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天使の涙 #01

 









 「ふふふーん♪」



 夏、レイチェルは猛暑の空の下、鼻歌を歌いながら雑草を抜いていた。熱中症は怖いけど、最近魔術の練習をしているから水魔法と風魔法を絶妙に調整して涼しく感じる。魔法って偉大。




 昔から使えるけど、人を傷つけることしかできないと思ってたから、それ以外の用途で使えるなんて素晴らしすぎる。草むしりも捗るというもの。私、意外と凄いんじゃ___「レイチェル様…………」………ん?




 不意に、名前を呼ばれて顔を上げる。そこには___天使のセラフィール様が。声をかける前に私は駆け寄った。



 だって、セラフィール様は泣いていたから。



 「せ、セラフィール様!?どうなさったのですか!?」




 「ひぐっ、レイチェル様………うわぁぁぁぁぁん!」



 「ッ」




 私が尋ねると、緊張の糸が切れた子供のように泣きじゃくって私に抱きついてきた。すごい勢いだったから身体が揺れたけど、そんなのどうでもよかった。



 「な、なにがあったんですか!?セラフィール様!」



 「ひぐっ、アダム様が………アダム様が………ッ、最近!わたくしから顔を背けるのです!目を見てくださらないんですううぅぅううう!」



 「…………はい?」




 大号泣しながら発せられた言葉に、私は思わず真顔を作った。




 * * *





 「落ち着きましたか?」



 「ぐずっ、………ごめんなさい」




 私たちは一先ず移動した。セラフィール様とアダム様の関係は公にされたものでは無い。だから、私の部屋に来た。ライラにお願いして紅茶とお菓子を用意してもらい、泣いているセラフィール様から話を聞いた。



 最近、アダム様はセラフィール様と話す時、顔を背けてしまわれるらしい。近づいても、触れても、目を見てくださらない。それで今日は共に本を読んでいて、話をしようとしたら顔がとても近かっただけで飛ぶように離れられて、悲しくなってしまったらしいのだ。




 私はそこまで恋愛に詳しいわけじゃないけど、少女漫画は山ほど見てきた。どう考えたってセラフィール様をとても意識していて、好きだからこそ近づきにくい、好きだからこそ顔を合わせるのか恥ずかしい…………って場面だと思う。



 でも、軽はずみにそんなこと言えない。だってセラフィール様は本当に悲しんでいるし、それはアダム様が伝えるべきだと思うから。




 でも、何を言えばいいんだろう…………。




 「………セラフィール様、えっと、………その………」



 「いいのです、レイチェル様」




 セラフィール様は紅茶をこくり、と飲んでからか細い声で言う。



 「わたくしがアダム様に何か不快な思いを抱かせてしまったのだから、仕方ないことなのです。ちゃんと謝って、その上で嫌わないでくださいとお願いします。


 それでもだめだったら、わたくしは、アダム様と…………」




 「セラフィール様…………」




 ___こういう時、アドラオテル様ならどうするだろう。




 ___私がセラフィール様ならきっと同じことをするし同じことを感じる。でも、アドラオテル様はいつも違う、そうじゃない、と教えてくださる。




 ___なら、私が言うべきことは。




 「…………セラフィール様」




 「はい?」




 「私はアダム様とお会いしたことがないし、どんなお人柄かはセラフィール様が仰ってくださったことしかわかりません。



 その上で言わせてください。………謝る前に、なぜその行動を取るか、本人に直接聞くべきだと思います」



 「ですが………怖いです。もし、わたくしのことが嫌い、と仰られたら……」



 「私の意見ですが___アダム様は、セラフィール様に会うために、逢瀬場所に来ているのだと思います。


 嫌いな人間にわざわざ逢いに来ません。



 ………セラフィール様は、嫌われてません」





 「………ひぐっ………」





 セラフィール様は、また涙を流した。私は立ち上がってセラフィール様に近づいて、「失礼します」と言ってから抱き締めた。



 ____アダム様、お願い致します。



 ____セラフィール様を、泣かせないでください。大事にしてください。



 セラフィール様は___こんなにも貴方を愛しているのだから。




 誠実に、向き合ってください。



 そう、願いにも近い気持ちを持って、胸の中で泣きじゃくるセラフィール様を抱きしめた。









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