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異世界ライフが思っていたのとちょっと違う  作者: とんけ
第一章:始まる!?僕の異世界ライフ
21/69

21. Eランク試験:その5

 突然現れたトカゲ男はテレサとマリ―によって一瞬で葬られた。それはもう素晴らしい手際であった。まるでこの世の終わりかと思わせる破壊的な魔法と、視界で捉える事さえ困難な俊足と驚くべき威力の剣の一撃。地獄から抜け出してきたかのような凶悪なトカゲ人間も、二人の前ではまるで赤子同然であった。

 テレサの放った雷による轟音で今も耳がキーンとなっている。


「これがCランク冒険者なのか......」


僕は自分との力の格差に愕然とし、地面にへたりこんだ。


「そう、これが私たちの実力よ。私達はいずれAランク冒険者になって歴史に名を刻むのよ」


 テレサを見上げると、杖を高々と掲げ、その表情は自信に満ち溢れていた。

 そうなることを微塵も疑っていないのがよくわかる。


「テレサ、それはおおげさだよ」

「いつも言ってるけど、冒険者っていうのは目標を高く持ってそれを実現させていかなきゃ駄目なのよ。私達はAランク冒険者になって億万長者になるの!」

「やっぱりお金目当てじゃない」

「お金はいくらあっても困らないからね」

「そんな不純な動機でいいのかしらね」

「動機はなんだっていいのよ。高い目標を持って、それを達成していくのが大切なの!」

「そうかしら?世のため、人のために一生懸命頑張るのが大切なんじゃない?」


 テレサとマリーはお互いの冒険者論についてわいわいと言い争っている。その姿は放課後に好きな男の子について語り合う高校生のように自然であった。トカゲ人間との戦いなんて彼女達にとったら大したことはなく、普通のありふれた日常なのかもしれない。自分はゴブリン一匹を倒すのでさえ一苦労だったのに。


「さて、じゃあ今度こそ帰りましょうか」


 マリーがテレサとの口論を止め、へたりこんでいた僕に手を差し伸べた。

 彼女の手を取ると、ぐいっと僕を引っ張りあげた。これでも成人男性だ。体重は60kg近くはある。しかし、そんな僕を彼女はあっさりと引っ張り起こしたのであった。まぁ、いまさら驚かないけども。トカゲ男をあっさり倒してたし。


「そうですね」


 こうして、今度こそEランク試験は終了したのであった。

 『帰るまでがEランク試験です』なんて言葉がこの世界にあるかはわからないけど、マリーとテレサの活躍を見て以降僕の緊張感はすっかり途切れてしまっていた。しかしそんな僕の緊張感に関係なく、帰り道では何事も起きずに無事にモルカドの街へと帰ってきたのであった。


  

 街に着く頃には日は沈み始め、空は橙色に染まっていた。

 ゴールデンタイムは色々なものが綺麗に見えるが、モルカドの街は相変わらずただの壁だ。そして、オレンジに染まった壁の下、巨人が通るのかという位大きな門の横にあいている小さな入口のそばにたたずむおっさんも、はやりちょっぴり怖いただのおっさんであった。 


「お~、お前達、お疲れ様」

「お疲れ様です」

「どうだった?こいつは無事にEランクになれそうか?」

「まぁ、ぎりぎり合格点ってところね」

「そうか、そうか。ウサギにやられてたにしてはよくやったじゃねぇか。よかったな。ガハハ」


 カストルは朝と同じくガシガシと僕の背を叩く。


「ありがとうございます」

「それにしてはなんだか表情が暗いな?」

「ちょっと彼女達との実力差に落ち込んでしまって」

「ガハハ、それはしょうがないだろう。彼女達はこの町でも優秀な冒険者だからな。なんたってCランク冒険者だしよ。それはつまり、この世界で上位十%に入る実力者ってことだからな」

「え!?そんなにすごかったんですか!?」

「おうよ。冒険者の九割がDランク以下だからな。Cランクになるのはすげーことなんだぜ」


 僕はびっくりして二人の方を見る。テレサはにんまりとした笑みを浮かべ、マリ―は少し恥ずかしそうな表情をしていた。


「そんなすごいなんて知らなかったよ」

「今度からはちゃんと敬意を持って接しなさいよね」

「はは~天下のテレサ様。アナタ様には足を向けて眠れません」

「そうでしょう。そうでしょう。オ―ホホホ」

「まったく、テレサはすぐ調子のるんだから。そんなにすごいことではないからあんまり気にしないでくださいね」

 

 マリーは謙遜しているが、上位十%というのは凄いことである。100人いたら10位以内ということだし、部活などでいったら市の大会を乗り越えて都大会に進出するレベルだ。つまり、僕は始めたばかりの冒険者であるにも関わらず、都大会レベルの冒険者と比べて落ち込んでいたわけである。なんだかスケールがちんまりしたような気もするが、比べること自体がナンセンスなことだったというわけだ。

 沈みかけていた気分が一気にもとに戻っていった。


「これからもよろしくお願いします」


 四十五度以上のしっかりとしたお辞儀を披露した。

 これからも仲良くしてもらってこの世界を無事に乗り切ろう。打算的でかっこ悪いかもしれないけど、異世界初心者だし、油断してるとあっさり死んじゃうかもしれないんだからしょうがない。


「ふふふ、なんだかすごい気分がいいわね」

「そんなかしこまらないでくださいね」

「ガハハ、お前本当にかっこわるいやつだなぁ」


 三者三様の反応である。

 まぁ、冗談はこの辺で、僕達は無事に城門を抜けて冒険者ギルドへと移動した。


 

「お疲れ様です」


 ぺルぺルがぺこりとお辞儀をした。

 僕達もそれに続いてぺこりとお辞儀をする。 


「ぺルぺルさん、無事に依頼を達成してきましたよ」


 僕は胸を張ってそう言い、さらに腰袋一杯につまった薬草を提出した。

 ぺルぺルはそんな僕の様子を見てくすりと笑う。


「良かったですね。それではこちらが報酬です。では、ちょっとマリ―さんとテレサさんと打ち合わせをしますのでタイチさんはまた明日冒険者ギルドまできてくださいね。その時に結果を報告しまので」

「わ、わかりました」


 銀貨2枚を受け取った。

 試験結果を待つというのはいくつになっても緊張するもので、僕は今回の試験を監視してくれていた二人の表情を覗き込む。

 

「大丈夫ですよ。ちゃんと討伐できましたし。安心してくださいね~」

「どうかしらね。もしかしたら落ちることもあるからドキドキしてなさい」


 テレサの言葉に僕は一抹の不安がよぎる。テレサのことだから意地悪で落とす可能性も......

 マリ―がテレサをきっと睨みつける。

 

「わかったわよ。多分大丈夫でしょうね。このまま何も起きなければEランクになれるはずよ」


僕はにこりと笑った。


「まったく。あなたってなんで年の割にそう幼稚なのよ」

「いいじゃないですか純粋そうで。それではまた明日ですね」

「はい、よろしくお願いします!」


 僕はまたもきっちりとしたお辞儀をして冒険者ギルドを後にした。

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