絶対的なストライクゾーンの把握に爆発的な判定のコールだ。


先ほどの球速は300km超えの速球だ。

今のプロ野球では平均的と言える。

もはや打者や剣術系スキルを持たない人間は手も足も出ない領域に突入している。

しかも打者と野手の複合スキルを授かった者はいない。

監督のバランス感覚が問われる時代でもあるのだ。


「テッッメエ、こらぁ!見逃しとか舐めてんのか!」


今日の影打君は地元球団の応援だ。

⋯応援だよね?

影打君の周りも似たような物だけど。


6回裏ツーアウト1塁で次のバッターは佐藤輝々。

チームやセ・リーグを代表するバッター。

ホームランが出れば逆転でチームは首位奪還チャンスの場面だ。


ズドン!


ストライクがコールされる。

バッタの頭上から一気に落ちる内角ギリギリの280kmのフォーク。

打てる物では無い。

しかし、佐藤のスキルは「強打者」同じスキルをを持つものは多いが基礎能力が違う。

だが⋯


ズドン!


今度はスライダーで外角低め。

戸村翔征は相手チームのエース。

そう簡単では無い。

スキルは「エース投手」チームで1番の投手になるスキルだ。 

チームが強ければ強いほどに能力が向上するピーキーな物なのだ。


そして内角真ん中のストレート!

佐藤の強振。

低反発コンポジットのバットがへし折れボールは内野フライに倒れた。

何故、低反発コンポジットだって?

決まってるじゃないか。

普通のバットだとへし折れカーボンコンポジットだと飛びすぎるからだよ。

勿論、ボールも低反発だ。


1-0投手戦である。

7回表 相手チーム読買ジャイアンツの攻撃である。

才森浩人投手の1球目が投げられる。


バシッ!


大きく弧を描いたカーブ!

彼の持ち球の中では配球があまりされない変化球を初球にあえて持ってくる。

その配球に相手バッターも虚を突きれた様だ。

そしてツーストライク、ワンボールになり⋯。

彼の代名詞、回転数が平均を大きく上回る5000rpmで球速320kmのストレート!

既にボールは物理的にポップしているのだ。

ストライクゾーンから高めに逃げるボール球。

打てはしない。

キレがある伸びがある?

そんな言葉は既に過去の物だ。

次の打者には四球を与えるがその後2人には低めから一気にストライクゾーンにポップするストレートで2者連続の三振を奪う。


影打君もこれにはニヤリと笑う。

気分を良くしたのか売り子にビールを頼む。

ガッと流し込む黄金色がまだまだ暑い球場に沁みる。


淡々と試合は進み9回裏ワンアウト二塁。

再びの佐藤輝々。

スキルの燐光が激しく輝く。

これは勝ったなと地元球団阪神ネコラーズのファンは沸き立つ。

1球目はボール、2球目はストライク、3球目と4球目派ファール。

段々とタイミングが合って来る。

そして戸村のストレート!

ガシャ!!

と佐藤はバットの芯にボールを捉えた。

ボールは大きく弧を描きスタンドへ飛び込ま⋯なかった。

若林苦人だ。

彼がフェンスを駆け上がり20mのジャンプでホームランボールをキャッチしたのだ!

彼のスキルは「名手」ライト側全てをカバーする絶対の壁。

超人野球と化した野球では投げた打っただけでは済まないのだ。

ほら、最後のバッターと思われた5番が四球で出塁し二塁に代走が送られ「ランナー」持ちが次々と盗塁を決めホームスチールで同点だ。


スキル「ランナー」は最終兵器となったのだ。

だけど、そのスキル持ちは少ない。

だれだってスタメンで打ちたいからね。

点差がつけば出番も無い。

同じ走ると言っても陸上競技では有効な種目も無いから野球から転向も出来ない。

野球の奴隷なのだ。

野球選手と言っても野球らしい事は殆どしない。

1点を取るだけの役割。

望んでなる人間の心理が良く分からない。

ただ1つ救いがあるとすれば年俸だけはそれなりに高いと言うだけだ。


さて、試合は同点のまま、延長で引き分けとなった。

影打君や双方のファンも微妙な顔つきだ。

残りはシーズン最終戦。

デッドヒートではある。

逆転劇の可能性に期待しようじゃないか影打君。


甲子園球場近くの阪◯電車に野球ファンとともに乗り神戸の自宅に顔をしかめながら戻る。

何やら納得してないみたいだね。

自衛隊から贈られた新品のシャベルを持ち近くの公園でスイングを始める。

その爆音!

音速を超えたスイングスピードとシャベルと言う扁平の形から打ち出される空気の塊が木々を揺らす。

もう、結構な夜だ。

近所迷惑もいい処なんだよ。

なに、ふがいない阪神ネコラーズの選手に代わって俺が出るだって?

ダメだよ、君が出ると死人が出るしスイングスピードが速いとボールに当てられるは別の話なんだ。

この球を打ってごらん。

140kmのナックルボールだ。

ほら、3球とも当てられなかっただろう?

これは今の超人野球になる前に投げられたボールだよ。

じゃあ投手?

⋯まあ、やってごらん。

ストライクゾーン描いてあげるよ。


「死ねぇ!」


影打君から渾身のボールが放たれた。

見事に想定の右打者頭部付近の壁とボールが砕け散った。

何度やってもマトモにストライクゾーンに入らない。

投げる度にボールも砕け散る。

だから言ったでしょ。

影打君が出ると死人が出るって。


そんな事していると近隣の住人から通報があったのだろう。

警察がやってきて酷く説教をくらった。

近所迷惑だって言ったやん。


---


今日は阪神ネコラーズの最終戦、勝てば優勝だ。

だけど今日は行かないのかい?

チケット取れなかったか。

それじゃあ仕方無い。


テレビで観戦だね。 

試合はネコラーズが優勢に進み2-6だ。

観客も六甲おろしを歌い始めた。

影打君もご満悦。

だけど8回表から様子が変わる。


やけに読買ジャイアンツの応援歌VIV◯ GIANTSが大きく響き渡る。

あれ?ネコラーズの選手が急に虚ろな目になってきたぞ。

あっという間に二塁三塁そして四球で満塁だ。

怪しい雲行きだ。

そして、走者一掃のタイムリー!

1点差まで詰められる。

何か変だな。

甲子園を観てみるか。

え~と、どうだろ?

ん?あれは、ジャイアンツ側のスタンド上部に異能個体だ。

そのスキルは「応援」だと!?

それは強力なバフやデバフ効果を起こす強力なスキルだ

正直このスキルを持つ者は極少だ。

純粋な気持ちで他人を応援出来る人間は正直少ない。

モンスターともなれば0%と言っていい。

前回もだがUSSRのレアモンスターである。

影打君に知らせなきゃ。


---


「てっめえ、こら!よくもやってくれたな。ネコラーズが負けたやんけ!」


怒りに燃えた影打君からは異能個体君は逃げ切れ無かった。



そんな私怨に燃える理由は明白だ。

人々を救う希望の光。

つまり「ヒーロー」だからだ。



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今回の異能個体君のリザルトだよ~


阪神ネコラーズのシーズン優勝の阻止


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