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皇子の本音 #01






 レイチェルちゃんは、自分の口から変わる、と言った。その声は震えていて、か細くて、それでも決意が伺えた。……きっと、レイチェルちゃんならできる。俺は信じることにした。



 ____たくさん時間が掛かってもいい。俺がそうだったから、なんて説得力はないけど、信じたかったから。




 俺も、力になりたいと思ったから。




 だから。




 「…………アド」




 「ふっ…………ん?なーに、父ちゃん」



 夜、俺は鍛錬場に来ていた。アミィールには、「アドと男同士で話したいんだ」と伝えてある。アドラオテルが夜に行く場所なんて、大抵ここだ。現にアドラオテルは半裸で剣を振るっていた。




 あんなに小さな赤ん坊は、今では180センチの俺と同じくらいの身長だ。きっともっと大きくなるだろう。




 ………それはさておき。





 「…………アド」



 「だからなんだよ父ちゃん。ていうか、こんな遅くに何しに来たの?母ちゃんがまた発狂するぞ」



 「ママにはここにいる、と伝えている」




 「そのママってやめなよ。もう俺は大人だよ?」



 「ママはママだ。………パパはパパであるようにな」




 「うげえ………とてつもなく面倒なことが起きる気がする。とっとと要件言ってよ」



 吐く素振りを見せるアドラオテルに、俺は持っていた木刀を向けた。




 「____久しぶりに、パパと稽古をしよう」




 「は?なん___っお!」




 アドラオテルが何か言う前に、俺は突っ込んでいった。しかし、アドラオテルは軽々と俺の剣を受け止める。でも、こんなことでめげない。



 カン、カァン、と乾いた木の音が響く。

 アドラオテルは1度も振ることなく俺の攻撃を受けて、口を開いた。



 「どうしたんだよ、父ちゃん。いつもより乱暴だぞ。更年期?」



 「………かもな。でも、それだけが理由じゃない。



 ___お前は、レイチェルちゃんのことをちゃんと好きなのか?」



 「____!」




 カァン!と一際大きな音が響き渡る。アドラオテルが剣を流すのをやめた証拠だ。動揺しているのがわかる。………長年この息子を見てきたんだから。



 「アド、ちゃんと言葉にしなさい。………レイチェルちゃんのことは好きなのか?」



 「……………父ちゃんに関係ない」




 「関係ある。……俺はお前のパパだ。本音を話せ。剣ではなく………言葉で」



 「……………わからない」



 「……………わからない?」


 俺が攻撃をやめると、アドラオテルはだらんと腕を降ろして、空を見上げた。




 「………わからないんだ、レイチェルと一緒にいていいのか」



 「ッ、巫山戯るな!」




 俺の声が鍛錬場に響き渡る。けどそんなの構わなかった。



 「そんな中途半端な気持ちでレイチェルちゃんを振り回しているのか!?巫山戯るな!レイチェルちゃんはッ………!」



 俺は剣を振り被った。けれど、振り下ろせない。……アドラオテルが、俺の木刀を掴んでいるから。凄い力で、ビクともしない。




 「中途半端なわけあるか………中途半端なわけ、あるかッ!」



 「ッつ!」



 ゴオッ、と群青色の魔力が俺を吹き飛ばした。アドラオテルは珍しく怒った顔で続ける。




 「好きだからわからないんだよッ!どうすればいいかわからないから苦しいんだろッ!じゃあどうすればいいんだ!?どうすればレイチェルと一緒にいれる!?教えろよ!父ちゃん!」



 「その気持ちを伝えればいいだろう!?言葉にしなきゃ伝わらないことをなんで言葉にしない!?」




 「言葉にしたらレイチェルが不幸になるからに決まっているだろっ!」



 「なにをッ「俺が死んだらレイチェルはどうなるんだ!」___!」




 アドラオテルの言葉に、目を見開く。アドラオテルはゼーゼーと息を切らしながら、俺を睨んだ。




 「言葉にするのは簡単だッ!好きだって伝えればいい!レイチェルは受け入れてくれるって知ってる!だから言えないんじゃないかッ!


 俺は、俺は………いつ死ぬか、分からない体だぞ!?俺が死んだらレイチェルはどうなる!?俺が死んで終わりじゃないだろ!?



 レイチェルは………根っからのお人好しだ、理不尽でもなんでも受け入れる………そんなのっ、間違ってるじゃないかッ!」




 「………アド………」











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