22. 女神様との会合:後編
「これはあれなんですよね。とても言いづらいことなんですけど......」
女神様が可愛らしくもじもじとしながら言いごもる。
「なんでも言ってください。どんな使命だって、気が乗ればやりきってみせますよ!」
「気が乗ればってなんですか。いえ、私にはそんなことを言う資格はないですね。良いでしょう。はっきりと言っちゃいます――――」
一体どんな理由があって僕はこの世界にやってきたのか。
この世界にやってきて約一カ月。遂に明かされるのか!
「ぶっちゃけ巻き込んじゃっただけなんですよね~(笑)」
「......?」
はい?
「いえ、あれなんですよ。あなたじゃない別の人をこの世界に召喚させようとしたんですよ。その召喚自体は無事にうまくいったんですけど、なんか関係ない他の人もたくさん巻き込んでしまったみたいで(笑)」
てへぺろと、女神様が舌を出しておどける。
「え、ちょっと待ってくださいよ!じゃああれですか。僕は特に理由もなく手違いでこの世界に召喚されたその他大勢の一人ってことですか?」
「ええ、まぁ、そう言うことですね(笑)しかも何人巻き込んじゃったかもわからなくて、タイチさんをみつけられたのも、魔剣を監視してたら偶然見つけられただけなんですよね(笑)あ、この人巻き込んじゃった人だって(笑)」
「......」
僕は一瞬固まって、すぐに正気に戻り声を上げる。
「はぁ?そんなのってあるんですか!?ちょっとあまりの出来事になんて言ったらいいかわからないんですけど!というか、女神が(笑)をつけてしゃべるのやめてくださいよ。すごいむかつくんですけど?」
「ごめんなさい。ごめんなさい。だから今回は生き返らせてあげますから許してください」
「生き返らせあげますからって......あなたがこの世界につれてきたから死ぬはめになったんじゃないですか」
僕は女神の反応、その他衝撃の事実にがっくりとうなだれる。
僕がこの世界にやってきたのは何の意味もない?ただ巻き込まれただけ?そんなことってあるのかよ。完全に僕脇役じゃんか。救いなのは僕一人だけがこの世界にやってきたわけじゃないという所だけか。
ていうかあれだからな。
美人だからってなんでも許されると思うなよ?
「本当にごめんなさい」
女神が頭を下げて謝る。
「そもそもどうして召喚なんてしようと思ったのか教えてもらえますか?」
しょうがないので、聞ける限りの真実を聞こうと意識を切り替える。
「それはですね。この世界に魔剣と呼ばれる異世界の異物が突然現れたので、それをなんとかしてもらいたかったのです」
「魔剣をなんとかしてもらいたい?」
「ええ。魔剣は本来この世界には存在しないものなんですが、数十年前に一二六本の魔剣が突然出現したんです。魔剣に殺された魂は輪廻の輪から外れてしまうため、魂の総量がどんどんと崩れていってしまうので危険なんですよ」
「なるほど」
「最初はこの世界の人間に対処してもらおうとしたんですが、魔剣を持った人間はものすごく強くなるため、被害が尋常じゃないことになってしまったんです。そのため、最近はやりの、異世界から勇者を召喚して倒してもらうってのを私もやってみようかなと思いまして」
なんだが最後が軽い気がするが、なんとなくの事情はわかった。
現地の人になんとかさせようとするとそれだけ魂が減ってしまい世界が危険にさらされてしまうから、他の世界の関係のない魂を差し向けることで、仮に負けても被害は出ないし、魔剣を倒せれば問題は解決するという、ノーリスクハイリターンのなんともげすい話なわけだ。
「だったら僕も魔剣を討伐した方がいいんじゃないんですか?」
「え!?タイチさんが魔剣の討伐を?そんなの無理ですよ。タイチさんは普通の人間ですからね。そんなこと頼んだら命がいくらあっても足りませんよ。何を言ってるんですか?死にたいんですか?」
く......なんかこの女神むかつくんですけど
「だったら僕にチート能力を授けたりすればいいじゃないですか」
「それは無理なんですよ。人に分不相応なチート能力を授けるのって、すっご~いエネルギーを使うんです。一人に与えるのが精いっぱいですよ。しかも召喚にもエネルギーを結構使っちゃって今の私はガス欠寸前の女神なので、タイチさんに力を与えるのは不可能です。ついでに現状では元の世界に戻すこともできませんから」
なんてこった。
こんなことなら知りたくなかったよ。
「じゃああれですか。僕はのんびりこの世界で普通に生きていけばいんですか」
「ええ。今のところはそんな感じです。足りない魂の補充になってくれればありがたいです」
「わかりましたけど。なんかわかりたくないような。複雑な気持ちです」
「それは当然のことですよ。あせらずゆっくり消化してください」
女神がにっこりとほほ笑むが、なんだか無性に殴りつけたい。
「どうやっても元の世界に戻れないんですか?」
「うーん。この世界にも召喚魔法というのがありまして、自分で異世界に帰る方法をみつけていただければ戻ることもできるかもしれません。あとは、私の魔力が戻るのを待つかですね」
魂の補充をしたいのなら、きっと魔力が戻っても元に戻してはくれないんだろうな。
僕はじっと女神を睨むも、女神はにこにこしてるだけで何も言ってこない。僕の心の声が聞こえてるだろうに、酷い女神だな、全く。
「女神なのに全然知らないことばかりなんですね。巻き込んだ人が何をしてるのかもわからなければ、この世界のことも完全には把握できてないんですね」
僕は皮肉をこめて言ってやった。
すると、女神はにやりと笑って応える。
「ええ。女神だって全知全能ではないのです。なんでもは知らないわよ、知ってることだけ。です」
「は?」
「どうですか?最近読んだんですよね~。いやぁ、地球はここよりも地味で平凡ですけど、文化レベルは高いですよね~。普通に生きるだけじゃなくて、地球の文化を広めてくれたりしたら私は嬉しいです。あ、もう時間みたいです。それじゃあ、頑張って生きてくださいね~!また何かあったら連絡します」
「あ、ちょっと」
まだまだ言いたいことがたくさんあったが、体がだんだんと薄くなっていき、次第に声も出すことができなくなっていった。
そして、意識がまたも暗い海の中へと沈んでいった。




