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24 戦禍の輝き

強力な武器も無く、時間も無い。

取れる行動は…。

~ビルフィッシュⅡ フリッター視点~


「艦長、戦況は我らにやや優勢。

 …しかし時間が足りません。」


 三段階のミサイルの一斉攻撃を凌がれたのは大きい。

 あの攻撃で長距離射程かつ、高火力のミサイルが粗方消費された。

 艦砲による破壊を試みるも距離があり威力と精度が大幅に下がっている。


「設定作戦時間まで後一分です。」


 これ以上の戦闘の継続は無意味になる。


「各艦隊に連絡。

 設定作戦時間を越えた場合、付近の兵員を収用。

 その後敵要塞砲の射線上から退避せよ。」


「艦長!」


 戦況分析官の責めるような呼び掛け。

 分かっている。

 我々が生き残ったところで、キャトラスは滅亡する。


「分析官、ジェネレータのエネルギー総生産量の算出

 をしてくれ。」


「艦長?」


 分析官に命じると「今の状況で何を?」と言ったニュアンスで呼ばれる。


「…キャトラス本星にあるオリジナルの十数万分の一

 になるかどうかといったところです。

 先ほどの敵要塞砲の数倍はあるかと…。」


 それでも優秀な我が艦の分析官だ。

 すぐに算出し分かり易く知らせて来る。

 …希望は見えた。


「ビルフィッシュⅡの乗員は各輸送船(カーゴ)に集合。」


 まずはクルーの退避準備を指示する。


「っ!

 艦長!?

 まさかっ!」


 分析官も気がついたようだ。


「各武装へのエネルギー供給を停止。」

 

 なるべく消費は抑えたい。


「各艦隊に通達、ビルフィッシュⅡは目標に対し、

 単艦特攻を敢行。

 敵要塞砲に接近の(のち)、自爆を行う。

 射線上から退避後、全速で現エリアより離脱せ

 よ!」


「各艦に爆発範囲予想を送信しました。」


 それならば巻き込まれる友軍は減らせるだろう。


「武装用ジェネレータ、手動臨界操作。

 起爆前段階で総員退艦。」


「艦長は…?」


 分析官が半ば察しながら問う。


「私の艦だ。

 私がこの艦の最期だ。」


(「必要な犠牲なのだよ、フリッター君。」)


 七十年前の当時の上官の言葉が浮かぶ。

 …違う。

 あんなものではない。


(「俺たちでこの戦争を終わらせるんだ!」)


 何故戦友(とも)はあそこで死ななければならなかったのか?


 (戦争はまだ終わっていないぞ…。)


 先に逝った彼に語りかける。


「設定作戦時間が経過しました。

 撤退に移って下さい。」


 通信官の声に我にかえる。


「ジェネレータ、起爆準備完了しました。」


 敵要塞砲はまだエネルギーを収束している。

 これなら撤退を待つ事が出来る。


「総員退艦。

 今まで良く尽くしてくれた。」


 あとは私だけで十分だ。


「艦長!

 我ら一同、中佐の下で戦えて光栄でした。

 全員フリッター中佐に、敬礼!」


 ブリッジにいたクルー達が一斉に敬礼をして去って行く。

 敬礼を返し見送る。


ポチポチ…タンッ…


「ジェネレータの起爆を遠隔でできるようにした

 にゃ。

 ………退艦しないにゃ?」


 …。

 まったく、この雄は…。


「起爆コントロールを艦長席に。

 あの要塞にこの艦を届け無いといけないのでな。」


 信用していない訳では無いが、確実に爆発させる必要がある。

 本音を隠し、肩をすくめて言う。


「…。

 それにあんな風に別れていて合流するのは格好が

 悪いにゃ。」


 意を汲んでくれたようだ。

 中尉も席を立ち、ブリッジから出て行く。


「…タマ・スタイン中尉。

 皆を頼んだ。」


 未練を身勝手にも、中尉に託す。


「艦長。

 これからも楽しませて貰うにゃ。」


 託された中尉は飄々とした態度で後ろ手を振りながら去って行った。







~1号カーゴ ピコ視点~


ガ…コン…


「1号カーゴ、2号カーゴ、ビルフィッシュⅡより

 分離。

 全速撤退を開始します。」


ゴオォ…


 ディック隊員に機体ごと回収され、治療を受けていると輸送船のエンジンがフル稼働する音がハンガー内にも聞こえて来る。

 1号カーゴにはマルコシアス隊のポッドが全機格納され、2号カーゴにはビルフィッシュⅡのクルーとガーディアン隊の戦闘機が2機格納されているらしい。

(残念ながら二名未帰還となった。)


(艦長…。)


 ビルフィッシュⅡを単独で操船し、単艦特攻を行うフリッター艦長のことを思い浮かべる。

 内核のフレームが露出した自機を見やる。

 駆逐艦を防衛する為とはいえ、起動する間も無く速度にまかせてブレードで敵機を突き刺した。

 その結果が中破した自機に残るブレードだったもの。

 親父っさんが言うには元々の耐久性もあり、いつ折れてもおかしく無かったと言う。

 しかし、もしあの時しっかり起動していれば…。

 一度そんな「もし」を考えてしまえばあらゆる場面の「もし」が次々に頭に浮かぶ。

 もし、ブレードが折れず、砲身を斬っていたら…。

 もし、被弾せず砲にバルカンを撃ち尽くしたら…。

 もし、ミサイルを残していて攻撃できていたら…。


「撤退する艦隊、全艦が予想爆発範囲より離脱。

 速度を維持し撤退を続けます。」


 ビルフィッシュⅡの分析官の声に思考から戻る。


(…本当に他に方法は無かったのかにゃ…)








~ビルフィッシュⅡ フリッター視点~


『撤退する艦隊、全艦が予想爆発範囲より離脱。

 速度を維持し撤退を続けます。』


 …よし、最終段階だ。


ゴオォッ……


 艦のエンジン最大出力。


『キャトラス軍撤退して行きます。』


『馬鹿め。

 撤退したところでグローリーで焼き払ってやる。』


 敵要塞の無線を傍受。

 …「栄光(グローリー)」か。

 単なる巨大なレーザー砲に大層な名前をつけたものだ…。


『………っ!

 敵艦、接近!』


『何だと?

 ………今更何も出来んよ。

 迎撃しろ。』


ドドドドドッ


 敵要塞からの砲火。

 エネルギーを集中しているからか、実弾系兵器のみによる迎撃だ。


ガガガガガッ!


ガクガクッ…


 多数被弾し艦が揺れる。

 だが、ビルフィッシュはその程度の砲火では沈まんよ!


『敵艦、尚も接近!』


『ミサイルはどうした!?』


『既にありません!

 MA弾頭弾まで出し尽くしました!』


 何十年輸送任務をこなしてきたと思っている?


『ピンッ!』


 目標地点到達。

 さあ、受け取れ。


カチッ!


『ピピピッピーッ!』


(ガウル、先に向こうで戦友と待っているぞ…。)


カッ!




ジョージ・フリッター艦長に、敬礼っ!

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