母親に直談判
「………ってことで、俺は2日間レイチェルの実家に行く」
「ふざけないでくださいまし」
玉座の間、家族全員に向けて言ったアドラオテルの言葉はアミィールの一声に掻き消された。アミィールは不満げなアドラオテルに言う。
「婚約者とはいえ、レイチェル様と二人で一夜を共にするなんて認められませんわ」
「レイチェルの弟と妹もいるぞ」
「居てもダメです。貴方には執務があるでしょう?」
「執務はもう終わった。今国民は年越しで忙しいんだから仕事なんてほとんどないじゃん」
「………何を言っても認められません。レイチェル様が実家に帰ることを許したのですからそれで引きなさい」
ツン、とそう言うアミィールにカチン、ときたアドラオテルは作戦を変えてセラフィールとフィアラセルを見る。
「………せ~ら~、レイチェルの弟はかなり頭がいいらしくて、博識で沢山本を持ってるらしいぞ?」
「!そうなのですか!?」
意地でも聞かない、と確固たる意思を態度で見せていたセラフィールが目を輝かせる。そして目に見えてそわそわしている。セラフィールは超がつくほど勉強が大好きなのだ。
アドラオテルはそれだけでは満足しない。次はフィアラセルに向かって言葉を紡ぐ。
「フィア~、レイチェルの実家にはお前が前に読みたいって言っていた"名探偵コハン"の漫画全巻あるらしいぞ~?」
「…………………!」
「それだけじゃないぞ?レイチェルの実家は常夏らしくて、寒くないって。………冬が嫌いなフィアには美味しい話じゃな~い?」
そう言うとフィアラセルはぐいぐいとセラフィールを引っ張って、アドラオテルの傍に来た。
引っ張られたセラフィールはニコニコしながらアミィールとセオドアに言う。
「………お父様、お母様、レイチェル様はもう家族なのです。わたくし達兄弟は、レイチェル様のご兄弟と友好関係を築きたく存じますわ」
「僕も同じ考え。身体も、温かいところで過ごした方が安心」
「…………」
アミィールは美しい顔を引き攣らせる。子供達は行く気満々だ。それを苦笑いしながら聞いていたセオドアはアミィールに言う。
「あ、アミィ。たまには子供たちに休日を満喫させるのはどうだい?アドは護衛にもなるだろうし、セラもいるし。間違いは起きないと私は思うな」
「セオまで……………3人とも、2日経ったら必ず帰ってくると約束できますか?」
「はい!」
「もちろん!」
「約束、する」
子供達は同時に頷いて、アミィールとセオドアは苦笑いをした。
____こうして、セラフィール、アドラオテル、フィアラセルの旅行は確定したのだった。
* * *
次の日。玉座の間。
「セラ、アド、フィア。
龍化はしてはなりません。
フライの魔法を使ってはなりません。
無闇に人を傷つけるのもダメです。
レイチェル様に迷惑をかけないでください。
それから………」
「………」
「………」
「………」
「………」
荷物を持った子供達は揃ってアミィールの注意を聞いている。こういう所はやっぱりラフェエル様似だ。そんなアミィールも可愛くて好きだけど、これでは時間を押してしまう。
「アミィ、その辺にしよう。……レイチェルちゃん、私たちの子供達まで負担をかけてごめんね」
「だ、大丈夫です!……で、ですが、私の実家は何度も言いますがそこまで大きくなく………皇族にはふさわしくないと……」
「大丈夫だって。ベッドはあるんだろ?雑魚寝できればなんでもいい」
「ええ。たまには皇族であることを忘れられるのも嬉しいです」
「僕は平民のおばあちゃんとおじいちゃんの家で慣れてる。問題ない」
………子供達は逞しいな。見習いたいくらいだ。
1人子供の成長を確認して喜んでいると、ふと疑問に思った。
「レイチェルちゃんの実家って異世界だよね?どう帰るんだい?」
「そ、それは___これを使います」
「?」
レイチェルちゃんはごそごそとカバンを漁り、前世で見た防犯ブザーのようなものを見せてきた。
「これは小型の次元超越装置で、記憶した次元に飛べるのです。この超越装置は私の実家に繋がっています」
「へえ、便利だね」
「ええ、私の叔父さんが作ってくださったものです」
「え」




