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9  可能性

しばらくはこんな感じです


「じゃから「報連相はしっかり行え」といつも言って

 おるに…。」


 ピコを鉱物研究所まで案内した所員が所長と思われる老ケットシーに小言を言われている。

 合流に1時間もかかってしまったのは、単に待ち合わせ場所変更の連絡ミスが原因だ。


「でも、元はと言えばじいちゃんが「待ち合わせ場所

 はバス停にした方が良い」とか言うから…。」


 どうやら、この所員と所長は血縁のようだ。

 

「所長と呼べと!

 ……この街は慣れとらん者が歩くには厳しいんじゃ

 よ。」


 確かに、待ち合わせ場所を探すのには苦労した。


「なのに小洒落たカフェなぞを指定しおってから

 に。」


 雰囲気もそうだが、滞在の為に頼んだコーヒーも中々に美味しかった。

 機会があれば、ミーコと来たい所である。


「(こんな埃臭い所じゃ、まともに持て成せないじゃ

 ないか…。)」


 その気持ちはありがたいが、それで本来の目的に支障が出るのはいただけない。


「見苦しい所を見せたの、お客人。

 まずは、現在判明しているメタモメタルの特性につ

 いて説明させて貰おうかの。」


 ようやく本題である。


 ………………………。


 ………………。


 ………。


 所長からの説明では、メタモメタルの変質前の特性から、変質可能な範囲、変質に体内魔素が関係しているらしい事などを(ピコにとっては)詳細に語られた。


「以上の事を踏まえて、お主の起こした現象は、新し

 い特性の発現となるわけなのじゃ。」


 何故そう出来たのか聞かせて欲しいと、所長が鼻息を荒くして言う。


「わたしのやり方は、………………………………。

 ………………………………………………。

 ………………………………………………。」


 実際には“私”から教えられた、“わたしたち”のやり方なのだが、話がややこしい事になってしまうので、何食わぬ顔で説明をする。


「……ふむ、「魔力」か。

 それは体内魔素とどう異なるのじゃ?」


 ……言われて見れば、である。


(『わかり易く言うと、魔素はエネルギーの元。

 そこに、意思を込める事で魔力になるにゃ。』)


 つまり「魔素」は可燃物で、そこに「意思」という熱を加える事で「変化」という燃焼を起こすわけだ。

 といった説明を所長に話す。


「……一応の筋は通っている。

 メタモメタルの変質は、体内魔素を魔力としての干

 渉の結果、という事じゃな。」


 流石は研究者、理解が早い。

 そして当然、新たなる疑問点も指摘される。


「しかし、メタモメタルの二回以上の変質は、現状不

 可能であった。

 大きな変化を見せたのはお主の機体のみ。

 これについてはどうじゃ?」


 これについては何となく分かる気がする。


(「魔素は、それと認識していなくても魔力として出

 力される。

 そして、戦闘後の魔素値の上昇。」)


 推測が正しいと仮定すると、コアの魔力の流れやすさの違いに説明がつく。


(『そうにゃ。

 私たちの機体のコアには、私たちの魔力が馴染んで

 いるのにゃ。』)


 未変質のメタモメタルが誰にでも変質させる事が出来るにもかかわらず、二度目の変質がかなわないのは、変質させた者の魔力に染まってしまうからなのだ。


(『ついでに、ミケコの機体のコアが変化したのは、

 一時的に私たちの魔力で上書きしたからにゃ。』)


 つまり、一度染まったメタモメタルは、時間をかけて染め直すか、染めた魔力以上の魔力で強引に上書きする事で、更なる変化が可能であるという事である。


「おおっ!

 何と、そうであったか!」


 これらの情報を、自らの体験と感覚の話として所長に説明し、可能性として示唆すると、目が零れ落ちんばかりの反応をする所長。


「この性質があれば、あれもこれも可能かも知れ

 ん。」


 なんだか色々と活用法を思いついたようだ。


「こうしちゃおれん!

 おい、開発部にアポを取れ!」


 所長が、空気となっていた所員に指示を出す。


「ありがとう、有意義な話を聞けた。

 慌ただしくて済まんが、ここまでとしよう。」


 察してはいたが、対談は終了らしい。


「成果はお主の元に一番に届くようにする。

 待っていておるのじゃ!」


 と所長は言っていたが、トンデモ物体で無い事を祈った方が良いだろう。

 慌ただしい研究所を辞退し、街を歩く。

 

 …………………。


 …………。


 …。


 この時、ピコは失念していた。

 この街は案内無しに、素人が歩けるような街ではない事を。

 その代償は3時間の迷子というかたちで、支払う事となった。

 

 











~第三宙域前線本部基地 訓練宙域~


パパッ!


『ひゃっ!』


『トレニー4、撃墜。

 トレーニング隊全滅、戦闘終了です。』


 バリキリー大尉のアナウンスが、模擬戦の終了を告げる。

 マルコシアス隊は、1対1の単体戦、1対2のハンデ戦、2対2のタッグの模擬戦を行ってきた。

 各模擬戦ごとに反省を行い、回数をこなすごとに教導担当の4名の練度は向上した。

 特に、トレーニング隊4番を務めるユキ・グラスフィールド伍長の伸びが大きい。

 初の部隊戦で最後まで残り、3分耐えた。

 メグ・サンライト軍曹や、アクト・ウィンドラス曹長も順調に伸びている。


「………………以上が今回の模擬戦の評価となります。

 本日は解散です、お疲れ様でした。」




 ………………………。


 ………………。

 

 ………。




ガンッ!


「くそがっ!」


 基地の自室の壁に当たり、悪態をつくのはハロルド・チェンバー小尉。

 彼も教導で練度は向上している。

 しかし、伸び率が最も悪く、焦りが見られる。

 部隊戦では突出し、最初に結果判定となった。


「俺はこんなんじゃ…。

 そうだ、教導が悪いんだ…。」


 ハロルドとはこういう雄であった。

 特に今回は、嫌悪しているマルコシアス隊の下にある為、それが顕著に現れているのであった。


いつも読んでいただきありがとうございます。


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よろしくお願いします。


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