13 計画の前倒し
The battle begins!
(戦いが始まるぞ!)
「空母「ハデス」が撃沈されたらしい。」
「まじか!?
ストライプ隊はどうした!?」
「未確認の敵機を何機か墜としたみたいだが、隙を
突かれてってことらしい。」
「…………………………。」
「…………………………。」
最近臨時基地内では、エース部隊を運用する三隻の高速空母の内、一隻撃沈の噂で持ちきりである。
件の空母は、敵第二防衛線突破の為の、ルートの強行偵察任務にあたっていたと言う。
ドギヘルス側も軍が集結し、反攻に出始めたというところだろうか。
「遊撃特務隊、フローレンス大尉。
第一作戦会議室に集合して下さい。」
本隊の参謀(軍服の役章で判断)に呼び出された。
…………………………。
…………………。
…………。
指定された部屋で待っていると各宙域から派遣された軍の副官(長官は各宙域で警備や訓練の総指揮の為残っている)、キャトラス軍本隊の各分隊司令官が続々とやって来て席につく。
小佐未満はピコのみで場違い感を感じ始めた頃、軍上層部から中将の一人が到着する。
「諸君、良く集まってくれた。」
中将が進行台に立ち、話し始める。
「我が軍がドギヘルス侵攻を開始して3ヶ月が経とう
としている。」
年が明けてすぐに要塞攻略戦、侵攻の決定に一月、軍の集合に二月、侵攻開始から3ヶ月、激動の三年目の半年が過ぎたことになる。
「これまで敵領域内での足場固めを行って来たが、敵
も集結、反攻に移りつつある。」
ストライプ隊と交戦し、空母「ハデス」を撃沈した部隊以外にも敵エース級部隊との遭遇報告が増えている。
「軍の上層部は敵のこの動きに対し、早急な敵第二防
衛線の突破を目標とし、全隊による強行突破が敢行
される事となった。」
これまでは本隊が敵に囲まれないよう発見した主な基地は制圧又は破壊してきた。
強行突破とはこれらを無視して侵攻するという事だ。
「リスクがこれまでより高くなるのは承知している。
だが、敵軍にこれ以上の時間的猶予を与える事が
よりリスクが高くなるとの判断だ。」
今はまだ敵軍の集結で済んでいるが、要塞砲を建造されてはスタイン小将の二の舞になることが頭を過る。
「又、リスク分散の為、本隊は三つに分かれそれぞ
れ別ルートで敵第二防衛線最深部を目指す事とな
る。」
まさしくその通りだったようだ。
(一兵士が考える事を上層部が考え無い訳が無い。)
「尚、本隊未所属の独立部隊は偏りの無いよう、指揮
官同士で話し合って決めてくれ。
報告の必要は無い。」
………それもそうか。
ある種の情報規制だろう。
…………………………。
…………………。
…………。
あの後、侵攻の為のルートや合流後の展開等を説明され、会議(という名目の通達)は解散され、現在会議室には独立部隊の指揮官が残っていた。
説明された三つのルートの特徴は以下の通りだ。
・中央ルート
目標地点までほぼ一直線のルート。
東西に別ルートがある為、敵の抵抗は最も弱くなると予想される。
また、一番短いルートの為、他ルートに2日遅れで進出する予定だ。
・東回りルート
現地点から東に回り込むルート。
未探索のルートであり、航路、敵、あらゆる要素が未知数な為、一番厳しいと予想される。
・西回りルート
現地点から西に回り込むルート。
途中まで探索されているルートであるが、「ハデス」が撃沈されたルートの為、敵エース級部隊が存在する可能性が非常に高いと予想される。
「ライトニング隊、空母「ゼウス」は東回りルートを
行く。」
ライトニング隊。
キャトラス軍で最も古い独立部隊で、第三宙域方面軍の飛行教導隊も兼任するエース中のエース部隊だ。
ゼウス型高速空母は、この隊の為に建造されたという。
現隊長の階級は准将。
自らの隊だけで無く他隊にも指揮権がある。
率先して危険なルートを引き受けてくれるらしい。
「ケートス隊、空母「ポセイドン」は西ルートだ
な。」
ケートス隊。
最も有名な部隊であり、エース部隊の使用する高性能戦闘機の通称がこの隊に合わせられた。
現隊長の階級は大佐。
交戦経験のあるストライプ隊が同伴する為、このルートを選択したのだろう。
「ホワイトケートスとマルコシアス隊は中央ルート
で向かってくれ。」
ライトニング隊の隊長が指示する。
中将の言では「偏りの無いように」との事なので異論は無い。
「マルコシアス隊、了解にゃ。」
頭数も実績も先の隊には及ばない。
比較的安全なルートを回してくれたのだろう。
「…ホワイトケートス、了解しました。」
スノウが何か言いたげな表情で了承する。
スノウが隊長を務める隊の正式な呼称は「ケートス独立小隊」というものだが、隊長であるスノウの毛色と機体色から「ホワイトケートス」といつの間にか呼ばれていた。
「よし、決まりだな。
我々も解散しよう。」
…………………。
…………。
…。
「フローレンス大尉、待ってくれ。」
ライトニング隊隊長、ケートス隊隊長、ストライプ隊隊長が順に退室し、会議室にスノウと二人になった時、スノウに呼び止められる。
「スノウ、どうしたにゃ?」
何か問題があっただろうか?
「ピコ、久しぶりだな。」
そういえば、こうして話すのは士官学校を卒業して以来になる。
噂や報道で良く見かける(流石はケートス隊の若きエースだ)ので久しぶりのような気がしなかった。
うっかりである。
「ああ!
そうだった、久しぶりにゃ。」
ピコとスノウ。
卒業時の配属からは同期で最も再会が難しいと思われる二名は最前線で再会、共闘することとなった。
スルーされかけるスノウ…。
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