8 不和
一方その頃…
~第三宙域前線本部基地~
隊長のピコを地上に残し、宇宙に上がったマルコシアス隊。
彼らはピコが合流するまで、この基地を拠点に、教導を行う。
「不具合は無いか?」
機体の稼働テストを行うディックに、親父っさんが問う。
「ばっちりっす!」
「マズル」攻略戦で大破したランナー機であったが、親父っさんを筆頭とした整備班により、新品同様へと修理されていた。(コアはともかく、外装はその通り新品だが…)
「変に一部だけ壊されるより作業は楽だったから
な。」
トムの余計な一言が零される。
「………。」
「トム、いつもごめん…。」
ガイウスは沈黙を保ち、トーマスは謝る。
この二名は機体の特性上、大破はしないものの、損傷はそれなりにあるのだ。
「あ!
いや、そういうわけじゃ…。」
トム的には、「大破しても、手間が掛からずに直せる」と言いたかったのだろう。
「………客だ。」
イワンが言葉少なに告げる。
「おや?
少し早く来てしまったか?」
言葉とは裏腹に無感情な30~40代程の雄。
ポッド班で一番年上であるガイウスより老けている。
「マルコシアス隊に教導して頂けるとは。
光栄です。」
敬礼をする真面目そうな雄。
年の項は20代、タマより少し上くらいだろう。
「コレが専用機って奴ね!
速そうだわ!」
ランナー機を見る、ディックのようなテンションの雌。
20代になったばかりといったところか。
「えっと…。
よろしくお願いします!」
他の態度に戸惑う、少し気の弱そうな雌。
こちらも20代前半だろう。
「以上4名が、マルコシアス隊の教導担当になり
ます。」
バリキリー大尉が告げる。
「マルコシアス隊、隊長代理のガイウス・バングと
言う。」
ガイウスが代表して挨拶をする。
「隊長はどちらに?」
若い方の雄が問う。
「フローレンス中佐は後程合流する予定だ。」
ガイウスが答える。
「我々には顔を見せる必要は無いと?
流石は、短期間で佐階級に登り詰めただけある。」
悪感情を多分に含めて宣う、年上の雄。
「え、そうなんですか?」
「何か感じわる…。」
その雄の言葉を、少なからず信用する雌2人。
「中佐は本部の要請で、別件の依頼任務中です。」
バリキリー大尉が淡々と言う。
実は、軍では、マルコシアス隊を厄かむ者が増えているのだ。
特に最近は、名だたるエース部隊に混じり「マズル」攻略戦の功労部隊に上げられた事から、昇級の対象外となった者達が不満をぶつけている。
そういった者達が流す悪い噂は、実情を知らない下士官以下の兵士達に半信半疑でありつつ、広まっている。
「規律を乱すような言い方は止めろ。」
若い雄が、その他の者を咎める。
「チッ…。
………悪魔崇拝者め。」
「何を…!」
不満の対象にされているとはいえ、擁護する者も多い。
中には暴力を伴う過激派も存在し、反対派は部隊名から、擁護者をそう揶揄する。
「不満があるなら去ってくれても構わない。
……報告は上げさせて貰うが。」
今にも掴み合いを始めそうな二名を遮り、ガイウスが言う。
この教導はマルコシアス隊に依頼されたのであって、このトラブルにより抜ける者が居ても、責任は生じないのだ。
「「「「………。」」」」
半ば脅しになってしまったが、全員が姿勢を正した。
数ヶ月の教導の初日は、先行きが不安になるスタートとなった。
~キャトラス鉱物研究所 ピコ視点~
あの後、開発本部のハンガーの床を破砕するというアクシデントがあったものの、クアッドモード(技師命名)の稼働実験は、全てのタスクを終了した。
技師曰く、この実験で得たデータを、機械の動作に落とし込む事で、新たな搭乗型兵器の開発を進めるという。
それはさておき、メタモメタルの変質以外の特性が証明された事で、新たに鉱物研究所から「話が聞きたい」との依頼により、鉱物研究所を含む学術研究都市へとやって来た。
「待ち合わせ場所は何処にゃ?」
所員が案内するとメールが送られて来たのだが、そもそも待ち合わせに指定された場所が見つからない。
ここは、元々一つの複合研究施設が拡張に拡張を重ねて出来た都市の為、建物も道も乱雑なのだ。
「えっと、今いる所がここで……。
あっちに見えるのが………。
………………………。
………………………。」
~ポッポー、ポッポー~
旅番組であれば、そんな効果音が流れている事だろう。
地図と格闘しつつ、ようやく指定の場所に着く。
指定された時間より15分程遅れてしまった。
(『遅れて申し訳ないです。
ただ今、到着しました。』)
「っと、送信にゃ。」
謝罪のメールを送り、迎えを待つ。
ブンッ
[気にしないで下さい。
今から向かいます。]
そんなメッセージが空中に投影される。
(その様に感じるが、網膜に直接投影されている)
(最新のデバイスは凄いにゃ…。)
技術の進歩を感じてから5分が経過する。
「今から向かう」という事は、研究所から移動中なのであろう。
更に10分が経過した。
[今バスに乗っていますか?]
メッセージを受信するが、「既に降りて到着している」と返信する。
[………………………。]
[………………………。]
[………………………。]
そんなやり取りを繰り返す事、計1時間後。
案内の所員と無事に合流を果たし、研究所へと向かった。
ピコは方向音痴ではありません。
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