12. 雑談とゴミ拾い
翌朝、僕はゴミ袋片手に町をうろうろとしていた。
あれなんだよね。受けた依頼ってちゃんと消化してから次に行きたいタイプなんだよね。
道端に落ちているゴミをゴミ袋に入れる。
本当はもう一度カカシに挑戦してボスカラスをしとめてやりたいところだったけど、昨日はゴミ拾いできなかったから依頼受注中のままになってしまっていたんだよね。
そういうの嫌だからさ。
僕はせっせとゴミを拾う。
うん、決してテレサに会うのが気まずいわけではない。昨日のはっちゃけ具合を見られて気恥かしいわけではない。断じてないのである。
食べかけのゴミやら何やらを拾う。
「しかし、きったない町だなぁ」
「タイチさんがいた町はもっと綺麗だったんですか?この町はそんなに特別汚いわけではないですよ」
「うわ!?マリ―さんですか?」
突然後ろから声が聞こえて振り返ってみると、そこにはマリ―がいた。
最初に会った時のような冒険者風の格好ではなく、シスター風の格好をして、後ろには小さい子供をたくさんひきつれていた。
「そんなに驚かなくてもいいじゃないですか」
マリ―がにっこりとほほ笑む。
修道服をきた彼女の笑顔は防具に身を包んでいた時よりもよりも女の子らしい。んー、本格的にどうなんだろう。一回りとはいかないまでも、だいぶ年下の女の子にこんなにドキドキしてしまうなんて。
ドキドキ。
「いや、ごめん。ちょっとびっくりしただけだよ。ははは」
「そうですか。今日はゴミ拾いをされてるんですね」
「うん、Fランクの依頼はこんなのしかなくてさ」
「私も最初はやってましたからわかりますよ」
「マリ―さんは子供の世話をされてるんですか?」
「ええ、冒険に行かない時は教会の孤児院でシスターをやっているんですよ」
そう言って、マリーは後ろの子供たちの肩に手を置いた。
子供たちも嬉しそうな顔をマリーに向けている。一方で僕の方を見る時はあやしいものをみるような目つきでみている。
「マリ―姉ちゃん、この人誰なの?」
子供の1人が僕を指さしてそう言う。
「この人は新米冒険者のタイチさんですよ」
「冒険者なの!?すげ~」
冒険者という一言で子供たちの目つきが一気に変わり、憧れの対象をみるような目つきへと変わる。
この世界では冒険者は憧れの職業なのだろうか。マリーの冒険譚とかを日ごろ聞いてる影響かな?
「はは、まぁ二日目のまだまだ駆け出しだけどね」
「ちぇ、なんだよ」
「こら、そんな言い方失礼でしょう」
そう言って、マリーは子供をしかる。
「別にいいですよ。本当にまだ大したことはしてないし」
「でも昨日も今日もちゃんと依頼をこなしてるんでしょう?立派ですよ」
「ありがとうございます」
マリ―の瞳をみると、そこには一片の曇りもなく、僕のことをからかっているわけではなく本当に立派だと思ってくれているのを感じる。
僕は照れくさくて頭をかいた。
「こんにちは、マリーさん」
突然後ろから声がかかる。
今度は驚いたりはしない。
振り返ると、そこには昨日の帰り際に会った騎士がいた。
「あ、こんにちは。クリスさん」
マリ―がぺこりとお辞儀をした。
僕もぺこりとお辞儀をする。
「あなたは昨日の冒険者の方ですか。昨日はぼろぼろでしたけど今日は綺麗になりましたね」
「ええ、おかげさまで。あの後洋服も新調しましたので」
ゴミ拾いの前に洋服と靴を買った来たのである。
昨日は予想外の飲み会やらなんやらで結構お金をつかってしまって、洋服と靴を買って残りは0、また無一文へ逆戻りしていたのである。だから今日も昼ごはんは無しだ。はぁ。
「あれ?タイチさんとクリスさんは知り合いだったんですか?」
「昨日体の傷を治してもらったんですよ。マリ―さんとクリスさんも知り合いだったんですね」
「私達はここにくる前の町から知り合いなんですよ。ね、クリスさん」
「ええ、偶然勤務地が重なったんですよ」
「そうなんですか」
こどもたちもクリスさんの周りに集まって、きゃっきゃとしている。
僕とは違って随分懐かれているようである。
ジェラ―。
「ん?どうかしましたか?」
じーっとクリスを眺め続けてしまっていたようだ。
このままいると嫉妬心が爆発してしまいそうだ。
「いえ、別になんでもないですよ。じゃあ、僕はそろそろゴミ拾いに戻りますね」
「え、もういっちゃうんですか」
「ええ、あんまり邪魔しても悪いですからね。では~」
僕はそう言いながら手を振って別れた。
しかし、あれだな。勤務地が偶然一緒なんてすごい運命だな。もしくは案外この世界は狭いのかな。って、別にあの二人が前から一緒にいるとか僕には何にも関係ないでしょう。なんで気になっちゃうかな。
僕はゴミ拾いへと気持ちを戻す。
せっせと拾う。ゴミを拾う。
しかし、カカシだったりゴミ拾いだったり、まるで冒険者らしくないよなぁ。
Fランク冒険者ってどういう扱いなんだろうか。
早くEランクになりたいな。
どうやればランクが上がるのかな。
と、マリ―とクリスのことを考えたり、Fランク冒険者の扱いについて悶々としながらゴミ拾いをしているとあっという間に三つの袋はいっぱいになっていた。
まだ日は高い。
ギュルルルルルルルルル。
僕のお腹が豪快な音を立てる。
「冒険者ギルドで換金してお昼を食べようかな」
僕はゴミ袋を持って冒険者ギルドへと向かった。




