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4  マルコシアス隊、艦を得る

次回から話が進めばいいなぁ…。

 ウィング家に訪れた日から約一ヶ月後。

 マルコシアス隊のメンバーは軍の打ち上げ施設に勢揃いしていた。

 重傷を負ったミケコ姐さんも特に後遺症も無く隊に復帰してくれた。


「要塞攻略戦では無様を晒したからね。

 やり返してやらないと気が済まないのさ。」


 と、頼もしい事を言っていた。

 誰もその様な事は欠片程も思っていないが、そこは本人の気の持ちようだろう。


ガチャリ


 メンバーが集められた部屋の扉が開かれ、施設の事務官が入ってきた。


「…全員揃っていますね。

 マルコシアス隊の皆さま、手続きが完了したので

 艦に案内します。」


 …………………………。

 …………………。

 …………。


「この通路の向こう、打ち上げ待機ドッグに待機して

 いる艦に搭乗し宇宙(そら)に上がって貰います。」


 どうやら案内はここまでのようだ。


「搭乗してからは待機している艦の艦長にお任せして

 います。」


 同乗させて貰う以上、挨拶はせねば。


「それでは。

 …武運を祈ります。」


 事務官が敬礼して見送ってくる。

 マルコシアス隊はこれより戦争に赴く!


 ……………。

 ………。

 …。


「やあ、マルコシアス隊の諸君。

 私がマルコシアス隊専属駆逐級強襲艦「ブルーシ

 ャーク」の艦長を務めるヘンリック・プライズ大

 佐だ。」


 ドッグに続く扉を抜けると聞いた覚えのある声の、若くは無いが中年という程でも無い微妙な年頃の雄が待っていた。


「マルコシアス隊、隊長のピコ・フローレンス中尉

 にゃ。

 …専属とはどういうことか教えて欲しいにゃ。」


(要塞攻略戦の参加者は軒並み昇級しており、生き残りに関しては二階級特進した。)

 挨拶を返しながら、気になった「専属」について聞く。


「マルコシアス隊が遊撃特務部隊となった事は知っ

 ているだろう。」


 以前辞令が来ていた。


「その任務の性質上、基地所属の艦に間借りするわけ

 には行かなくてな…」


 それはそうであるが…。


「マルコシアス隊の母艦が必要となって当艦が専属

 となったわけだ。」


 てっきり輸送船(カーゴ)二隻で前線基地を拠点に活動するのかと思っていた。


「そして、当艦は戦場でフローレンス大尉の判断の

 下、活動を行う。

 …まぁ、艦の戦闘行為は私が指揮させて貰うが…。」


 これまた驚いた。

 プライズ大佐はピコより階級が3つも上だが、艦の行動はピコに決定権があるようだ。


「ああ、階級の事は気にしないでくれ。

 専属とはそういうものさ。

 …それに本来であれば小佐階級の艦長の艦が専属に

 なるところに無理やり割り込ませて貰ったのでな。」


「どうしてにゃ?」


 大佐階級ともなると、複数の艦を指揮する艦隊司令でもおかしくは無い。

 それを蹴ってまで専属になる理由が理解できない。


「英雄部隊の(いえ)を預かる事は光栄さ。

 それに、そうする事で少しでも借りを返せたらいい

 と思ってな。」


「借り…?」


 正直もしかして、という心当たりはある。


「…こうして顔を合わせるのは初めてだったな。

 要塞攻略戦時、私の艦はフローレンス大尉に助け

 られたんだよ。

 私たちが生きているのは貴官のおかげだ。

 クルーを代表して、改めて礼を言わせてくれ。

 ありがとう、あの時は本当に助かった。」


 …。

 世の中には「自業自得」という言葉がある。

 悪い意味で使われる事の多い言葉だが、本来の意味では「自分の行いは自分に返ってくる」というものだ。

 そしてここにまた、縁が繋がる。


「これからは戦友として共に戦おう。」


 右手を差し出す大佐。


「こちらこそ、宜しく頼むにゃ。」


 ピコはそう返し、両者は固く握手を交わした。


 …………………。

 …………。

 …。


 プライズ大佐についてドッグ内を歩く。

 そして、目の前に専属艦「ブルーシャーク」がその姿を現す。

 紺色を基調とした船体には白いラインと艦後方に1号輸送船、2号輸送船が一体化していた。


「艦のベースは既存のパイク型駆逐艦だがビルフィッ

 シュⅡの複合艦設計を踏襲し、現時点におけるキャ

 トラス軍最速の艦となった。」


 単純に考えれば、駆逐艦にブースターを付けたようなものだ。


「船体は耐弾特殊塗料で塗装され、駆逐艦級でありな

 がら巡洋艦並みの耐久性も得た。」


 ケートス隊の戦闘機に使用されているものか?

 随分と期待と予算をかけられているようだ。


 ……………。

 ………。

 …。


 それからいくらかの雑談を交わし、ブルーシャーク

へと乗船した。


「さて、打ち上げまではまだ少し時間がある。

 ハンガーに君たちの乗機がある。

 確認してくれ。」


 …………………。

 …………。

 …。


「よう、来たな。」


 ハンガーに赴くと、親父っさんを始めとした整備班三人に迎えられる。

 そして5機の特務隊仕様キマイラ。


「こいつはお前さんらの戦闘データを元にそれぞれ

 個別に調整(チューン)されている。」


 正真正銘の専用機というやつだ!


「違いとしては…………………………………

 …………………………………………………………

 ………ってとこだ。」


 親父っさんの説明を聞き、いよいよ自分たちが戦いの真っ只中に赴くという事をひしひしと感じた。


『ビビ-ッ!』


『これより強襲駆逐艦ブルーシャークは第三宙域に

 向け、最大加速で上昇を行う。

 各員、加速と上昇に備え固定具の着用をせよ。

 繰り返す。』


 遊撃特務部隊マルコシアス、ドギヘルス侵攻戦、参戦である。
















~???~


(器だ…。)


 暗く曖昧な空間でその存在は思考する。


(目覚めるのはいつぶりか…。)


 それは目覚めてもいいものか…。


(だが、満ちていない…。)


 しかし確実にそれは滲んでいる。


(「き」が満ちるまでは………………………………)


 その存在は微睡みにある。

 願わくはその時が来ない事を。


 



次回は戦闘パート

(にできたらいいなぁ…。)


いつも読んでいただきありがとうございます。



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