誕生日プレゼントは #07
「…………ん」
「レイチェル!」
目を覚ましたのは、もう窓から月明かりが差し込む時間帯だった。外からまだがやがやという声が聞こえるけど、それよりも鮮明に聞こえたのはベッドの横にいるアドラオテル様の声…………ってぇ!?
「あ、アドラオテル様!何故私の部屋に!?ね、寝顔………!寝顔!見ちゃいましたか!?」
「落ち着けって、………お前は寝不足と過労で気を失ったんだよ」
「え……………」
アドラオテル様の言葉に考える。確かに、最近私は寝不足気味だった。隠れてハンカチを刺繍していたし、普通に日中も修行や趣味に没頭してて………あまり寝てなかった。寝たおかげか、心做しかさっきより頭が軽い。
それはともかく!謝らないと!
「ご、ごめんなさい、私が倒れたから…………まだ式典の途中なのに……」
「いや、謝るのは俺だろ。……ごめん、秘密、破った」
アドラオテル様はそう言って頭を下げた。私は慌てて言葉を紡ぐ。
「あ、頭をおあげ下さい!アドラオテル様は私を守るために仰ってくださったんです!私のために、その、……こ、婚約者だと明言させてしまい……」
「…………違う」
「え?」
アドラオテル様はぽつり、と否定した。私が聞き返すと、アドラオテル様は優しく私を抱き寄せて、消えそうな声で言った。
「………俺は、俺の為に明言したんだ。レイチェルが他の男に取られないように……俺のものだって、言いたくて………ごめん、秘密にしてたのに」
「…………っ」
弱々しい声に胸が締め付けられる。
アドラオテル様の独占欲に触れた、気がした。こんなに私を愛してくださっている。………2人だけの秘密よりも、ずっとずっと嬉しい。
私はごくり、と唾を飲み込んで、未だに躊躇する腕を動かして、アドラオテル様に抱き着いた。アドラオテル様はぴくり、と身体を揺らしたけど、拒まなくて…………涙が出た。
「………アドラオテル様、………嬉しくて、怖いです。私は……未熟なのに、こんなに幸せでいいのですか?」
「レイチェル、………怖くない。俺が守るから。レイチェルが未熟なら、俺はもっともっと頑張るから。
だから…………」
アドラオテル様は少しだけ私から離れた。月明かりがアドラオテル様の群青色の髪と真剣な顔を照らす。
「____ちゃんと俺のものになって」
「っ…………ん」
私が頷くと、アドラオテル様は顔を近づけて、私にキスをした。2回目のキスは少しだけ涙の味がする。
1回目のキスはあんなに慌てたのに、今は慌ててない。それどころか温かくて優しい気持ちに包まれて___もっとしていたい、と思わせた。
私達は、月に見守られながら、何度も何度も触れるだけのキスをしていた。
* * *
おまけ - アドラオテル & レイチェル
「レイチェル、…………ごめん」
「?」
何度目かのキスをして、アドラオテル様は少し離れた。もうキスは終わりなのかな?と寂しい気持ちになるレイチェルに、アドラオテルは顔を逸らした。
「………アドラオテル様?私、汗臭かったですか?」
「違う!そうじゃなくて!………その、今だけ俺に近づくな…………」
「………私、なにかしてしまいましたか?」
「だから、そうじゃないって!~ッ、ああもう!
これ以上キスしたら、キスだけで済まなくなるんだッ!」
「???」
何も分かっていない純粋なレイチェルに、思春期真っ只中のアドラオテルは必死に男の本能と戦っていたのだった。




