19 不穏の足音
そろそろ三年経ちそうな?
~???~
ダンッ!
カウンターにグラスが叩きつけられる音。
「くそっ!」
キャトラスとドギヘルスの中間。
両星の住民が入り乱れ建設された中立を謳う非公認宇宙都市「ノーサイド」。
その場末の小さな酒場。
そこで酒を飲み悪態をつくケットシーの雄。
(二年前から何もかもうまくいかねぇ!)
アウトローな仕事を生業とするこの雄。
それまではうまくやっていた。
最近は軍の警備が厳しくなり、実入りがすこぶる悪い。
(あの時だ!
あの青い輸送船の仕事を失敗してからだ!)
グイッ
度数が高いだけの安酒を一気に呷る。
ギイ…
コツ…コツ…
蝶番の軋む音とゆっくりとした足音。
「一番高い酒を。」
(気取った注文しやがる…。)
イラつく雄。
スーッ…コン…
「あん?」
カウンターにのせた腕にグラスがあたる。
「一緒に飲まないか?」
自分のグラスを持ち隣に座ったのはクーシーの雄。
明らかに場違いだ。
「犬面が、俺に何の用だ?」
挑発するケットシーの雄。
「…荒れているようだからな。
話して見ないか?
力になれるかもしれない。」
柔和に答えるクーシーの雄。
(…明らかに怪しい。)
そう思うも高い酒を奢られた事と酔っていた事があり、
(話すだけ話してやるか…。)
「大したことじゃねぇ…。
良くある話さ、………………………………………………
………………………………………………………
………………………………………………………
………………………てワケよ…。」
ケットシーの雄が話す間黙って聞き役に徹していたクーシーの雄。
グラスの中は既に空だ。
「なら、復讐してみたくないか?」
「それなら力になれる。」と言うクーシーの雄。
普通ならこの時点で別れるところのケットシーの雄だったが、この時は何故か提案を受け入れたくなった。
「良いぜ。
盛大に利用させて貰う。」
~ビルフィッシュⅡ ブリーフィングルーム~
「敵軍に怪しい動き、ですか…。」
アンソン中尉が呟く。
「ああ、以前より敵軍の動きが活発化している傾向
にあった。」
艦長が話を続ける。
「しかし、今回は主戦場の第三宙域では無く、第四
宙域と接する敵領域の端に敵軍が頻繁に出入りし
ているようだ。」
キャトラスとドギヘルスの領域は第二から第四領域が接していて、資源帯があり、諸に領域の被る第三宙域での戦闘が激しい。
ゆえに、戦力が集まるのはその周辺が定石となっており、今回敵軍の見せている、そこから離れた場所への出入りは異常な動きなのだ。
「詳細は現在調査中とのことだ。
ビルフィッシュⅡはこの敵の動きに備え、第四宙域
第三前線基地を拠点として活動せよとの通達を受け
た。」
つまり、敵の動きがまだはっきりしていない以上、正規の領域所属部隊は動かせ無い為、活動宙域が固定されていないビルフィッシュⅡが取り急ぎの増援として派遣されるということか。
「マルコシアス隊隊長、異論は?」
司令系統が異なる為、確認される。
「マルコシアス隊、異論無いですにゃ。」
断る理由も無い。
「そうか。
では本艦及び、所属部隊ガーディアン隊、艦載部隊
マルコシアス隊は第四宙域第三前線基地に向かう。
以上、解散。」
…………………………………。
…………………………。
…………………。
…………。
…。
「試作機の実験部隊までが第三前線基地に応援に駆け
付けてくれるとは…。
全く、上層部も粋な事をしてくれる。
だが、残念ながら君たちの仕事はまだ無いのだ。
周辺の哨戒でもしてくれていたまえ。」
フリッター艦長と共に司令長官室に到着報告へと行けば、随分な言葉で歓迎される。
長官はビルフィッシュとマルコシアス隊を統制下に置きたく無いようだ。
「そうか。
では我々はこれで失礼する。」
艦長がそう言い、踵を返す。
ピコも敬礼をし、艦長の後に続いた。
…………………。
…………。
…。
その夜。
ピコは割り当てられた外部官宿舎の部屋にて寛いでいた。
久々のしっかりしたベッドである。
(艦のベッドは簡易ベッドの為、軋む音がする。)
態勢を変えても静かなベッドに、柔らかく良い香りのする膝枕に意識が飛びかける。
「今日のピコちゃんは甘えたさんにゃ。
そんなに嫌な事があったにゃ?」
もう一度いうがピコに割り当てられた部屋である。
これまでもそうではあったが、ミーコがいることは最早自然なレベルになっている。
今日も夕食後宿舎に向かい、入室手続きを行ってそのままシャワーを浴び終えたら既にソファに座り待っていたのだ。
(ミーコも当然シャワー後の楽な格好だ。)
そんな些細な事を振り返りつつ、ミーコと話す。
「ここの長官には随分と嫌われたようでにゃ…。」
気持ちは分からなくも無いが、それほど邪険にする程かと思う。
「下手に期待をかけられても、それはそれで迷惑だと
思うにゃ。
寧ろ、自由に動けるのは良い事にゃ。」
逆転の発想というやつだ。
「それに整備や補給の協力をしないって言われた訳
でも無いにゃ?」
(そんな事をほざいたらその時は…。)
久々の黒ミーコが出てきてしまっている!
「そ、そうにゃ。
…それより、仕事の話は終わりにしないかにゃ?」
「…そうするにゃ。」
…やっぱりいつものミーコが一番魅力的である。
「それで、これから二人で話し合うにゃ?」
雰囲気がまた切り替わるミーコ。
頭の感触を惜しみながらも起き上がり、答える。
「もちろんにゃ。
…でも明日に影響しない程度ににゃ。」
…………………………。
…………………。
…………。
…。
あれれぇ~?おっかしいぞぉ~?
ミーコの初期設定は親友止まりだった筈…。
いつも読んでいただきありがとうございます




