誕生日プレゼントは #05
____アドラオテル様の両親もとても仲良しだけど。
私のうちも、中々に仲良しだ。というか、熱々カップルだ。
「クラウド、ほっぺにタレついてる」
「取ってくれ」
「ん」
そう言って大おばあちゃんはぺろ、と普通に、当然のように背伸びをして大おじいちゃんの口元を舐めた。大おじいちゃんは平然とそれを受けて、「お礼だ」なんて言ってたこ焼きを大おばあちゃんの口に入れて笑ってる。
その一連の流れがスムーズに行われている。街ゆく人々はそれを見て目を見開いているけど、これが私たちにとって普通なのだ。
でも。
その曾孫の私は、こういう所を受け継げなかったようで。今もアドラオテル様とキスした、という大事件で頭がいっぱいだ。
最近やっと、やっとの思いで膝枕くらいはできるようになった………とはいえ、やっぱりどきどきしちゃうんだけど。できるようになったと言っておこう。
………こんな、こんなカップルになりたい。いちいちドキドキして、ときめいて、それはもちろん大事だし幸せだけど、なんというか……堂々と愛し合えるような、そんな関係。何をされても恥ずかしくないくらい仲良く、睦まじく…………。
「………チェル?またぼーっとしてるぞ。本当に大丈夫か?」
「あ………だ、大丈夫だけど、少し休みたい」
「そうか。なら休もう。いいだろサシャ」
「ダメダメダメダメ!私はもっと食べたい!まだわたあめ食べてないもん!」
「サシャ………お前は食べすぎだ。糖尿病寸前って言われているだろう」
「しらぁん。私は無敵だから糖尿病になんてならないもん。あっ!遠くに水飴発見!行ってくるーーーー!」
「あっ、こら!……全くあいつは……」
「お、大おじいちゃんも行ってきていいよ。大おばあちゃん止めないと。また軟派されちゃうよ?」
「あの馬鹿はあれでも強いからなんとかするだろう。それよりチェルの方が心配だ」
「そこは心配してないけど、糖尿病から守れるのは大おじいちゃんだけだよ。私、ここにいるから行ってきて?」
私がそう言うと、大おじいちゃんは少し考えてから「ここにいろよ」と言ってから行ってしまった。大おばあちゃんはあれでいてもう100歳なんだもん。見た目詐欺だよね。誰も信じてくれないだろうけど、事実だ。病気になって欲しくない。
私は1人、ぼんやり人に囲まれている神輿を見る。アドラオテル様の周りには沢山の女性が居て、みんな顔を赤らめている。………なんだか、アドラオテル様との距離が遠く感じる。
本来、アドラオテル様と私は月とすっぽんで、結ばれることの無い関係だった。でも、そのアドラオテル様は今日、私にキスをした。……私のどこが好きなんだろう………。私は特別頭がいいわけでもなく、腕っ節が強いわけでもなく、友達も自分で作れない、ダメダメな婚約者だ。
「…………アドラオテル様に見合う女になりたいな………っきゃ!」
どん、と人にぶつかった。ごめんなさい、と言う前にぶつかったドレス姿の貴族な女性が口を開いた。
「ちょっと!あなたのせいでアイスが服に着いちゃったじゃない!アドラオテル様にこれから会いに行くのに!」
「ご、ごめんなさい!今、染み抜きを……」
「触らないで!」
「ッ」
ぱちん、と頬を叩かれた。ジンジンと痛む。女性はさらに言葉を重ねた。
「あなた平民でしょ!?汚らしい身なりをして、この式典を冒涜しているのですか!?即刻立ち去りなさい!」
「あ、でも、人を待っているので………」
「口答えするなんて生意気ね!やっておしまい!」
「___ッ」
女性は後ろに控えていた男性に声を掛けた。護衛だろう。その護衛が私の腕を掴んだ。手首をギリギリと締め付けられ、痛い。背中まで熱くなってきて、羽根が出ようとしてる。それはだめ。式典が滅茶苦茶になる。
アドラオテル様____!
「………離せよ」
「イダァッ!」
「!」
心の中で名前を呼ぶのと同時に、聞きなれた声と男性の悲鳴が聞こえた。手首も軽くなり、私はおずおずと目を開けた。そこには___見慣れた、群青色の髪の後ろ姿。赤と金の服を着たアドラオテル様が、男性の腕を掴んでた。




