鑑賞会後の両家族
おまけ - 龍神一族
「ひぐっ……………レイチェル様の歌声は………ひっく、まるで女神です…………」
『鑑賞会』が終わったあと。
ヒマワリ・スタジアムに龍神一族は揃って足を運んでいた。そして、歌を聴いたセラフィールは1曲1曲にコロコロと表情を変えていた。そして、今は最後の歌『正夢』に泣いていた。横に座っていたフィアラセルはそんな姉の背中を撫でた。
「お姉様、泣かないで。………確かに素敵だった。僕はあの、生命に嫌われているが好きだった。切実で………お母様は何が好きでしたか?」
「わたくしはどれも好きですが……やはり、ロミオとシラユキヒメ、が好きでした。殿方と共に在りたいという気持ちが伝わってきて…………お父様はどの曲が心に響きましたか?」
アミィールはちらり、と隣に座るラフェエルを見る。ラフェエルはじ、と始まる前に渡されたパンフレットを凝視している。
「お父様?まだへそを曲げているのですか?レイチェル様を認めてないからと素晴らしいものを否定するのは許しませんよ」
「…………誰も否定などしていない」
「では、なぜ黙っているのですか?」
「…………本当に素晴らしいものを全身で感じるのに言葉は必要なのか?」
「………!」
ラフェエルの言葉に、思わずアミィールは目を見開く。父親の言葉は間違いなく震えていて、いつも険しく寄せている眉のシワがない。
______セオ、この『鑑賞会』は間違いなく成功ですよ。
アミィールは小さく笑って、未だに『帰ったらレイチェル様に他の歌も歌ってもらいます!』と言いながら号泣しているセラフィールの頭を撫でた。
* * *
おまけ - 滅茶苦茶一族
「あ~いい曲だった~!やっぱりヒマワリの曲は偉大ね」
「偉大なのは私の娘のチェルよ!」
同じ時刻、龍神一族と反対の席に座っていた滅茶苦茶一族はそんな話をしていた。この場にいる全員がレイチェルの歌を聞き、ヒマワリとロウを悼んでいる。しかし、このうるさい一族が静かに悼むわけがなく。
勝花は目をきらきらさせながらロックを見る。
「ロック!ちゃんとビデオ回した!?ねえ!撮ってなかったなんて言ったら怒るわよ!」
「………うるせえ、ちゃんと録画してるよ。大体…………3台もビデオを準備する必要はあったのか?」
ロックは呆れながら隣を見た。隣には____青筋を立ててビデオを構えている龍己と、今にも泣きそうな顔でビデオを構えているクラウドが。
「あったりまえだろがぁ!?チェルが初めて人前に出たんだぞ!?永久保存に決まってるだろ殺すぞ!?」
「その通りだ、ロック。今日は記念日だ。持って帰ってヒマワリとロウの仏壇に飾る」
「仏壇に飾られたってヒマワリは喜ば………ないわけがないわね。ロウさんはずっと見てそう。
それよりどうする?チェルに会いに行く?もれなくアドラオテルくんの挨拶があると思うけど」
「…………俺ァ帰る。行くぞ一花」
「俺もだ。ショーカ。帰るぞ」
「えー、私はアドラオテルくんと「帰るぞ」………ちぇーっ」
それぞれが席を立って出口に向かっていく。1人取り残されたクラウドは柔らかい椅子に身体を預けて呟いた。
「____本当に頑固な2人だな」
その顔にはしっかり笑顔があった。
* * *
おまけ - レイチェル & アドラオテル
「なー、レイチェル。よく最後の歌えたな。台本になかったろ?」
「えっと、私も予想外でしたけど………1曲、歌いたい曲があったから歌えました」
「最後の?凄く優しい曲だったな。なんというか、………純愛、って感じだった」
「そうです。あの『正夢』は……その、えっと、……アドラオテル様の事を考えて、私が作った歌…………で」
「………!」
抱き抱えるレイチェルの言葉に、アドラオテルは目を見開く。レイチェルの顔はこれでもかと言うほど赤い。
____こんなの、ずりーじゃん。
「………レイチェル、『正夢』………後で、俺しかいない時に、歌って」
「ええっ、そ、それは………」
「約束、な?」
「~っ、は、はい………」
か細い返事に、アドラオテルは嬉しそうに笑ったのだった。




