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5  待機期間

「マズル」攻略戦から2ヶ月後くらいです。


 あの後、ピコの実家で3日過ごした三人は中央都市へ戻っていた。


「それでは私はここで別行動です。」


 ナナは諜報部での仕事が入ったようで、空港で別れた。


「私は報告することがあるから、お祖父様のとこに行

 くけど…。

 ピコちゃんはどうするにゃ?」


 わたしの事を聞きに、実家について来たら、幻影とは言え、天虎までもが数千年ぶりの顕現である。

 現当主である中将に、報告しないわけにはいかないのだろう。


「遠慮しとくにゃ。」


 ミーコには少し悪いと思うが、断りの返事をする。

 前回は、ミーコの事を聞きに行ったら、なし崩し的にウィング家の事情を知った。

 しかし、今回の事は“まだ”部外者のピコが同行するのは違うだろう。


「わたしは病院に行って来るにゃ。」


 それに、マルコシアス隊のポッド班の様子も知りたい。


「…それじゃあ、宿舎でにゃ。」


 ミーコとも高級住宅地で解散である。


 …………………。

 …………。

 …。


 軍病院に到着し、受け付けでメンバーの状況を確認する。

 軽症であったガイウスとトーマスは既に退院の連絡があった為、ミケコ姐さんとディックの二名がまだ入院している筈だ。

 

 …………。

 …。


 「マズル」攻略戦での負傷者が大量に入院していたため、確認に多少の時間がかかった。

 確認の結果、ミケコ姐さんはICUで、面会不可。

 ディックはリハビリステーションのようだ。

 

 …………。

 …。


「あっ!

 隊長、お疲れ様っす!」


 リハビリステーションに向かうと、ちょうどディックと会う。

 「マズル」攻略戦で、真紅の敵機のクローに弾き飛ばされたランナー機は、当然大破していた。

 パイロットのディックは、機内で激しく揺さぶられ、両肩の脱臼、頭蓋後部の骨折、左目の裂傷、重度の脳震盪による意識不明となっていた。


「意識が戻ったようで何よりにゃ。

 もう動いていいにゃ?」


 いつ目を覚ましたかは分からないが、確認をする。


「許可が出たのは一週間前からっす。

 激しい運動はだめっす。」


 それから聞く話によると、ディックは入院から10日目には目を覚ましていたようで、外傷の治療完了後に精密検査等を行い、やっと歩き回れるようになったとの事だ。

 本人曰く、その間とても退屈であったらしい。


「それで、ディックは退院したらどうするにゃ?」


 あえて、どうとでも捉えられる質問をする。


「トーマスもトムも待っている筈っす!

 目も前より見えるくらいっすから。」


 質問の意図は正確に捉えられたようだ。

 実は、損傷したディックの左目は失明してしまったらしく、義眼となっている。

 この義眼は、小型カメラで捉えた映像を電気信号に変換し、繋げた視神経に流す事で、視力を得る事の出来るものである。

 視力は戻ったとはいえ、身体の欠損にあたる。

 その為、負傷兵として退役が可能である。

(通常退役と違い、国から年金が支給される)


「調整は済んでいるにゃ?」


 ディックは以前より見えると言っているが、この義眼は調整をしないと逆に支障が出てしまう。

 高性能なカメラのおかげで、生来の目より遠くまで見え過ぎる為、距離感等が狂ってしまうのだ。


「ばっちりっす。

 上限ギリギリっす。」


 まあ、見えないより見えた方がいいのは確かだ。

 …さて、目的は果たしたと言える。


「元気そうで安心したにゃ。

 隊が再始動する時にまた、にゃ。」


「了解っす。」


 そうして、ピコは軍宿舎へと帰って行った。


 …………………。


 …………。


 …。


 軍宿舎で割り当てられたのは高級士官部屋だ。

 「マズル」攻略後軍では、「マズル」攻略戦参加者と功労者の昇級が行われた。

 対象となったのは、アルファ連隊に属していた曹長以下が一律で一階級。

 ライトニング隊を始めとした作戦における重要な役割を果たした部隊が一律で一階級の昇級となった。

 マルコシアス隊の面々も、本隊の撤退支援が評価され、昇級となっている。

 またピコに関しては、本隊撤退の要因となった敵機の撃破と、敵追撃艦隊の撃滅が評価され、二階級の昇級となり、小佐を飛ばし、中佐となった。


「…これもう家にゃ。」


 キャトラス軍で小佐以上ともなれば大隊を率いている階級となる。

(あくまで、順当に昇級した場合だが)

 その為、尉階級以下の部屋より広く、豪華な部屋となっていた。

(部屋のグレードは、佐、尉、下士官となっている)

 ミーコは尉階級棟になる為、ピコとは別の宿舎となってしまった。


(ミーコに連絡しないとにゃ…。)


コンコン、コンコン


 そんな事を考えていたら、早速来客のようだ。


(ミーコかにゃ?)


「はいにゃ。」


ガチャ


 所在を伝え、扉を開く。


「フローレンス中佐にお客様です。」


 そこにいたのは、佐棟管理官の一人であった。


「誰にゃ?」


 そんな連絡は来ていない筈である。


「ミーコ・マスハッター大尉です。」


 まさかのミーコであった。


「すぐ行くにゃ!」


 …………………。

 …………。

 …。


 あの後、管理官に話を聞いたところ、佐階級以上になると、繋がりを求める者が多く、企業の重鎮等の一般市民と異なる所謂VIPもいる為、来客の確認が行われるとの事であった。

 ピコの階級が中佐であった為、入舎時の説明が省かれていたそうだ。

 おかげで、ミーコが少しむくれ、宥める結果となった。

ピコ、三年目にして中佐となる!

(確認したところ、ぎり12月末くらいです)


いつも読んでいただきありがとうございます。


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