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異世界ライフが思っていたのとちょっと違う  作者: とんけ
第三章:広がる!?僕の異世界ライフ
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3. ダンジョン攻略に向けた準備

 さて、勢いよく飛び出してみたはいいものの、ダンジョン攻略のためには何を用意すれば良いのだろう。一応いつもの冒険者セットを用意してみたけど、ダンジョン攻略となるとなんだか心もとない。


「他に何か必要なものってあるかな?」

「え、お兄さん、ダンジョン攻略に行くの?」


 僕のその質問に、“グランマの家”のマスコットガールであるメルが驚いたような表情を作った。僕とメルは現在、入口のそばにある受付用の机を挟んで対峙していた。


「うん、お金を稼ぎにね」

「昨日新しい剣を買ってきた時から大丈夫なのかな―とは思ってたんだけど。なんでそんな無駄遣いしちゃったの」

「無駄遣い......ではないと思うんだけど。まぁ、あれなんだよね。梅雨がこんなに続くものだとは知らなくてさ」

「そっか。お兄さん記憶喪失だったもんね。その設定すっかり忘れてたよ」


 設定って言わないでほしいんだけどなぁ。


「それで、ダンジョンに必要な物って何か知ってる?」

「う~ん。ダンジョンの話なんてあんまりしないからわからないや」

「そうだよね~」


 最初からそんなに期待して尋ねたわけではないけれど、身のない回答に僕は深くため息をついた。


「もー、そんなため息つかないでよ。なんか悪いことしたみたいな気分になるじゃん。しょうがないなぁ」


 メルはそう言うと、受付のイスからぴょこんと飛び降りて、ぴょこぴょこと厨房の奥へと消えて行った。


 急にどうしたんだろう。


 僕もメルの後を追いかけようか悩んでいると、メルはおばあちゃんを連れて戻ってきた。おばあちゃんは何も言わずに連れてこられたのか、どこか戸惑ったような表情を浮かべていた。


「おばあちゃんは物知りだからね。きっとわかると思うよ!」


 メルは束ねた三つ編みをひらひらと揺らしならがら嬉しそうにそう言った。


「どういうことでしょうかね?ちょっと状況がわからないんですが」


 おばあちゃんが顔いっぱいに疑問符を浮かべてそう尋ねてきたので、僕はすぐに事情を説明した。お金がなくてダンジョンに挑戦すること。ダンジョンに必要なものがわからないこと。


 おばあちゃんは僕の話を聞いて、こくりとうなずいてから話し始めた。


「そうですか。ダンジョン攻略に行くんですか」

「ええ。梅雨の間のお金がなくなってしまいまして」


 ははは、と笑って頭をかく。


「そうですか。私も数回しかダンジョンには挑戦していませんが、特に特別必要なものはなかったと思いますよ。ダンジョンの中は仄かに光り輝く苔のようなもので覆われていて視界もそこまで悪くはないですし。それに、今はダンジョンの周りに街が発展したといいますし、足りないものがあっても揃えられると思いますよ」

「おお!そうなんですか」


 流石昔は魔術師をしていたおばあちゃんだ。

 まさかダンジョンにも挑戦したことがあったなんて。


 視界も問題ないなら荷物はこんなものでいいかな。


「あ、でもあれはあったほうが良いかもしれない」


 そう言うと、おばあちゃんは一階のおばあちゃん達の居住スペースの中へと移動した。


「すごいでしょ?おばあちゃんは何でも知ってるんだよ」


 移動したおばあちゃんに変わり、メルがぴょこぴょこと嬉しそうにジャンプしながらそう言った。僕はお礼にメルの頭を撫でてみた。


 するとメルはにへへへ~と笑って嬉しそうな顔をした。


 僕は嬉しそうにするメルを見ながら、随分と懐いてくれたものだなぁとしみじみと感慨深い気持ちになる。頭なんて撫でたら怒られると思った。


 やっぱりあの時のクレープがよかったのかな。


 そんなことを考えていると、おばあちゃんが何かを持って戻ってきた。


「これなんですが」


 そう言って、おばあちゃんは手に持っていた物を手渡してくれた。


「お守り......ですか?」


 おばあちゃんが手渡してくれたものは、地球でもよく目にしたお守りのような形をしたものであった。首にかけられるように長い紐がついている。中に何か入っているようだが、口は完全に封をされて確認することはできなかった。


「まぁ、そんな感じですね。そのお守りの中にはダンジョンの魔物が嫌がる物質が入っているのであまり近寄ってこないようになっています。実用性もちゃんとあるんですよ」

「へー、すごいですね。そんな凄いものを僕が持って行ってもいいんですか?」


 よく見ると、このお守りは古いながらもとても大切にされてきたことがわかる。おばあちゃんの思い出がたくさん詰まっていそうだ。


「いいですよ。そういうのは使ってこそ意味がありますから。それに、そのお守りは私もとある冒険者から託されたものなのです。だから、今度は私がタイチさんに託しますよ。大切にしてくださいね」

「あ、ありがとうございます」


 思いがけずに貴重なものを頂いてしまった。


 これは大切に保管し続けよう。


 僕はおばあちゃんから受け取ったお守りをそっと首にかけた。


「いいなぁ。私もほしいなぁ」


 メルが僕の首にかけられたお守りを見て、うらやましそうにそう呟いた。


「ダンジョンの街に行ったら僕が何か買ってきてあげるよ。お土産。おばあちゃんのお守りとは比べ物にならないかもしれないけど、それでどうかな?」

「お兄さんお金ないのにお土産なんて買えるの?」

「お金を稼ぎに行くんだからお土産だって買ってこれるよ......ははは」

「わかった!じゃあ、楽しみにしてるね」


 そう言うとメルはにっこりと笑ってくるりんと回った。


 あら、可愛らしい。


「タイチさん、私の時と随分変わってるかもしれないですが、タンジョンは危険な場所です。気をつけてくださいね」

「はい、きっと無事に戻ってきますね」


 僕は準備した荷物をそっと肩に背負い、二人に向かってにっこりと笑った。


「それじゃあ行ってきます」


「はい、行ってらっしゃい」

「お土産期待してるから頑張ってね」


 僕はこうして“グランマの家”を後にした。



 冒険者ギルドに行くと、シスコは既に準備が終わっていたらしく、足元に荷物を広げて待っていた。そして、やってきた僕に気付いて手を挙げた。


「よう、行くか!」

「うん、行こうか!」


 僕も手を挙げてシスコに応える。


 マリ―もテレサもミーシャもいない、むさい男の二人旅だ。

 うーん。男の二人旅か。なんか嫌な響きだ。 


 なるべく早く帰ってこよう。


 僕はひっそりと決意した。


「ん?どうしたんだ?」

「いや、なんでもないよ。頑張って億万長者になろうぜ!」

「おう!ダンジョンもしっかり攻略して、テレサに願いを聞いてもらうんだ!」


 こうして、僕とシスコの出稼ぎ冒険譚が始まる。



 あ、そういえば、僕の頼れるもう一人の相棒、カラスのボッスンはどうしているのかというと、雨が降り続くようになってすぐにどこかへ姿を消していた。最初はめちゃくちゃ心配したけど、カラスとは思えないほど強いので多分どこかで元気にやっていると思う。

 先輩カカシやガルボも、梅雨の時期になると鳥達はとこかに避難すると言っていたので多分大丈夫だろう。

 

 きっと、梅雨が終わった頃に戻ってくるはずだ。

おまけ情報ですが、タイチはマリ―とテレサの屋敷を追い出されて以降、“グランマの家”で生活しています。ミーシャと一緒に活動するようになってお金に余裕ができ始めたためです。

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