結ばれた日の『翌日』 #02
セラフィール様とフィアラセル様は私なんかのことを心配してくださっていた。インフルエンザにはかかったけど、それよりも恋煩いが酷くて帰って来れなかった………なんて、言えるわけもなく。
私は嬉しさと申し訳なさで眉を下げる。
「セラフィール様、フィアラセル様、ご心配をおかけしました。もう………大丈夫です。ごめんなさい」
「謝らないでくださいまし!レイチェル様はわたくしの大切な妹で親友なのです!」
「っ、……」
セラフィール様はそう言ってぶんぶんと首を振ってから私の手を両手で包んでくださった。長女でぼっちの私にとって、どっちも新鮮で、………申し訳なさよりも嬉しさが先立つ。
「あ、ありがとうございます…………わ、私も、セラフィール様と家族に、親友になりたい………です」
「もうなってます!わたくし達は、姉妹で親友なのです!なので、そんなに畏まらないでくださいまし!」
「っ、はい………!」
____少女漫画の友情の一コマみたい。アドラオテル様と出会ってから、私は幸せ____「ところで」…………?
不意にずっと私の顔を見ていたフィアラセル様が口を開いた。
「なんで目、腫れてるの?泣いた?」
「あ____」
私は慌てて片目を抑える。
わ、忘れてた…………!ていうか、フィアラセル様も気づく!?いや!たしかに酷いけど!ライラに化粧で誤魔化してもらったはずなのに!
「レイチェル様、泣いたのですか?またアドがやらかしたのですか?」
「あ、えっと、………ほ、本当になんでもないんです、これは………」
私は顔を赤くしながら必死に弁解する。結ばれた、と言いたいけど、私はまだ修行中。アドラオテル様との約束を破れない………!
「ほんと、ほんとーーーーに、なんでもないんです………そ、それより!御二方!私は、えっと、図書館に行きたいです!行ってきます!」
逃げるようにその場を後にした。嫌な感じになってしまったかもしれない。そもそも私のために来てくださったのに申し訳ない。………でも、これだけは秘密にさせてください…………!
私は心の中で何度も謝りながら歩く。
部屋の中でセラフィール様とフィアラセル様が顔を見合わせて「アドが何かやったんだ」と話してることも知らずに。
* * *
…………腫れた目のことを聞いた時、レイチェル様の挙動がおかしかった。
絶対アドラオテルがなにかやらかしたんだ。
わたくしの妹で、親友のレイチェル様を泣かせるなんて、許せません。
だから。
「…………アド」
「お兄さま」
「んー?なんだよ、執務遅れてるぞセラ。あとフィア、お前今日は何しに来たんだよ」
執務室、アドラオテルはどこか上機嫌で書類の整理をしていた。それがわたくしを腹立たせた。
「アドの馬鹿!」
「は?」
「レイチェル様を泣かせるなんて!最低です!」
「…………」
レイチェル様、と言った途端アドラオテルの顔が真っ赤になって固まった。……やっぱり、何かやらかしたんだわ。
「レイチェル様に何をしたのですか!場合によってはわたくしと共に謝りに行きますよ!さあ!早く!」
「だ、な、何………」
「僕もついていくから。ちゃんと謝って」
「い、いやいや、お、お前らには関係ないから」
「関係ない!?関係ないとはなんですか!兄弟の不始末を見逃すわけにはいきません!」
「そうだよ。僕も、レイチェルが泣くのは嫌だ」
「~ッ!いいから!ほっとけよ!
仕事終わった!あとはセラの分野だけだ!鍛錬場に行ってくる!」
「あっ、アド!」
アドラオテルは何かを言いたげにしてから席を立って部屋を飛び出してしまった。なんですか、あの言い草は。本当に兄弟として恥ずかしい。……とはいえ、鍛錬場は人気が多い。今の時間兵士だっているだろう。そんな中喧嘩をしたら皇位争いと間違われてしまう。
「フィア………後でアドの部屋に行きますよ!」
「うん。僕、お兄さまを縛ってレイチェルの所に連れてく」
「わたくしもお手伝いします!2人でアドを捕まえましょう!」
____何も知らない兄弟はガッ、と握手をしたのだった。




