23 武の降臨
光の正体は?
『何だ、あれは…!?』
ガイウスが驚愕に口を開く。
他のメンバーは口を開く事すら出来ないでいる。
要塞「マズル」から光が溢れ、アルファ連隊に多大な被害を与えた後。
崩壊する「マズル」から、戦艦サイズはあろうかという真紅の物体が徐々に姿を見せる。
『機種分類不明。
しかし、先ほどの光はこの物体による攻撃かと思わ
れます。』
機種という事は、あれは艦ではない機動兵器という事になる。
先ほどの、要塞砲を彷彿とさせる攻撃を一兵器が行った事に、ドギヘルス軍の兵器開発部に対する怒りが湧く。
(キャトラス軍開発部の浪漫主義者がまともに思える
なんてにゃ…。)
キャトラス軍開発部は実用性より浪漫を取った兵器をマルコシアス隊に数多く送って来るものの、一応実用にたえる物である。
対するドギヘルスの開発部はどうだろうか?
碌に試験のしていない兵器を装備させたり、安全性に問題がある機体を放置していたり、挙げ句の果ての一般市民を対象とする大量破壊兵器の開発。
(味方の命すら部品にして、敵の命を大量に奪う…。)
戦いに卑怯も何も無いと言われるが、敢えて言うなら「卑劣」の一言がぴったりである。
『敵機に変化あり!』
ヒュッ…ヒュンヒュッ
通告にモニターを見ると、逆さの水滴型の敵機の上部から無数のケーブルが放出されていた。
ケーブルの先端部には何かがついており、機体色も相まって、遠目に見ると物語の怪物である蛇髪女の生首の様に見える。
ゾワゾワゾワッ…
生理的嫌悪感に背筋と尻尾の毛が逆立つ。
ドウッ!ドドウッ!
気分を落ち着かせようとしているとアルファ連隊の艦が艦砲射撃を行う。
艦載機の火力が通用しないと想定しての先制攻撃だろう。
ボフッ…ボボフッ…
大型の為、機動力は無いに等しいらしく直撃する。
しかし、その機体は何事もなかったかのように存在していた。
『馬鹿なっ!?
戦艦の主砲だぞ!?』
同じ光景を目撃したプライズ艦長が叫ぶ。
避けれなかったのでは無く、避けなかったのだと理解した。
ボシュウッ!ボボボシュウッ!
今度は駆逐艦の対艦大型ミサイルによる攻撃だ。
ヒュヒュンッ
敵機に動きがあった。
ケーブルが激しく動く。
ピーッ!ピピーーッ!
ケーブルの数と同じく無数のレーザーの照射。
ボンッ…ボボボンッ…
網のように張り巡らされたレーザーに突っ込んだミサイルは全て撃墜された。
『あれ全部砲台っすか!?』
長距離砲撃は戦艦の主砲でも効果は無く、一番火力のあるミサイルは全て墜とされる。
ヒュヒュヒュッヒュウッ
ミサイルを撃ち落としただけでは無い。
ケーブルが延び、タレットが全方位に展開される。
「回避行動にゃ!」
無線に叫ぶ。
直後、
『ピーーーッ!』
無数のレーザーが斉射される。
『ドォォンッ』
戦闘機もポッドも、駆逐艦でさえも同時に多数が撃破される。
こちらの攻撃は通用せず、向こうの攻撃は容易く多数を屠る。
このままでは全滅するだけだ!
『作戦は成功した!
全軍、全力で撤退せよ!』
中将の指示にキャトラス軍は陣形も何も無く各自撤退を開始する。
『ピッ』
共通回線に通信が入る。
『もう帰るのか?
団体戦は楽しんだんだろ?
もう少し付き合って貰おう。
俺の求めた武力を試させろ!』
あの機体のパイロットからの通信だ。
「俺の」ということは…
『あの機体を一人でっ!?
無茶苦茶ですっ!』
いつも冷静なバリー小尉が大いに取り乱す。
(あれ程の数のタレットの制御を…?)
過去の戦闘で似た兵器を使用するポッドがいた。
その機体は2基のタレットを運用する為に複座となっていた。
(システムが発展して制御数が増えた?)
それにしては飛躍的過ぎやしないだろうか?
でも可能性としてはありである。
(システム…システム?)
ふと、ビルフィッシュの自動砲台が脳裏に浮かぶ。
(それにゃ!)
敵のタレットのカラクリはわかった。
ならば対応出来なくは無い。
「キメラ1より、ブリッジ。
友軍離脱まで敵機の足止めをするにゃ。」
お誂え向きに、この機体は高機動カスタムに加え、対軍装備で更に機動力に耐久力と戦闘持続力が上昇している。
『そんな、無』
『あたしらはどうすれば良い?』
ミケコ副長が艦の通信官に被せて聞いて来る。
プライズ艦長らには悪いが、試用特務時代からのメンバーは良くわかっている。
(ツーカーってやつにゃ。)
向けられる信頼にこそばゆくなり、心の中で茶化して誤魔化す。
「わたしがタレットを斬り落としている間、ミサイル
や長距離射撃やらでの援護を頼むにゃ。」
タレットが自動制御であれば、優先攻撃目標が設定されている筈である。
優先順位としては、
1、ミサイル等の長距離かつ高威力の攻撃体。
2、長距離攻撃体。
3、(恐らく)パイロット自身の設定
となっていると予想する。
ここに、
・接近する攻撃体。
がどこに入るかは試して見ないと分からないが、これらの攻撃を同時に行えば、攻撃は分散する筈だ。
後は、「ピコが何処までやれるか」にかかっている。
(相変わらずの博打にゃ…。)
思い返すと、重要な局面では割りと高頻度で博打をしている。
『ピコちゃん。
必ず帰って来るにゃ?』
問いかけの形であるが、確信しているミーコ。
「もちろんにゃ!」
ベットするのは自らの命。
外せば落命、当たれば笑顔の二択の勝負。
「キマイラ1、ピコ・フローレンス。
目標、敵不明機。
突貫するにゃ!」
終盤戦を経ての延長、裏。
ドギヘルスパイロットはあいつ。
対するキャトラス側は我らが主人公部隊。
キャトラス全滅リーチからの最後の勝負。
ピコ、突貫したーっ!
次回…
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