25 後悔
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『こちらの番だ。』
ガシャガシャガシャッ
敵機から通信があったと同時、タレットのケーブルが生える大穴の周りを囲むように小さな穴が次々と開かれる。
“小さな”と表現したが、大穴と比較した場合であり、その穴は対空ミサイルの直径程はある。
つまり、
『まずは“足止め”だったか?』
シュバババババッ!
敵ポッド大隊のロケット弾の斉射以上の規模でミサイルが発射される。
(不味いっ!)
ミサイルが向かうのはブルーシャーク。
“通常であれば”迎撃は十分可能である。
しかし今はタレットの攻撃に弾薬を消耗している。
『迎撃!』
『撃ち落とすよ!』
プライズ艦長とミケコ副長が、それぞれの部下に指示を飛ばす。
バルカンやガトリングでの対処を試みる。
『うおおぉっ!』
『当たれぇーっ!』
ガイウスとトーマスの気合いの叫び。
ボボッボンッ
ミサイルは次々に爆発している。
だが、
『数が多いっすっ!』
『被弾しますっ!』
ドドドドドドッ
ブルーシャークとキマイラが4機、多数のミサイルの爆発で完全に見えなくなってしまう。
「ブリッジ!?
誰か応答するにゃっ!」
ブルーシャークは、キマイラはっ!?
隊の皆の無事を確認する。
『ザッ…
こちらブリッジ。』
ブルーシャークから応答があった。
『艦の損傷甚大。
キマイラ2、大破。
キマイラ3、5、小破。
キマイラ4は支障無しです。』
ズズズ…
爆煙の中からブルーシャークが姿を見せる。
船首は吹き飛び、メインハンガーを覗かせており、3基のメインエンジンは全てが損傷により、機能を停止している。(サブエンジンで何とか航行している)
『副長がミサイルの直撃を防いで行動不能。
俺とトーマスは至近弾で主に武装の破損。
ディックは回避出来たみたいだ。』
ミケコ副長の代わりにガイウスからも応答があった。
「キマイラ2を艦に収容。
ガイウス、トーマスは武装交換後、艦の防衛。
ディックはその間一機でやれるにゃ!?」
マルコシアス隊のキマイラは特別製、原形を残しているならば生存は確実だ。
『隊長の援護はどうするっすか!?』
ピコは安全圏にいる。
ならば援護は必須では無い。
『艦の防衛を優先するにゃ!』
ピコが戦い易くなる事が、艦のクルー達の安全に優先されるわけが無い。
『…分かったっす!
でも余裕が出来たら援護に向かうっす!』
ありがたいが、正直無駄である。
「キマイラの火力じゃ無駄弾になるにゃ!」
ディックの機体は特にである。
飛来するミサイル等の迎撃に充てた方が有効なのだ。
『話合いは終わったか?
なら闘いを再開しようか。』
敵パイロットからの通信。
(待っていたのにゃ!?)
隊とやり取りをしている間、敵機に動きは無かった。
遊ばれているのだ。
「要塞はもう無いのにゃっ!
どうして戦おうとするにゃっ!?」
防衛という目的も無く、敵を倒すという意図もずれているように思える。
ピコは敵パイロットが理解できず、語気を強く問う。
『可笑しな事を…。
闘争こそ俺達の本分だろう?』
逆に「理解できないのか?」と言うように答えられる。
兵士だから戦うとでも言いたいのか?
『知っているか?
俺達は獣なのさ。
邪魔な理性なんて捨てて本能に従えば良い。』
神話の事実を知っているわけなのだろうか。
「わたし達は獣じゃ無いにゃ!」
違う世界ではそうだったかも知れないが、数千、下手したら一万年以上前から我々は理性を持って繁栄してきた。
真っ向から否定する。
『だが、俺達は闘争を捨てられ無い。』
確かに、資源を巡り長年争って来た。
「それでもっ!」
だからこそ、理性をもって戦いを終わらせようとしているのだ。
『「刃持ち」、お前も楽しんでいるだろ?
俺を黙らせたいならかかって来な。』
理性が限界だ。
ギュンッ!
最大機動。
「うにゃあぁぁっ!」
ブレードを引っ提げ、声をあげて敵機に向かう。
ザザザザザザッ!
浅かろうが構わない。
敵機を次々と斬って行く。
斬る、切る、伐る、きる、キル…。
思考が染まっていく。
『ははっ!
いい、これぞ闘争だ!』
キル、キル、キル…。
『だが…。』
ガコンッ…
敵機に縦の筋が入る。
『もう飽きた。』
ガバッ!
筋の入った部分が展開される。
その姿は6枚の花弁の巨大な花のようだ。
ギュルルッ!
変化はそれだけに留まらない。
開いた花弁の内側から3本の爪を持つ、駆逐艦程度なら握り潰せそうなクロ-アームが計6本射出される。
ガシィッ!
その一本がキマイラを掴む。
『捕まえたぞ。』
(しまっ!)
ドゴオッ!
「マズル」の残骸の岩塊に叩き込まれるキマイラ。
『ビビ-ッ!ビビ-ッ!』
行動不能である。
『隊長、今行くっす!』
ゴオォ!
モニターに映るのは大型ミサイルを抱えてブースターを最大に噴かすキマイラ4。
『おりゃあぁっ!』
ドオォォンッ!
大爆発。
真紅の装甲が散る。
ランナー機は直前に離脱したらしく、無傷で爆煙の中からこちらに向かって来る。
『隊長、退くっす。』
ブオンッ…
(ディック、後ろっ!)
「………っ!」
声が出ない。
肺に肋骨が刺さっている。
バキィッ!
ランナー機は振るわれたクロ-に弾かれ、分解した装甲を残して、飛んで行く。
『今ので細かいのは最後か。
…クロ-が一つ持って行かれた。』
ディックが決死の覚悟で持って来たミサイルは、敵機のクロ-アーム一本の破壊に留まった。
『後は、あの変な駆逐艦だけか。』
(止めろ!)
敵機がブルーシャークに向かう。
『キャトラスに追撃をかけるぞ!』
撤退していたドギヘルス軍も戻って来た。
(止めてくれ!)
武器はある。
しかし、機体が動かない。
『あの艦は俺の獲物だ。』
ブルーシャークが完全にマークされている。
(頼む、お願いだから!)
願いは届かず、タイムリミットが迫る。
『………っ!』
フリッター艦長の最期がフラッシュバックする。
(……またにゃ?
また、わたしは見ているだけにゃ…?)
今度は誰かじゃ無い。
みんな死んで、殺されてしまう。
………………。
(動け、動いてくれにゃ!)
機体の再起動を試みるも、反応は返って来ない。
『ピコちゃんっ!』
無線から最愛の娘に呼ばれる。
(倒す、あの機体だけでも!)
『終わりだな。』
クロ-が振り上げられる。
「させるかあぁぁっ!!」
(「敵は皆殺しにゃ。」)
パキパキパキッ…
何者かの声と何かがひび割れる音を最後に、ピコの意識は闇に閉ざされた。
次回をお楽しみに!
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