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17 保護したのは

『マグネットアンカー起動。

 シャトルの収容を開始します。』


 ブルーシャークが到着し、自力航行不能になってしまったドギヘルスのシャトルの収容作業を開始する。

 マグネットアンカーは本来、破損等で行動不能になった艦載機の回収に使用される機能だ。

(磁力で対象物を艦の格納庫内に引き寄せる)

 シャトルがゆっくりとメインハンガーに収容されるのを確認し、自身も2号カーゴへと帰還する。


 …………………。


 …………。


 …。


「シャトルの乗員はどうにゃ?」


 機体から降り、急いでメインハンガーに向かいミーコに聞く。

(ミーコは負傷者の手当ての為、待機していた。)


ガ…コン…


 シャトルがハンガーの床につく音が響く。


「今から確認にゃ。

 …大丈夫にゃ、後は任せるにゃ。」


 シャトルは撃墜されていない事がおかしい程の損傷である。

 ミーコはピコの不安を和らげるべく言葉をかける。


「シャトルの乗員に告ぐ。

 今からクルーが保護に向かう。

 手荒な真似はしない為、素直に従って欲しい。」


 作業を行っていたクルーがそうスピーカーで告げ、何名かのクルーがシャトルのハッチを開け乗り込んで行く。

 するとすぐにクルーに連れられ乗員が降りて来る。

 しっかりと歩いている様子を見るに緊急性の高い怪我はしていないらしい。


「はい、シャトルに乗っていたのは私のみです。」


 クルーの聴取に答えるのは若い雌だ。


「ところで…。

 救援して頂いた機体のパイロットはどなたですか?」


 保護された雌がクルーに尋ね、クルーがこちらに視線を向ける。

 

「こんな格好で失礼するにゃ。

 無事で良かったにゃ。」


 歩み寄り言葉をかける。

 クルーが横にずれ、保護された雌と対面する。


「ああ、あなたが?

 私の名はナナ・ファーテイル。」


 そう名乗る雌は予想していたクーシーでは無かった。

 クーシーにしては小柄で容姿としてもケットシーに近い。


「キャトラス軍の方にはこう言った方が伝わるかし

 ら?

 コードネーム「ナインテイル」と…。」


 そう言ってキャトラス軍諜報部の万能端末(マルチデバイス)を見せるのは妖狐族と言われる惑星ドギヘルスに住む一種族であった。


 …………………。


 …………。


 …。


 キャトラス軍諜報部のエージェントという事が判明し急遽プライズ艦長らも交えての聴取が行われた。

 その結果ナナは(恩人だから気楽に呼んで欲しいと言われた)本当に諜報部の名簿に登録されている(バリー中尉が問い合わせた)重要人物であった。

 ナナのもたらした情報には移動式要塞の事も含まれていた。


「脱出する際に得られる全ての情報をこれに詰め込ん

 で来たわ。」


 と、端末を示すナナ。

 つまりこの艦は敵軍の情報を大量に握っているという事になる。


『本艦は即刻基地に帰還する。

 バリキリー中尉は情報を本部へ転送してくれ。』


 プライズ艦長も思いあたったらしく撤退の指示を出す。

 情報は転送出来るとしても、見逃される理由は無いのだ。(むしろ、積極的に狙われる)


 …………………………。


 …………………。


 …………。


 …。


 逃げるように基地へ帰還し、その日の夜。

 艦の自室で何故か不機嫌なミーコに膝枕をしていた。

 ミーコはナナが特に負傷していない事が確認されるとピコと分かれ、夕食まで別行動であった。

 その間ピコは隊長として聴取に同行しており、当人の希望で不慣れであろう艦内の案内を務めた。

 ミーコと合流した際も部屋を案内し終わり、時間が丁度良かったので夕食を同席していた。


(あれ…?

 もしかしてそのせいにゃ?)


 軍用機に襲われて、周りが軍人だらけでは落ち着かないだろうと、ナナの事を気にかけてはいた。


モソッ…


「…………………。」


もふん…


 ピコが何かに思いあたった事に気付いたのか、ミーコが無言でピコの腹に顔を(うず)める。


「…あー、ミーコ?

 もしかして今日ナナにばかり構っていたからにゃ?」


ギュウッ!


 腰に回された腕がきつく締まる。

 心なしか背骨がミシミシいっている気がする。


「ミーコ、言いたい事は分かったにゃ。

 だから少し力を緩めて欲しいにゃ…。」


 ミーコは恐らく抗議のつもりなのだろう。

 そう言って頼むが、締め付けが緩む気配は無い。

 これは相当お怒りのようだ。


「ミーコ、悪かったにゃ。

 機嫌直してにゃ。」


 未だにピコの腹に顔を埋めるミーコの頭を撫で、頼み込む。


「…………………。

 別にピコに怒ってるわけじゃないにゃ…。」


 漸くミーコが重い口を開く。

 怒ってはいないというが、何故不機嫌なのだろう?


「ピコちゃんは欲しい時に欲しい言葉を本心から言っ

 てくれるから…」


 自覚は無いがミーコが言うなら、そうなのだろう。


「だから皆ピコちゃんを慕うにゃ…。」


 未熟な自分に隊長を任せてくれるマルコシアス隊の面々を思い浮かべる。

 彼ら彼女らは全力で支えてくれる。

 ありがたい事だ。


「子供みたいな単なる八つ当たりにゃ…。

 でも、ピコちゃんの一番は私が良いのにゃ…!」


 つまり、仕事と言えど、ピコがナナに構っていたから

ミーコは嫉妬していたと。

 普段振り回される事の多いミーコの余裕のなさにピコは母性を感じる。


(ミーコはわたしが何がなんでも守るにゃ。)


 一番が良いとミーコは訴えるが、既にピコの一番はミーコである。


(あ、顔が真っ赤にゃ。)


 ミーコを引き起こすと恥ずかしそうな表情がうかがえた。


「ミーコにはまだ伝わっていなかったにゃ…?」


 大げさに残念そうにする。


「…え?」


 恥ずかしそうな表情からキョトンとした表情になるミーコ。


「なら沢山伝えないとにゃ?」


 …………………………。


 …………………。


 …………。


 …。


 その晩、ピコはミーコが気絶するまで言葉と行動で「ピコの一番」を伝えた。

ナナはケットシー基準だとミーコとは異なるタイプの美人だったりします。


いつも読んでいただきありがとうございます

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