結ばれた日の『翌日』 #03
「~♪」
一方、レイチェルは鼻歌を歌いながら庭園で借りた本を読んでいた。先月はとても寒かったけど、春も1歩手前だからか今日は温かい。ちなみに今読んでいるのは礼儀作法の書物。
………先程セラフィール様とフィアラセル様に励まされて、心配されて、嬉しかったからかほんの少しだけ冷静になったけど、逆にロマンス小説の背表紙を見ただけで恥ずかしくなってしまった。明らかに修行不足である。
は、早く慣れないと…………アドラオテル様に迷惑かけちゃう。
アドラオテル様、何しているのかな?
やっぱり執務、忙しいのかな。
…………会いたいなあ。
「おや、レイチェルちゃん」
「ひうっ!」
思いに耽っている時、声がした。慌てて立ち上がり顔を上げると___アドラオテル様のお父様のセオドア様がいた。
「こ、こんにちわ……じゃなくて!ごきげんよう!」
「ふふっ、こんにちは。それより、どうしたんだい?病み上がりなのにこんな寒いところで………レイチェルちゃんも土いじり?」
「え、っと………今日はその、読書を……、実家ではほとんど外に出なかったので……」
「そうなんだ。………目が腫れてるけど、泣いていたとかじゃない?」
「う"…………」
その言葉に、私の顔は熱を集中させる。化粧でごまかせないブスだったか……。
「ほ、んとになんでもなく…………」
「立ち話もなんだし、私もベンチに座ろうかな」
セオドア様はスムーズな所作で私の隣に座った。私も座るように促されて、それからまた言葉をかけられた。
「で、アドは何をしたんだい?レイチェルちゃん、大丈夫なフリなんてしなくていいんだ。
私は___本当の家族じゃないけど、それでも家族だと思ってる。何を話しても怒らないよ。
アドはアミィに似て直進型だし、ハッキリした性格だから言い方がきついかもしれないし………そんなアミィも可愛いけど、アドは男の子なんだから………」
「____」
____私って、本当に視野が狭いな。
セオドア様の話す様子を見て、痛感した。セラフィール様も、フィアラセル様も、セオドア様も。こんなに私のことを気にかけてくださっている。
暖かい気持ちにつられて、言葉を紡いだ。
「………ご心配、ありがとうございます。
アドラオテル様の言葉や行動に傷ついたり、嫌な思いをしたことなんて1度もないですよ。
アドラオテル様は、とても優しい方ですから。
だから、その、安心していただけると………」
私がそう言うと、セオドア様は一瞬目を見開いて、それからすぐ笑顔になった。
「………そっか。その腫れた目は嬉し涙だったんだね」
「そうです…………あっ!」
これもうバレちゃってるんじゃ……!?う、嬉し涙なんてもう答えじゃん!や、やらかしたぁぁぁぁぁぁ!
嵐のように荒れ狂う心の中。それが見抜かれているかのように、セオドア様は笑顔で「いつか話してくれるのを待ってるよ」と仰った。
私は消えるような声で「いつか、きっと」としか言えなくて、………やっぱりこの家族は甘々だな、と思った。
* * *
「ふんふふ~ん♪」
「セオドア、上機嫌だな」
「お、わかるか、レイ」
部屋にて。お菓子作りの片付けをしていると控えていたレイにそう聞かれたからそう言った。




