20 前夜
年が明け、軍歴は三年目に突入した。
階級も順当に上がり、小尉となった。
年が明ける直前には敵の動きの理由が判明。
なんと小惑星を丸ごと移動式の要塞へと作り替えていたというのだ!
上層部はこれを緊急の案件とする。
急ぎ第四、第五宙域から艦隊を召集。
敵移動式要塞の破壊作戦が行われる事となった。
ビルフィッシュⅡも本作戦に参加予定で、現在は艦隊の集合まで待機している。
「この作戦は最近で一番規模の大きい戦闘になりそう
だにゃ。」
第五次第三宙域以来、艦隊規模の戦闘は数度。
本格的な要塞攻略戦は無かった。
(今まで誰も欠けていないのが奇跡みたいなもの
にゃ…。)
もちろん全力は尽くす。
それでも現実は甘くない事はわかっていたつもりだった。
…………………………。
…………………。
…………。
…。
数日後、今作戦に参加予定の艦隊の集合が完了した。
今作戦に参加する艦艇は、
普通航空母艦 一隻(艦載 二大隊 72機)
戦艦 三隻(艦載 二中隊 24機)
巡洋艦 十五隻(艦載 一中隊 12機)
駆逐艦 四十五隻(艦載 一小隊 4機)
強襲揚陸挺 二十隻(艦載機無し)
これらに駆逐艦級としてビルフィッシュⅡを加えた
八十五隻である。
移動式要塞とはいえ、中規模の拠点攻略としては動員数が多く、上層部の本気度が伺える。
『アンダーソン大尉、フローレンス小尉、ブリッジ
に出頭して下さい。』
艦内放送で呼び出しがかかる。
フリッター艦長が作戦概要説明から戻ってきたのだろう。
出撃は近そうだ。
………。
……。
…。
「今作戦は空母「ブルーギル」を旗艦とし、戦艦
「スネークヘッド」「カープ」「クルーシャン」
のそれぞれを左翼、中央、右翼の要に巡洋艦、
駆逐艦を三つに分けた配置で進められる。」
まあ、スタンダードである。
しかし、それだとビルフィッシュの配置が分からない。
(揚陸挺は要塞制圧に動く為、各配置の後方だ。)
「ビルフィッシュⅡは左翼の外側で戦闘に参加する。」
艦速は駆逐艦並みだが、火力は軽装巡洋艦程度だ。
妥当だろう。
「各艦所属の部隊は、戦闘機隊が敵移動式要塞への攻
撃を行い、ポッド部隊が艦に向かって来る敵機の迎
撃を担う。」
ならば、マルコシアス隊はビルフィッシュの防衛が今回の作戦での任務になる。
「但し、駆逐艦の艦所属部隊はその全てが戦闘機部隊
の為、ポッド部隊はある程度の範囲をカバーしても
らいたい。」
つまり、艦に張り付いていないで前に出て戦闘を行うということか。
「質問はあるか?」
挙手し発言する。
「我が隊の機体には長距離射撃仕様機があります
にゃ。
その場合、後方からの射撃援護行動をとらせて
良いにゃ?」
「その辺は各部隊長に委ねられている。
基本はそうなると言う話だ。」
「了解にゃ。」
…………………。
…………。
…。
「あ、ピコちゃん。
会議は終わりにゃ?」
ビルフィッシュから降り、基地の中を歩いているとミーコとばったり会う。
(ミーコは基地の衛生官の仕事を手伝っていた。)
「そうにゃ。
ミーコはどうにゃ?」
艦隊が集合している現状、仕事は多い筈である。
「まだ少し残ってるにゃ…。」
やはり。
お疲れ様である。
「でももう夕食の時間にゃ。」
そう言われると途端に空腹感が感じられる。
「それじゃ、一緒に行くにゃ。」
…………。
………。
……。
「おや?
君たちは…。」
ミーコと食堂へ行く途中、どこか馴染みのある顔つきのしかし少し年を食ったような雄と擦れ違う。
「これは小将。
お疲れ様です。」
その場で敬礼をする。
目の前のこの雄は今作戦の旗艦、空母「ブルーギル」の艦長。
つまり、今作戦の総司令官のブルグレイ・スタイン小将である。
「直ってくれ。
…ウィング嬢も元気そうで何よりだ。」
ウィング?
キャトラス軍の重鎮、ガウル・ウィング中将の名が頭に浮かぶ。
「…。
私はマスハッタ-を名乗っています。
ウィング家とは関係有りません。」
あの顔は出会った頃の…。
「いくら別の名を名乗ろうと、血筋は確かにウィング
家のものだ。」
ミーコの顔が更に強張る。
「この作戦が成功すれば、私は中将に内定する。
ガウル中将の権力に頼る事は出来なくなる。
身の振り方を考えたまえよ。」
そう言うと小将は歩き去って行った。
…………………………。
…………………。
…………。
…。
暗い雰囲気の中、味の分からない夕食をとり部屋に戻る。
「「…………………。」」
二人並んでベッドに腰掛ける。
沈黙が落ちる。
「…………。
聞かないにゃ?」
ミーコが問うてくる。
「士官学校の時の悩みに関係するのは分かった
にゃ…。
それ以上はミーコが話したくないならそれで
良いにゃ。」
正直気にはなる。
しかし、簡単に聞いて良い事でも無いことくらい分かる。
「…。
ピコちゃんは変わらないにゃ…。
…いつか。
いつかきっと話すから。
今日はいっぱい甘えさせてにゃ…。」
すり寄るミーコを抱き、思う。
(中将になるから何にゃ?
そしたら軍を抜けてどこかの田舎で暮らせば
良いのにゃ。)
ミーコと二人のスローライフ。
想像するととても楽しい気持ちになった。
…………………。
…………。
…。
翌日、ビルフィッシュⅡを含む連合艦隊は、敵移動
式要塞を攻略すべく、第四宙域第三前線基地より出
撃した。
艦載機総数504機+守護者4機、主隊5機
いつも読んでいただきありがとうございます




