実家満喫中! #01
「き、着替えました………」
セラフィール様は弱々しくそう言った。顔を赤らめながら可愛いワンピース型の水着を着ている。大きな胸に細い腰、長い足に目が潰れそう。なんだこの完璧美少女。
でも、セラフィール様はどこか恥ずかしそうだ。当然といえば当然で、肌を好きな人以外に見せちゃいけない、というユートピアの文化では水着は受け入れ難いだろう。
そう思った私は自分のタンスから長い布を取り出した。
「セラフィール様、失礼致します」
「え?……きゃっ」
私は腰周りに長い布を巻き付ける。可愛いハイビスカスの腰巻だ。
「……えっと、どうですか?スカートっぽくしてみたのですが………」
「凄い………!可愛いです!」
「よかったです、宜しければここに居る間だけでも、使ってください」
「はいっ!」
そんな話をしながら、再びリビングに戻った。もう男性陣は揃っている。アドラオテル様は海パン姿で、フィアラセル様は昔ロルフが着ていた薄手のワイシャツを着てソファに座っていた。私もセラフィール様をソファに座らせると、ロルフが口を開いた。
「………とにかく、挨拶を先に。
俺はトラファルド・T・エード・ロルフ。チェル姉の弟だ。
シエル、名前をいえ」
「命令しないでよ!ロルフお兄ちゃん!
えっと、私はシエル!11歳!」
シエルはにぱ、と笑う。皇族にも社長気質健在でひやひやする。そんな私の心配を他所に、セラフィール様はくすくすと笑って言葉を紡いだ。
「ありがとうございます。わたくしはセラフィール・リヴ・レドルド・サクリファイスです。
アド、フィア、挨拶を」
「…………フィアラセル・リヴ・レドルド・サクリファイス」
「俺はアドラオテルだ。アドと呼んでくれ!俺が!レイチェルの婚約者だからな!」
「あっ、アドラオテル様…………!」
顔に熱が集まる。か、仮初なのにそれでも婚約者と言ってくれて、恥ずかしいけど、嬉しい………。
そんな私を見ていたロルフは「ふぅん」と言いたげな顔をして静かに言った。
「せっかく来たんだ、寛いでくれ。大したもてなしはできないから期待するな」
「りょーかーい!」
「はいっ!」
「うん」
………こうして、私達は夜ご飯まで自由行動になった。
* * *
セラフィール × ロルフ
「ここが書庫だよ」
「わあっ…………」
セラフィールと名乗った少女を連れて書庫に来た。なんでも、チェル姉の彼氏が「書庫がある」と言ったらしく、……本来ならチェル姉が案内するべきなんだけど、チェル姉はアドラオテルと名乗る男に攫われるように街に繰り出されてしまった。そして、俺が案内したということだ。
紅銀のふわふわした髪に黄金と緑の瞳の少女は書庫を練り歩く。よほど本が好きなのか手には持たないけど、持ちたそうにしている。チラチラこっちみてるし。
俺ははあ、と溜息をついた。
「…………読んでもいいけど、殆ど医学書だよ」
「医学書!読みたいです!」
「なら読みなよ」
「はいっ!」
セラフィールは近くにあった本棚から分厚い本を手に取り、開いて………目を潤ませた。疑問に思った俺は聞く。
「ど、どうしたんだよ」
「字が………字が読めません………!」
「…………はあ。俺でよければ文字を教えるけど、どうする?」
「教えてくださいまし!」
「わかった。……この本、幼児向けだけど文字を覚えるのには丁度いいから、これ読むけどいい?」
「はいっ!」
セラフィールは俺の言葉にぱあ、と笑顔を浮かべて元気よく返事をする。
………チェル姉もこれくらい明るければいいんだけどな…………。
そんなことを思いながら、俺はセラフィールに言語を教えた。




