5. 真・ダンジョン攻略:その1
「このままでは帰れないので、今から本格的にダンジョン攻略の方に移ろうと思う」
僕とシスコは現在宿屋の一室にいる。
シスコは広げた銀貨を部屋の片隅に移動し、ばんっと地図を広げた。
「え~、でも、もう結構稼げたし、今回はこんなもんでいいんじゃない?」
「フ抜けが!」
「えええ~!!!!!???」
もう出稼ぎは切り上げようと提案した僕を、シスコがおもいっきりビンタしてきた。
痛い!痛いよ!
「いいか。俺達はテレサにダンジョンを攻略してきてやるぜ!といきごんで出発してきたんだ。それなのに、ただただつるはし片手に鉱石を掘ってきましたじゃかっこがつかないだろ?」
「別にかっこなんてつけなくたっていいじゃん。どうせ、やっぱり攻略なんてできなかったじゃない。全くあんた達は駄目駄目冒険者ね。とか言われるだけだよ」
「俺はそれが嫌なんだよ!!」
シスコが大声を上げる。その大声に宿がびりびりと振動したような気さえした。外はどしゃぶりの雨とはいえ、隣の部屋からクレームが来るのではなかろうか。
「わかったからそんなに大きな声ださないでよ。でも、あんだけ鉱石堀りのおっさん達がいたらダンジョン攻略どころじゃないんじゃない?宿屋のおやじさんもダンジョン攻略を目指す冒険者はこの時期にはこないって言ってたじゃん」
「ああ。だから街の外のダンジョンを攻略しようと思う。そのために、わざわざ地図まで買ってきたんだ。これを見てほしい」
シスコはそう言って、床に広げた地図を指さした。
地図を見ると、迷宮都市アムテットと書かれてた場所の回りにいくつか記がつけられていた。
「へ~、街の周りにもこんなにダンジョンがあるのか」
「そうなんだよ。街の周りにも“ダンジョン十五”“ダンジョン二十四”“ダンジョン百二十二”等々、様々なダンジョンがあるんだよ」
「なるほど~」
「だから、きっと攻略にもってこいのダンジョンがあるはずなんだ。というわけで、今日は街の外のダンジョンに行くから準備してくれ」
「あいあいさ~」
こうして、僕達はすぐさま準備をし、ダンジョン攻略に向けて出発したのであった。
しかし......
「おら~いくそ~!!野郎ども!!」
「おお~!!!」
ここは“ダンジョン百二十二”。街から一番離れたダンジョンであった。しかし、そこにも街の中のダンジョン同様、つるはしをもったおっさん達でひしめいていたのであった。もちろん、ここにたどり着くまでにもいくつかのダンジョンに寄ってみたのだが、どこも同じような光景が広がっていた。
「なんでこんなにお金に困ってるやつがたくさんいるんだよ~」
「しょうがないよ。自分達だって同じなんだからさ」
雨の中、地面に膝をつき本気で悔しがるシスコの肩を僕はぽんと叩いた。
「いや、まだだ。まだ諦めないぞ。地図にも乗ってないダンジョンがきっとあるはずだ」
そう言うと、シスコは立ち上がり、闘士をみなぎらせた。
「あったとしても、そんな簡単に見つけられるものなのかな?もう、みんなこの辺は探しつくしてるんじゃない?」
「いや、案外こういうのは見つかってないもんなんだよ。大半の冒険者は地図に載ってるダンジョン位しかもぐらねーよ」
「そうかな?」
「とにかく、俺はこんな中途半端で諦めきれない!帰りたいなら一人で帰っていいぞ」
そう言うと、一人でどんどんと山奥に向かってシスコは歩き始めてしまった。
しょうがないなぁ。確かに僕もちゃんとしたダンジョン攻略とかしてみたい気持ちはあるしなぁ。
「待ってよ。僕も行くからさ」
僕はシスコの後を追い、山奥へと歩いて行った。
雨が降り続き、正確な時間はわからなかったが、次第に辺りが暗くなり始めているように感じた。
「ねぇ。なんか暗くなってない?もう諦めて戻らない?」
「もう少しだ。もう少しで見つけられそうな気がする」
シスコは僕の制止を振り切って歩き続ける。
本当に未発見のダンジョンなんてあるのだろうか。僕はもう、半ば諦め始めていた。だいたい、なんでシスコはこんなにダンジョン攻略にこだわるのだろうか。本当にテレサに願いを聞いてもらいたいのだろうか。僕はシスコの背中をじとーっと見つめながら、必死に山の中を歩き続けた。
すると、突然、シスコが立ち止まった。
「どうしたの?」
「おい、あれ」
シスコがそう言って、そっと前を指さす。
シスコの指の指す方を見ると、切り立った斜面にぽっかりと洞窟のようなものがあいているのが見えた。そして、その洞窟のそばには騎士のような格好の長い髪の人が立っているのが目に入った。
少し距離が遠いため、その人の性別まではわからないが、女の人だろうか。
「ダンジョン!?それに冒険者......かな?」
「きっと、そうだよ。行ってみようぜ!おっさん達もいないからちゃんとしたダンジョン攻略ができるかも!」
僕達は急いでそのダンジョンらしき洞窟をめがけて走り出した。
「ここか......」
「あれ。冒険者の人がいないね」
僕達が洞窟の入り口までやってくると、先ほどは立っているのが見えた女騎士らしき冒険者の姿が消えていた。
「きっと、ダンジョンに挑戦してるんだよ。俺達も負けてられねーな。急いで、ダンジョンに挑戦しようぜ!」
そう言うと、シスコは慌てて洞窟の中へと駆け出して行った。
僕は一人、洞窟の前に立ちつくす。
どんな場所かもわからないのに、突撃できるなんて本当に素晴らしいと思う。冒険者の鏡だ。
僕は洞窟の中に入るのを躊躇してしまっていた。
今まで潜っていたダンジョンは松明が壁に立てかけてあって明るかったし、なによりつるはしを持ったおっさんがたくさんいたから、なんだかんだ安心感があった。
しかし、目の前の洞窟は、壁の苔で若干明るくはなっていたが、十メートル先は見えない位の明るさしかない。
正直ちょっと怖い。
なんだろう。心霊スポットに入るみたいな気分だ。
「おーい。ここやっぱりダンジョンだ。ダンジョン特有の光苔がたくさん生えてるし、それに、見た目より中が広いぞ!!早く来いよ~!!!」
中からシスコの声が響いてくる。
行く、か。
行ける、のか。
どうしよう。どうすればいいだろうか。
僕が悩んでいると、ふと首にかけたお守りが目に入った。
そうだ。僕にはこのお守りがある。きっと僕を守ってくれるはずだ。なんだか心に勇気が充満されていく気がした。
よし、行こう!
「今行くよ!」
僕は意を決して洞窟の中へと足を踏み入れた。




