実家満喫中! #03
アドラオテル様は弟の悲鳴を聞きながらアイスを食べ始めた。………さ、サイコパスなのかな?
「それより、アイス食べて俺たちも泳ごうぜ?レイチェルは泳げる?」
「えっと、一応……人並みには………」
「そっか。じゃ、競走しようぜ!」
「___ッ」
アドラオテル様はアイス片手ににひ、と笑った。……か、かっこいいよう………本当に私、アドラオテル様の隣に立つことなんて出来るのかな…………。
そんなことを思いながらアイスを食べて、海に入った。競走は勿論負けて、私達は沖まで泳いで戻れなくなってしまった間抜けなシエルを助けてから全員で遊んだ。
* * *
「ん~………」
「すぅ………」
夕方の海、はしゃぎすぎてすっかり疲れてしまったシエルは私の膝で寝ている。アドラオテル様の膝にはフィアラセル様が眠っている。
「………寝ちゃいましたね」
「だな。フィアの寝顔なんて久しぶりに見た。よっぽど楽しかったんだな」
アドラオテル様はとても上機嫌だ。ありありとフィアラセル様が大事なんだと伝わってくる。………アドラオテル様は、存在が既に不敬レベルで粗相をするシエルを笑って許してくださった。シエルは昔から人外の血が色濃く、異端として扱われてきたから人との関わり方が私よりもわからないのだ。
だからこそフィアラセル様に無茶をさせたり、アドラオテル様に突っかかったりした。それでも優しく、明るく接してくれて………嬉しくなった。
「………アドラオテル様、ありがとうございます」
「いいって。気にすんな。……綺麗な海だな」
夕焼けに染まる海を見て、アドラオテル様は目を細めて笑う。そう言っているアドラオテル様の方が綺麗で、見蕩れてしまう。
「レイチェル?どうした?」
「あ、や、えっと、そ、それより!こうして子供を見ながら海を見てると親子感がありますね!私とアドラオテル様が夫婦で、子供たちを見て……ハッ!」
「____!」
真っ赤になるアドラオテル様を見て、私は慌てて口元を塞ぐ。顔も当然のごとく熱い。
何言っちゃってるの私ーーーーーー!?確かにずーーーっと心の片隅でそう思ってたけど!言わないでしょ普通!
は、恥ずかしすぎる………「そんなわけねえじゃん」なんて言われたら泣ける___「………レイチェル」……。
呼ばれて、恐る恐る顔を上げる。
アドラオテル様は赤い顔のまま、それでも真剣な顔で私を見た。大きな手が、私の頬に触れる。近づいてくる顔に、私は固まる。
こ、これって、少女漫画によくある、キスシーンでは………!?だ、だめよ!私達は仮初の婚約者で、私はまだふさわしくなくて、………でも………。
アドラオテル様の紅と黄金の瞳、凛々しい御顔。夕日の光に照らされて、濡れた群青色の髪から水滴が落ちていて、………全ての時間が止まる。動けない私に、アドラオテル様はもう鼻と鼻がくっつきそうなくらい近づいて口を開いた。
「レイチェル___」
「っ、アドラオテルさ__」
「これは恋!!!!!!」
「ぶっ!!!!」
「レイチェル!?」
突然、シエルが大声を上げて飛び起きた。その勢いのついた後頭部、顎に直撃。痛い。しかし後頭部を強くぶつけたはずのシエルは目を擦りながら言う。
「んん、あれ?『運命すぐそこ』は?」
「………シエル…………、飛び起きるのはやめなさい………」
「なんだぁ、夢かぁ。あっ、フィア!起きろー!!!」
「んわ、っ………五月蝿いシエル………」
「へへー!それが私!なんつって☆それよりお腹すいた!帰ろ!」
シエルはそう言ってフィアラセル様の腕を掴んでまたまた強引に浜辺を歩き出す。残された私達は、真っ赤な顔をお互い隠して、言葉を紡いだ。
「…………帰ろう、レイチェル」
「…………はい、ごめんなさい………」
「2人ともー!帰ろー!」
「引っ張るな!」
遠くからシエルたちの声が聞こえていたけど、それよりよっぽど私の心臓の音の方がうるさかった。
___この暑さは、コスタ・デル・ソルの気温だ。
そう、自分に言い聞かせて。




