大晦日LIVE! #02
司会のトークもそこそこに、レイチェルのLIVEが始まった。オープニング曲は『カタルシス』だ。この曲はルークがかっこいい曲がいいと言って作詞した歌で、最初には相応しい歌である。
その次に流れたのは『スーパースター』。ユーリが大好きな曲。バックダンサーも当たり前のようにプロで軽やかな踊りをする。
それが終わると『第七感』だ。俺と結婚して初めてコルーンデートをした時に作った曲で、独特なテンポが癖になる歌だ。
………レイチェルの曲が全部、俺達の曲だ。俺達家族絡みの曲しかないのに、その曲を聞いてファンが笑ったり泣いたりしている。トークは未だにダメダメだけど、歌っている時の存在感は半端ない。
子供たちもそれを感じているのか、食い入るようにレイチェルを見てる。もう12時近いのに、寝る気配は一切なくて思わず笑ってしまった。
* * *
12時まであと1分になった。
歌は終わって、トークが続いている。もう少しで終わる、と思った時、声が確かに聞こえた。
「ままぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「まーーーまーーーーーー!!!!」
「………!」
思わずVIP席を見ると、ユーリとルークが泣きながら浮遊魔法で近づいてきていた。後ろにはアドラオテル様の姿もある。私はトークそっちのけで駆け寄る。
「ままぁぁぁぁぁぁ!」
「ままぁぁぁぁぁぁ!」
「ユーリ、ルーク!」
2人が私の胸の中に飛び込むと、私のハーフマスクをぺい、と取って投げた。そして、頬擦りをする。
「やっとままに会えた!」
「まま!ルーク達のまま!」
ざわり、と観客が騒いだ。私、素顔でみんなの前にいる。アドラオテル様は2人を受け取ってくれるけど、それどころじゃないと言わんばかりにフラッシュが私を照らした。
「Rの素顔!美人だっ!」
「記者!ちゃんと写真を取れ!」
「きゃーーーーーーっ!R様ーーーー!!!」
「あ、っと………」
騒然とする中、何を言えばいいのかわからない私を他所に、会場に除夜の鐘が鳴り響いたのだった。
* * *
「チェル………ごめん………」
ユーリとルークが寝た後、アドラオテル様が珍しくしょんぼりして謝った。子供達の前では見せない弱々しい顔だ。
「11時30分を超えたあたりから、2人がママって泣き始めちゃって………止めたんだけど、遠いのが我慢できなかったみたいだ………ほんとうにごめん」
「……いいえ。アド、アドは悪くありません。勿論、子供達も。
特に深い意味があって顔を隠していたわけではないですし、それよりも子供達が自分から私を求めてくれたのは嬉しかったです」
事実だ。
2人に呼ばれた時、私は嬉しかった。
確かに、素顔を見られたのは恥ずかしかったけど、謝られることじゃない。それよりも………。
「それよりも、2人のママです!って宣伝できて嬉しいんです。……アドと私の子供だって自慢ができて、嬉しかったなぁ」
「………っ、チェル。ずりーよ。そんな顔されたら……我慢できなくなる。謝らなきゃいけないのに」
「ふふっ、我慢、しないでください。せっかくの元旦なんですから」
私の言葉に、アドラオテル様は唇を重ねてきた。それがきっかけで、秘密の姫はじめを果たしたのだった。
* * *
おまけ - 無名家族
レイチェルは滑らかな頬を撫でて、優しく笑う。そして、綺麗な澄んだ声で、言葉を紡いだ。
『Rも、SC-II』
「………」
「………」
「ママはえすしーつー!」
「えすしーつーってなに?」
「わかんないっ!」
子供達の会話を聞きながら、アドラオテルはにやにやした。
「チェルが顔を出してから、チェルのCMも増えたなぁ。今回はSC-IIかぁ?」
「ぅ……し、仕方なかったのです……ライラが、CMの仕事を受けて……」
「そのうちドラマ出演もあるんじゃないか?」
「それはお断りしてもらってます。演技はできないので!」
キリッ、と言い切ったレイチェルに、アドラオテルはやっぱり笑ったのだった。




