実家満喫中! #02
フィアラセル × シエル
「…………すごいな」
僕はぽつり、本を読みながら呟いてしまう。レイチェルに渡された『名探偵コハン』のまんが、というものを読んでいる。字はわからないけど、絵が描いてあって、見やすい。………これ、借りられないかな。字はレイチェルに教えてもらえば読めそう……………「フィアラセルくん!」………?
不意に呼ばれて、本から目を離す。
そこにはシエルと呼ばれた女の子がにこにこしていた。
「遊ぼ!」
「………僕は、いい。本読むから」
「遊ぼ!」
「………だから、本を「遊ぼ!」…………」
シエルはにこにこしながら詰め寄ってきた。そして、僕の手を両手で包んで言う。
「私、同い年の友達いないから!寂しいの!遊ぼ!」
「…………僕、走ったりはできないよ?人混みも苦手だし……」
「いいよ!ほら、行こう!」
「わっ」
シエルは凄い力で僕を引っ張って、やっぱりにっこり笑った。
* * *
アドラオテル × レイチェル
「うおーっ、すげー!」
アドラオテル様はそう言ってキョロキョロと街中を見ている。でも、気づいて欲しい。アドラオテル様、あなたも見られています………。
視線を感じつつそう思う。街ゆく人は顔を赤らめてアドラオテル様を見てる。当たり前だ、こんなにかっこいいんだから。
………私は、アドラオテル様と歩いても恥ずかしくない人間になりたいと思った、し、認められたいと思ってる。
けど、まだ早いの…………!まだ根性もついてなければ自分磨きもしてない!
「レイチェル!アイスたべようぜ!」
「あ、はい………。何を食べたいですか?」
「俺、チョコがいい!」
「わかりました」
私は近くの出店でアイスを買って、アドラオテル様に渡す。アドラオテル様はアイスを受け取ると、キョロキョロと辺りを見た。
「?ど、どうなさいましたか?」
「いや、座る場所がないなあ、と」
____流石皇子様!行儀がいい!
きゅん、といつもとのギャップに胸を痛めながら伝える。
「えっと、この街では歩きながら食べることが主流なのです」
「食べながら歩く………?」
アドラオテル様はわからない、と言わんばかりに首を傾げる。………これは言っても通じないし、なによりアドラオテル様に変わって欲しくない私は『ある場所』に連れていくことにした。
「アドラオテル様、では、私が座って食べられる場所をお教えします」
「お!助かる!行こうぜ!」
* * *
コスタ・デル・ソルの海辺は3つある。
ひとつは、漁港や船の泊まる場所。
ふたつは、観光客が溢れかえる場所。
みっつ、___地元民しか知らない、秘密の場所。
秘密の場所は、人が少なくて落ち着く場所。海を見ながら読書をしたり、恋人同士が愛を育んだりする大事な場所___なんだけど。
私はちらり、海を見る。
「フィア!水鉄砲攻撃~!」
「っつ、冷たい!いい加減にして!」
「きゃあっ、やったなー☆」
「うわっ、や、やめろー!」
「…………」
秘密の場所には先約がいた。別に人がいてもいいとは思うけど、シエルが居たのは大問題。1人で変なことをしてるならまだしも、フィアラセル様まで巻き込んでる。
「シエル!やめなさい!」
「げっ、お姉ちゃんだ………フィア!沖まで逃げるよ!」
「わっ!浮き輪を引っ張るな!」
「シエルー!」
シエルは私が怒るとフィアラセル様を連れてどんどん沖まで行ってしまう。運動神経のいい上毎日のように海に来ているシエルが溺れることはないけど、フィアラセル様が………!
追いかけようとするのを、アドラオテル様が腕を掴んで止めた。
「あ、アドラオテル様………本当に申し訳………」
「いーっていーって、フィアは友達がいないから、俺的には友達が出来て嬉しいし、泳げなくても魔法使えるし」
「ですが…………」
「よく見てよ、フィアも楽しそうだ」
「楽しくない!お兄様!助けて!」
「…………」




