10 示す存在感
~ドギヘルス領域 臨時前線本部基地~
盗賊船の撃墜後マルコシアス隊は数回の遭遇戦を行い、本隊の駐留する臨時前線本部基地へと辿り着いて
いた。
「何か、色々と微妙にデカイっすね。」
マルコシアス隊に割り振られた集会部屋でディックが言う。
その通りで、集会部屋に置かれた椅子にテーブル、入り口のドア等、内装から家具類の全てがケットシーが使用するには少し大きくなっている。
(小柄なピコが椅子に座れば足が床につかない!)
「それはそうでしょう。
ケットシー用では無いのですから。」
バリー中尉が言う通り、この臨時前線本部基地はキャトラス軍が築いた物では無い。
制圧したドギヘルスの基地にキャトラス軍の設備や火器(防衛用)を持ち込んだだけなのである。
「こうして落ち着ける場所があるだけましですか
ら。」
妙に達観した事を言うトーマスだった。
…………………………。
…………………。
…………。
ドギヘルスの第一防衛線を突破したとはいえ、完全に制圧した訳では無く、後方の僅かな範囲(円で表すと臨時前線本部基地を中心として60度)以外は囲まれている状況だ。
その為現在独立した部隊と本隊の一部の部隊には制圧範囲を広くするための任務が課せられた。
マルコシアス隊は西側、本隊所属の部隊が行う敵前線拠点基地の制圧作戦に参加していた。
『敵基地の規模から予想される敵部隊は二~三大隊。
本隊所属部隊が到着次第攻撃開始となります。』
マルコシアス隊は先行し、敵基地のレーダー範囲外で監視を行っている。
現在こちらに向かっている部隊は以下の編成だ。
巡洋艦 5隻(艦載 一個中隊 12機)
駆逐艦 10隻(艦載 一個小隊 4機)
ミサイル挺10隻(艦載無し 敵基地攻撃用)
予想される敵機の最大数とほぼ同等の戦力だ。
軍艦との連携の分こちら側が有利だろう。
鹵獲した敵ポッドの解析結果も軍全体に共有されている。
敵基地に要塞砲のような大量破壊兵器が無い事も確認済みである。
『本隊所属部隊、到着しました。
間も無く戦闘が開始されます。』
漸く本隊がお出ましのようだ。
艦隊はこのまま敵基地のレーダー範囲内に侵入し戦闘を開始するだろう。
「所定の位置に移動するにゃ。」
マルコシアス隊は本隊と合流せず、本隊が敵部隊と交戦を開始して少し経ってから横合いから強襲を仕掛ける手筈となっている。
ブルーシャークの速度を活かした戦いになるだろう。
…………………。
…………。
…。
本隊が敵部隊と交戦を始めたという報告から5分程が経過しただろうか。
『ブルーシャーク、予定のポイントに到着。』
…頃合いだろう。
「全速前進、ポッド班は出撃に備え!
敵の真ん中で出るにゃ。」
~ドギヘルス軍 基地防衛隊~
「レーダーに反応!
数…25、キャトラスの艦隊です!」
長年資源帯の所有権を巡って争って来たキャトラスの軍勢が突如ドギヘルスの領域線を越え侵攻して来てから2ヶ月程が経とうとしていた今日、遂にこの中継基地にも艦隊が攻めて来た。
「迎撃準備!
駐留大隊、三個全て出撃させろ!」
基地が落としに掛かられている現在、出し惜しみなどしている余裕は無い。
これまでに陥落した基地の記録では最大で120程の艦載機が報告されている。
三個大隊を出せば被害は甚大で有ろうが十分防衛可能な戦力ではある。
(これまで陥落した基地は戦力の逐次投入という愚を
犯したケースが多い)
(同じ轍を繰り返すわけにはいかない。
この基地は守り通す。)
中継基地の司令官はそう決意した。
…………………………。
…………………。
…………。
キャトラス軍の艦隊と駐留大隊が交戦を開始してから数分が経った。
予想していた通り隊の被害はかなり出ているが、各員の奮闘により戦線は後退しつつも保たれていた。
「レーダーに新たな反応!」
「何が、何処から、数は!」
ぎりぎりで戦線が保たれている状況で場合によっては一気に悪い方向へ傾く。
「反応は駆逐艦級1、防衛陣10時の方向より接近し
ています。」
(戦線を崩すための決死隊?)
駆逐艦一隻と言えど、対策は取らねばならない。
その為戦線を一部崩す事になるが、その艦は確実に撃沈されるであろうし、だからといって一気に押し込まれる程戦線は崩れ無い。
「一個分中隊を迎撃に充てろ。」
(これでいい筈。
しかしそこまで戦線は膠着していただろうか?)
『報告!
敵艦を視認、船体に白いラインです!』
『普通の駆逐艦の速さじゃない!』
『「青鮫」だ!
「青鮫」が来やがった!』
『敵ポッドも出てきた!』
『「ボンッ!」』
『一機やられた!』
『「青鮫」のポッドが何だ!
俺が墜としてやる!』
『おい待て!
無闇に…「ボンッ!」
くそっ!』
『複数であたれ!
『隊長、前!』
「ズパッ!」』
『隊長がやられた!』
『無理だ!
オレはまだ死にたくねぇ!』
『お、おい!
「ガガガッ!」
グハッ…!』
レーダーに「青鮫」を捉えて3分未満。
対応に充てた中隊は隊長機の撃墜により恐慌をきたし任務を放棄。
「青鮫」の強襲により戦線は瓦解し最早防衛は不可となり、各々が生き延びる為の戦闘が継続されていた。
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