誕生日プレゼントは #06
アドラオテル様は静かに、低い声で言う。
「…………何をしようとした?」
「あ、アドラオテル様………こ、これは、その平民がわたくしのアイスを………それで、少しお灸を……」
「そのようなことでこの者に暴行をしようとしたのか?」
「も、申し訳ございません…………」
「…………もういい。視界から失せろ」
「あ、あの!」
アドラオテル様の言葉に逆らうように、女性が声を上げた。涙目だ。
「そんな平民の娘などアドラオテル様がお守りする必要はございません!わたくし、ガレイ公爵家の者で、アドラオテル様を拝見したく祭りに参加したのです!
これも何かのご縁!わたくしと「黙れ」………ッ」
アドラオテル様は鋭い言葉を放った。こんなに怒ったアドラオテル様を初めて見て戸惑っていると、ふわり、身体が浮いた。逞しい腕が、私の身体を持ち上げている。
「この者は____俺の婚約者だ」
「…………は?」
「____!」
アドラオテル様はそう明言して、私を抱えながらふわりと浮いた。周囲の人間が私達を見る。ふよふよと浮きながら神輿に来ると、アドラオテル様は次は大声で叫ぶように言った。
「この者はッ、俺の婚約者だ!」
「!?」
____アドラオテル様がそう言って私を見た。そしてに、と歯を見せて笑っている。変装のためにかけていたメガネがずり落ちる。
だ、断言されてしまった………!う、嬉しいけど、なんで!?なんで今!?
パニックに陥ったのは私だけではなく。その場に居た人間全てがパニックに陥った。
「おいっ!聞いたか!?あのアドラオテル様が婚約者を連れているぞ!」
「結婚しないと明言していたアドラオテル様だぞ!?」
「おい記者!ちゃんと写真は撮ったか!」
「アドラオテル様いやーっ!誰かの物にならないでーーーーーっ!」
阿鼻叫喚、地獄絵図。怒鳴り声と叫び声とその場の熱と揺らぐ視界の中、私は最後の気力をもって、口を動かした。
「…………秘密、なのに…………」
「レイチェル!?おい、レイチェル!」
私はアドラオテル様に呼ばれながら意識を手放した。
* * *
レイチェルが祭りに居たのには気づいていた。髪の毛を隠すように黒い帽子を被り、軽装をしていて、明らかに異世界人!って格好をしてたから。さり気なーく近づいて朝のことを話そうとしたら女性に囲まれて動けなかった。
様子を見ようとちらり、と見たらレイチェルの腕を俺以外の男が掴んでた。それを見たら頭が真っ白になった。
____俺の女に汚い手で触れるな!
そう叫びたい気持ちで飛び出して、もうこんなことがないように「婚約者だ」と言った。………秘密だったけど、誰かに取られる位なら俺のものだと言いたかった。そしたら、レイチェルが気を失ってしまったのだ。
「ッ、俺、城に戻る!」
「わかっております。早くレイチェル様を連れて帰りなさい」
「うん。早く医者に見せてあげなさい」
「アド!ここはいいから早く帰りなさい!」
「わかってる!じゃあな!」
俺は転移魔法を使って、城に帰った。医者には「過労と寝不足」と言われた。




