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異世界ライフが思っていたのとちょっと違う  作者: とんけ
第一章:始まる!?僕の異世界ライフ
25/69

25. 黒騎士様と同族殺しの魔剣:その4

 Eランク試験や黒騎士様の正体を知ったりと色々あった翌朝、グランマの家のベッドの中で目覚めた僕は、ぼけ~と天井の木目を眺めていた。


「......昨日はなんだったんだろうな」


 僕は洋服の首根っこを広げて胸を見る。

 そこには不自然な幾何学模様の痣があった。


「やっぱり夢じゃないよなぁ」


 この胸の痣が昨日のことを真実であると理解させる。

 仮に怪我をしたとしても、こんな鮮やかな紋章のような痣ができるわけがない。


 隣の寡黙な黒い隣人は、しゃべる魔剣を使い人々に害をなす魔剣を狩っている人だったわけだ。

 てっきり中二病だと思っていたのに。なんだか裏切られた気分である。


 しかし、昨日はEランク試験を終えた後に普通にそのままぐっすり寝ていればあんないざこざに巻き込まれなかったのにな。僕は昨日の選択を激しく悔いる。


 性欲に負けたのがいけないんだ。

 なんであの時行きたくなってしまったのだろうか。やっぱりあれだろうか、死ぬ思いをすると子孫を残したくなるという、よく漫画とかでみかける理由だろうか。確かにゴブリンと戦ってる時はドキドキしていたし、トカゲ人間に襲われた時は完全に死を覚悟した。しかし、昨日の女に殺されそうになった後は全然そんな気が起きなかったしなぁ。よくわからないものである。昨日の自分が、まるで同じ自分とは思えない。手元にお金があったのもよくなかったのかもしれないな。ていうか、結局童貞卒業できなかったよ。くそ!あー、でも、もう怖くていけないよなぁ。あの瞬間が最初で最後のチャンスだったのかもしれない。


「はぁ......しょうがない。行くか!」


 くだらないことで悩んでいても何も始まらない。今日はEランク試験の結果を聞きにいかなければならないのだ。

 僕はがばっとベッドから起き上がった。


 とりあえず朝シャンをして、さっぱりしようか。


 僕はがちゃりと部屋の扉を開けた。


「......」

「うわ!?」


 すると、扉の前には噂の黒い騎士様が立っていた。

 今日もばっちり黒い鎧に身をまとい、黒い大剣を携えている。


「ど、どうしたんですか?ヘルファイアさん」

「......いや、別れの挨拶をしようかと思ってな」

「別れの挨拶?」

「......ああ。用もすんだからこの町ともおさらばってわけだ」

「そう、なんですか」


  真の意味で知り合ってわずか一日でお別れとは。なんとも寂しい話である。そして、最後の日に魔剣同士の争いに巻き込まれた僕はなんて運が悪いんだろうか。


「......昨日はすまなかった」

「いえ、アナタが助けてくれなかったから僕はきっと死んでいましたよ。胸の痣位で住んで良かったですよ」

「......そうか」


 自分の言葉に気付かされたが、確かに僕の言うとおりだ。一瞬前は運が悪いなんて思ったけど、魔剣使いの魔剣狩りであるヘルファイアがいる時だったからこそ僕は助かったのだ。実はすごい運が良かったのだ。


「昨日はすごいかっこよかったですよ。あの重そうな大剣を軽々と振りまわしてるのには度肝を抜かれました」

「......魔剣っていうのは持ち主にものすごい力を与えてくれるからな。俺一人の力じゃない」

「それでもすごいことにはかわりありません。助けてくれたこと、一生忘れませんから」

「......刻印のことも忘れるなよ」

「そうですね。それは忘れたいことではありますけど。ははは」


 僕の胸に付けられたこの刻印はヘルファイアやその魔剣であるギルのことを話すと僕の命を奪うらしい。この刻印をつけられたときの痛みを思えば、それが嘘とはとても思えない。

 胸に爆弾を抱えたような気持ちである。


「次はどこに行くんですか?」

「......まだ当てはない」

「そうですか」



 どのような理由で魔剣を狩っているのかは知らないが、魔剣を狩る度に街を転々と移動していく生活というのはなんとも大変そうである。あんまり話すタイプでもないようだし、きっと孤独な旅なのだろう。

 このままここを拠点に行動すれば仲良くなれるかもしれないのに。

 

 しかし、きっとそうはいかないのだろう。

 ヘルファイアも並々ならぬ理由で魔剣を狩っているのだろうから。



「......じゃあ、な。刻印は離れていても作動するから気をつけろよ」

「げ!わかりました。それではお元気で。また会うことがあったらよろしくお願いします」


 ヘルファイアはばっと振り返り、片手を挙げた。

 去り際のポーズもかっこいい人だ。背負った大剣も仄かに光り輝いていた。ギルも別れの挨拶をしてくれたのだろうか。

 確かに怖い思いもしたけれど、この世界にきて知り合いと呼べる数少ない人間がいなくなってしまうのは悲しいものだ。またどこかで会いたいものである。次は怖い思いは抜きで。


 僕はヘルファイアの姿が消えるまでその後ろ姿を眺め続けた。


 そして、ガチャリ。

 僕は扉を開けて、部屋へと戻った。


 別れの挨拶をしてまたロビーで会ったりするのも気まずいし、しばらく部屋でのんびりしてから準備を始めることにしたのであった。



 そして数分が経った。



「もういいかな」


 僕は朝シャンを浴びるために部屋をでた。

 タッタッタッタと軽快に階段を下りる。


 そして、そのまま食堂を抜けて、裏庭のシャワー室に向かおうとしたところ。


「――――!?」


 なんと食堂にヘルファイアの姿が。

 ヘルファイアが僕の足音に気付いたのかこちらを振り向いた。ヘルファイアと目が合う。

 こころなしかヘルファイアの表情も恥ずかしそうにしているように思う。


「......最後にグラタンを食べてこうと思って」

「......そうでしたか」


 ヘルファイアの前には美味しそうなグラタンが。

 

「じゃ、じゃあ、僕はシャワーを浴びますので」

「......お、おう」


 こうして僕はシャワーを浴びに裏庭へと移動した。

 戻ってくる頃にはヘルファイアの姿は消えていた。

 

 なんとも間の抜けた別れになってしまったが、なんだか彼とはまたすぐに会えるようなそんな予感がしていた。

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