鑑賞会=コンサート!? #08
また曲が始まった。先程の魔法が蝶の形になり、女を包む。ドラゴン仮面とチェルの肩には大きな蝶のタトゥーがある。2人で背を合わせてデュエットすると、お似合いな2人に魅了される。
それが終わると、女の服がまた変わった。見たことがない服を着て、メガホンを持っている。少し大人びた子供達は全員頷いて、チェルと一緒に叫んでいた。まるで、今の不満をぶつけるような大声だ。
それを聞いたチェルは満足気に笑って言う。
「次は、最後の曲です。聞いてください」
チェルの言葉に不平をこぼす子供たち。それを横目に、チェルは歌を紡いだ。先程の激しい曲ではなく、ゆったりとした音程。湿っぽい曲が終わりを伝えるようで、涙を流す子供達。
歌い終わると、辺りが真っ暗になる。ぱ、と黒髪の女が現れた。そして言う。
「こういう時はね、我儘を1回聞いて貰えるの!魔法の言葉はーーーー『アンコール』!
アンコール、アンコール、アンコール!」
女は手拍子をして叫ぶ。それを聞いた子供達は互いの顔を見て大声で「アンコール」と言い始めた。中には大人も混じっている。
アンコールを言い続けると、ぱ、とステージがまた光に照らされた。チェルは露出が激しいドレスを着て、テラスのような場所で歌い始めた。
思春期にはたまらない大人の魅力で、ガッカリしていた男達も魅入っている。何より、ドラゴン仮面と劇のように抱きしめあっているシーンには女子は失神した。
無事歌い切り、安堵する3人に再びアンコールの言葉が降り注ぐ。メガネは目に見えて戸惑い、ドラゴン仮面は女をちらりと見た。モノ欲しげな顔に、顔を引き攣らせながらも小さく頷いた。
「ほ、本当にこれで最後です!聞いてください!
『正夢』です!」
チェルはそう言って、音楽が流れない中、歌う。アカペラなのに、派手な演出はないのに、子供達は胸をときめかせ、大人は涙を流した。純愛の、歌。歌い終わると、レイチェルは肩で息をしながら、ぺこり、と頭を下げた。ステージは下降していく。雨のような拍手を聞きながら____『鑑賞会』は、終わった。
* * *
「……………や、やっと終わりました………………」
「レイチェル!」
舞台が下がったのと同時にレイチェルはその場に倒れそうになる。それをアドラオテルは抱き留めた。そして、汗に濡れる頬を撫でて、問う。
「…………大丈夫か?」
「だ、大丈夫です…………こんなに幸せなのに、寝ていられません」
「………そっか。でも、倒れたら怖いから」
「え?___きゃっ!」
アドラオテルはレイチェルを姫抱きする。レイチェルは弱々しくアドラオテルの服を引っ張った。それを見てから、アドラオテルは口を開く。
「ヨウちゃん、行くぞ」
「は、アドラオテル様」
ヨウはアドラオテルに言われて後ろに控え、後を追ったのだった。
* * *
「レイチェルちゃん………お願いだよ………」
「レイチェル、聞く必要ないぞ」
「……ええっと………」
セオドア様が泣きそうな顔で私に頭を下げている。アドラオテル様はむすっと膨れていらっしゃる。
なぜ?それは____………
「お願いだ………孤児院でまた歌を歌ってくれ………」
………こういうことである。
ありがたいことに、私の初めてのステージは成功したらしい。あの後涙を流したセオドア様に曲の名前を聞かれたり、歌詞を教えてくれと言われた。
一応ヒマワリおばあちゃんのスフィアを貸したんだけど、ヒマワリおばあちゃんのテクニックは難しいらしく、わかりやすく教えて欲しいと言われ、私はピアノで数曲弾いた。それを聞いたセオドア様は私に頭を下げて楽譜を覚えた。
だけど、子供達は本当に夢みたいな話なんだけど、私の歌を聞きたいと言ってくれているのだ。
でも、アドラオテル様は「図々しい」と毒づいて、こうして板挟みにあっている。
「わ、私でよければ「レイチェル、父ちゃんを甘やかすな」えっと、スフィアに歌声を「それだと少し音が変わるだろう?」………うう………」
板挟みに苦しんだ私は結局、アドラオテル様が行く日で、なおかつ月に1回だけ、孤児院に行くことで納得して貰った。
___ありがたいけど、恥ずかしいような………私、子供との交流なんて怖くてとても………。
新たな問題が生まれたのは別の話。




