51.神龍再び
ご愛読ありがとうございます。
いよいよ、魔物退治の結末編です。
お姫様がすっかりおいしい所をもっていってしまう・・・。
そして、神龍再びの襲撃。
しかし、王宮では前回の襲撃に懲りて必殺兵器が用意されていた!
斬ってしまった。
斬り裂いてしまった。
小学校、中学、高校と一緒の学校だった馴染の友人達を。
殺してしまった。
自分の手で。
目の前に倒れている優人は胸に深々と傷があって、既にこと切れている。
理緒に至っては、胸から斜めに上下に裂かれている。
怒りに任せて振るわれた剣は竜殺しを倒す為の魔剣だった。
確かに魔王を言われた竜殺しを一度は殺す事に成功した。
正真正銘それだけの威力のある魔剣だ。
間違いだとはいえ友人に振るわれたそれは、そこでも持前の威力を発揮してしまったのだ。
神楽耶と樹里は呆然自失。
大三郎は真っ青になってワナワナと震えるばかり。
「シード、出雲を治療してすぐ治せ。彼は蘇生術が使えるのは間違いない」
冷静だったのは赤の他人の与楽とシード。
貴志は依然意識が無い。
「わかった、すぐ治す」
「いえ、それは困ります。邪竜使いには死んでいていただきませんと」
トリスタンも冷静だった。
彼は子供の戯言に付き合う気などない。
折角死んでくれた竜殺しには、そのまま死んでいて欲しいのだ。だから、治療しようとした少女に容赦なくウインド・カッターを叩き込んだ。
しかし、しっかりと発動した魔法の効果は全くなかった。
シードの纏っていた防壁の方が強力だったのだ。
「ヘンなカッコしたおじさん。あっち行っちゃえ」
首の周りにヒラヒラとした意匠のついている、派手な刺繍入りのポルトガルの装束が彼女には気に入らなかったようだ。
彼女は障壁を展開しつつ、右腕から治療魔法を展開し、左腕をヒョイと振る。
轟!
たちまちに猛烈な衝撃波がトリスタンを襲う。
それでも咄嗟に魔法防壁を展開したのはポルトガル魔法団筆頭の意地だったのか、容赦なく吹き飛ばされた彼は数100m離れた大木に打ちつけられて意識を失った。
治療魔法が効いて来たのか、貴志の顔色には赤味が差して行く。
「ゴフッ、ゴフッ。
ううっ、また殺された・・・のか。
この嫌な感覚には絶対に馴染めない・・・。
頭が回る、ガンガン来る」
やがて、言葉を発するようになってきた。
「いやあ、出雲伯殿。
ご機嫌悪い所に申し訳ないのだけれど、御身の蘇生術で生きかえらせて欲しい人物達がいるのだけれどね」
「ああ?
公爵殿か・・・。
ピンクのお嬢ちゃんが俺を治癒してくれたのか。
ゲホッ、ゲホッ・・・。あんがとな。
俺の蘇生は殺して従魔状態にしたドラゴンの高位ドラゴン魔法な。
これは俺にしかドラゴンは使ってくれない、俺の女房達にも掛けてはくれなかった。
ドラゴンの主以外の人間にはダメみたいだ。
それに死んだ後に掛けるのではなくて、生きているうちに事前に掛けておくもので死んだ奴まで生き返らすものじゃない。
死んだ後じゃ無理だな」
「そうかい・・・。
そうなると後は反魂の術くらいかなあ、失敗すると木偶人形になってしまうから少々不安だけれど」
「与楽様、死んだ人間を生き返らせることができるのですか?」
樹里が縋るように与楽に尋ねる。その顔は涙に濡れていた。
「運次第だねえ、正直あまり自信はないなあ・・・。成功したって話をほとんど聞かないし」
「失敗すると、どうなってしまうのでしょうか?」
「人間としての魂を持たない、生きた死体みたいなモノになる。実際には僕もやったことが無い。師匠が若い頃にやった事があるとは言っていたけれど、もう師匠も死んでしまったからね」
「成功する見込みは?」
「運次第だね。やったことはないし、死んだ人間を生き返らすのは禁呪の最たるものだよ」
「与楽様、今ここでやらなければ二度と出来ない術なのでしょうか?」
今度は神楽耶が立ち直ってきたようだ、彼女も涙と鼻水で大変な顔になっている。
「いや、骨さえあれば大丈夫。荼毘に付した後からでもできる」
「少し考えさせてはいただけませんか。死んだ人間を生き返らせるべきなのかを」
「うん、それは構わない。キミ達が元の世界に戻る時でもね」
「ありがとうございます。何もかもお世話になってばかりで」
「神楽耶ねえ、与楽は人に楽を与える人なんだよ。シーも、クルねえも、リューねえも、シオねえも、みーんな与楽に助けてもらっているの!」
「ええ、本当にそうですね・・・」
「神楽耶ねえ、ホラ元気出して顔に洗浄魔法掛けてあげるね!樹里ねえも」
「なあ、公爵殿。俺はどれくらい死んでいたのだろうか。
俺が魔物の戦場に不在だと不味い事になっていないだろうか?」
「ああ、そっちは大丈夫。
ウチのお転婆達がお婆ちゃん達と伯爵殿の側室を巻き込んで・・・それは盛り上がって大変な勢いになっている。
それに最上と佐竹がもうじきポルトガルの後方を突くだろうし、この戦場も結末が見えている」
「そうか、それは助かるな。そうなると問題はコイツをどうするかって話か」
大三郎は剣を落として、呆然と優人と理緒を見つめるばかりだった。
「ああ、困った御仁だ。僕がしっかりと浦賀水道で始末しておけば、余計な不幸を招かなかったかもしれないねえ」
「まあ、年貢を納めて貰おうか」
「そうだねえ」
「急々如律令!」
貴志は隠形モードでドラゴンを召喚、ドラゴン魔法で大三郎を仕留めようと狙う。
しかし、ドラゴンの召喚に反応したのか突然と魔剣が宙を飛び貴志に襲い掛かる!
「オワッ。なんだ、この剣・・・」
瞬間的にドラゴン魔法の障壁は魔剣を弾いた。
「他に術者がいる。遠隔操作されていると見た!・・・そこか」
少し離れた木の影に与楽の錫杖が投げらつけられる。
微かに何かに掠ったような音はしたものの、仕留め切った断末魔の声は上がらない。
「ちっ、逃げたか?」
危険を感じたメフィストが大三郎とトリスタンを連れて、瞬間移動で脱出して行ったのだ。
「まったく逃げ足だけは見事に速いな。
何か妖怪めいた不思議な気配を漂わせる奴だった。あれは人間なんかじゃない。
遠隔で瞬間移動させる妖怪か。相当に高位の妖怪だねえ、天狗並みかもしれないなあ。
彼は面倒なものを手なずけたものらしいね。
いや、むしろ憑りつかれたのか―何かに憑りつかれて正気を失っているのなら腑に落ちる」
「与楽様、一体何が起きているのでしょうか」
「金子さん、大三郎君は何か妖に憑りつかれているようだ。
こちらの話に耳を貸さないのは、妖と何らかの取引でもしたんだろう。
魔王を倒すと願いを叶えてやるとかね。低位の雑霊でもそうした事をやるけれど、さっきの気配は相当に上位の妖に感じた。
大環なら天狗だろうけれど、さっきの気配は普通の天狗じゃない。西洋の妖なのかもしれない。初めて感じる気配だったね。
そう言えば彼だけはキミ達の中でも強いのだったっけね」
「はい、大三郎はダンジョンで最後まで意識を持ってボス攻略に成功したので、その経験で私達よりも強くなっています」
「ダンジョン?ああ、迷宮のことか。いかにも魑魅魍魎がウロウロしていそうだ。奥底には悪鬼羅刹でもひそんでいたのかな」
この時、遠くの方から大量の悲鳴らしいものが響き渡った。
“ぎゃあ”とも“ガアッ”とも取れるような人間ではない、獣のようなものが大勢で一斉に上げるような断末魔の悲鳴。
「ヤレヤレ、お転婆達が始めたようだね。彼の詮索は後にして、ひとまず戦場の後始末をしてしまおう。
魔物は殆ど残ってはいないだろう。敵兵をさっさと降伏させてしまえばいい。
出雲殿のドラゴンで威嚇でもすれば簡単に終われるのかもしれないね」
優人と理緒の遺体を魔法袋に回収して、ひとまず追討軍の元に貴志を戻して合流する与楽。
与楽とシードの顔は追討軍の隊士は良く知っている。ナニブン決闘騒ぎの原因は自分達の仲間の不始末だ。
その与楽達が貴志を救い出したというのは、いささか追討軍には気まずい物ではある。
しかし、自分達の大将が無事だったのは多いに隊士達の士気を上げた。
与楽と貴志の眼前には、既に夥しい魔物の死体が転がっていた・・・。
与楽達が遠くから断末魔の悲鳴を聞く前に話を戻す。
敵の黒船を鹵獲することに成功したイルマータ魔女軍団。
「ちょっと、お借りしますわ」
ニッコリ笑って、適当な1隻にいそいそと全員で乗り込んでいってしまった。
何しろ公爵家の当主本人のやることだ、宰相から睨まれている外様大名の最上や佐竹では何も言えない。
彼女達はその1隻を持ち出して、風と海流を操作してサッサと船出した。
館山から出て、すぐの富津沿岸にだ。
そこでは大量の魔物達が大暴れしていた。
最初はゴーレムの大軍がポルトガルの魔物集団を追い詰めていたのだが、突然にゴーレム集団の姿が消えた。
そうなると大環側は大騒ぎだ。
武田勢は既に木更津寄りに後退した後。
現地にいたのは、追討軍の40人にも満たない隊士だけである。
瞬時に大ガマや大蛇、大鷹が姿を見せて。
やや遅れてティラノの大軍が召喚されてきた。魔法的な攻撃をしないものの、体格的にはポルトガルの魔物達には勝っている。
もっとも依然として10,000以上いそうなポルトガル魔物軍団に対して、大環側は200~300程度と少数ではある。
それでも大鷹が上空から陸上すれすれまで急降下をすると、凄まじい衝撃波で相当数の魔物が一気に消し飛んでいく。
ただし、休み休みでやる必要があるらしく、それほどの頻度では攻撃できていない。
こうした光景を見て、お婆ちゃん達の血が騒いだ。
「あんなワンコや鳥なんか、やっちゃいましょう!」
富士の演習場に連れて行かれてしごかれている兵士達が聞いたら、思わず泣き出してしまいそうな大胆な意見だった。
初めて富士でケルベロスやキュマイラに追い回される連中は、大抵晩飯が食えずにグロッキーになるものだ。
「そうね。いつもの奴でいいわね、炎系が得意なものはアチラ、氷雪系が得意な者は向こうに、風使いはそちらに。
ああ、だれかレキュアとシェイラを連れて来て頂戴」
「ハイっ、公爵様」
ひゅん。
さらに、ひゅん。
「お待たせしました、お連れしました」
「はい、ご苦労さん。
ねえ、お2人にも手伝って欲しいのよ。あそこのワンコと鳥と猫羊をね。
蒸し焼きにしてしまおうかって、お姉様方が仰るの。
それなら、お2人にも参加して貰わないといけないわ」
「そう言う事でしたら喜んで、ご協力させていただきます。イルマータ公」
「ええ、博多では宝玉のお蔭で助かりました。此度も追討軍にご協力を頂き感謝いたします。イルマータ公爵様」
「さあ、みんな用意して頂戴ね」
“ノウマク サンマンダ バザラダン カン”
“オン アフル アフル サラサラ ソワカ”
“北風のボレアースよ、疾く来たれかし。古の神話に習い、かの魔物どもの生命を略奪されたし”
“輝けるアポローン、今御身の栄光を地上も齎し給え。邪悪なるものを悉く焼き払い給え!”
“偉大なる天空神ゼウスよ、我に力を、地上に豪雨を齎し給え!”
流石に100人にもなると流派が入り乱れて大変なことになってしまうようだった。
しかし、地上に現れた現象は3つ。
炎と水と風である。
それが混ざり合って巨大な蒸気爆発が生じ、そして巨大な蒸気の竜巻がポルトガルの魔物達を飲み込んでいく。
ただし、大環側が召喚したティラノも相当数一緒に飲まれている。
細かい制御が出来ない程度に巨大サイズであったのだ。
この折に魔物達が上げた断末魔の叫び声は相当に遠くにいても聞こえるレベルのものであった。
それを与楽や貴志も聞いたのだ。
かくして地上には多くの魔物の蒸し焼きにして、切り刻まれた残骸が大量にぶちまけられていたのだ。
「うちの子分連中のやる事よりも強烈だな・・・」
「出雲殿の側室が主役だからねえ」
「いやいや、あれは公爵様ご本人と貴殿のご側室が主役でうちのはお手伝いしただけだ」
「・・・まあ、お互いに妙な浮気なんてできない環境だねえ。
とにかく多少残ったのを始末してしまおう」
お転婆娘達を妻に持つ夫たちが、さて仕事だとやる気になった時。
“天空のゼウスよ、不浄なる獣を撃ち殺せ!夜の女神ニュクスよ、地上の獣に死を齎し給え”
“The person that I call for death.Give me power Athena!”
与楽にとっては聞き覚えがタップリあるような詠唱が聞こえてきた。
そういえば2人ともアテナ神殿の巫女を務めたことがある。西洋風の神々の力に依存する魔法を使ってもおかしくないのだろう。
天空から凄まじい雷が地上に降り注ぎ、そして地上は氷原と化して行く。
雷の威力はすさまじく、落ちた場所には直径30m近い大穴があく。
そうしたクレーター状の穴が無数に穿たれていく。
数千にも及ぶクレーターが地上に穿たれ、そうした地上はすっかり氷に包まれた。
そこには生命のあるものはいなかった。
「ああ、これでは魔物退治は終わりだねえ」
「やっぱ、公爵令嬢を嫁にしないで良かった、俺にはムリだ・・・。
与楽殿、アンタはエライ!」
「あれは、あれで可愛い所もあるさ。ベッドの上じゃ甘えん坊だしね」
「ウチのはずっと年上だから、ご奉仕したがるなあ」
「あ、あの与楽様・・・。まだ、ポルトガル軍が残っているのですけれど」
顔を真っ赤にして神楽耶が会話を中断させる。
赤裸々な夫婦生活の実情を暴露する男連中の会話など、乙女には耐えられないのだ。
「そう言えば、そっちの子達も与楽殿の側室なのか?」
「・・・違いますッ。修行をして頂いているだけですっ」
「違う・・・」
「さっきの大三郎って奴と一緒に巻き込まれた異世界の人達だね。ポルトガル王は異世界から適当に人間を召喚したものらしい」
「異世界ってなんだ??」
「仏教的には3千世界があると説くけれど、そうした色々な世界が実際にあるらしい。
僕達の知らない未知の世界が本当にあったんだね」
「ふーん。肉じゃがっていうのが、その異世界の食い物なのか?」
「ええ、そうです。ジャガイモは私達には普通の食べ物でしたから」
「神楽耶、ポルトガル軍が動く」
意外に冷静だったのは樹里だった、武田勢を迎え撃ったポルトガルの大砲陣地が与楽達に向けて射撃準備を完了しつつあった。
「おい、埴輪ども突撃だ!」
貴志が命じると敵の砲撃陣地上空から大量のゴーレムが舞い降りて来る。
身長3mほどの石兵集団だった。
3千体程召喚されたゴーレムは、大砲の射撃準備をしていた要員に襲い掛かる。
そうはさせじと警戒にあたっていたポルトガル兵士たちが、鉄砲に槍で応戦する。
ポルトガル魔法団の要因も相当数いたから、ウインド・カッターや雷撃なども飛び交う戦場と化して行った。
大砲陣地を取られては堪らないとばかりに先程まで魔物を先頭に押し立てていたポルトガル軍本陣もいよいよ前進を開始し始める。
これに合わせて後方に退避していた武田勢からも法螺貝の音が響いて来た。
ポルトガルの魔物の大群が消えたことで、いよいよ勝負と見たのだろう。
黒船が大環の魔女達を乗せて沿岸まで来ているのだから、最上や佐竹もおいおいポルトガルの後方を襲う筈だ。
「うん?
ああ、また大失敗したものだなあ・・・。
さっきの連中がまたロクでもない事をしでかした。シツコク追いかけて殺しておくべきだったか。
出雲殿は配下と王宮へ。
アレの相手は僕がやっておくから」
「なんの事だ?これから戦闘だろう、王宮どころじゃないじゃんか」
魔石利用の緊急通報システムが鳴り響き始める。
“神龍出現、神龍出現。追討軍は対処せよ”
「なんだと!よりにもよって神龍だと!
気軽に対処せよって、どうしろってんだよ。気軽に言いやがって」
「だからさ、僕がソッチをやるからキミの方では王宮の警護を任せたよ。
僕は障壁なんて展開できないしね」
「冗談は止めろ、アレを相手なんてできるのか!?
それに、この戦場はどうする気だ!」
「僕は殺せないよ、それが神龍であってもね。
この戦場なら勝負は見えているさ。
ポルトガルは精々24,000人。
こちらは武田勢だけでも25,000人。
ポルトガルの後方から来る、最上と佐竹でもう25,000人。
更に木更津の本多勢で50,000人。
敵の魔物が消えた段階で勝負なんて終わっているさ。
この戦場は武将の皆さんに任せた方が良い。
魔法師が必要なら、妻達がいるしね。
出雲勢は手薄になっている王宮の警護に回って欲しい」
「・・・わかった」
「しーと金子さん達はリューシャと合流しておいてね。
じゃあヨロシク!」
ひゅん、と消えていく与楽。
「出雲様、神龍というのは一体なんでしょうか?」
「全長が数キロにも及ぶ化け物のドラゴンさ。
俺のドラゴンじゃ瞬殺される。俺の埴輪でも歯が立たなかった。
この世界最強最悪の存在だ。
俺は王宮に行く。後は任せた」
そして貴志も消えて行った。
貴志が王宮について家康と柳生に与楽の出陣と、追討軍が王宮警護に回る事を報告。
「わかった、出雲はただちに王宮から前進してドラゴンで備えよ。
他の追討軍兵士には手伝ってもらうことがある」
「了解です」
さっさと飛び出す貴志は、王都上空で3体のドラゴンを召喚してそこで踏ん張った。
残りの追討軍兵士達は、王宮の地下へと連れて行かれた。
そこにはドラゴンから採集された巨大魔石が2個鎮座している。
「これは何ですか宰相閣下」
「うん、ドラゴン魔石を利用した王都全域を覆う魔法防壁展開兵器とドラゴンブレス発射砲じゃ。
ポルトガルの黒船が王都に砲撃して来たら、これで追い払うつもりじゃった。
相手が神龍になるとは、予想外じゃて。
さて、お主らにはこれをやってもらう。
細かい使い方は天海から聞け、作ったのは奴じゃ」
“ええっ”
全員で辞表を叩きつけて、首に追い込んだ元の上司がよもやこんなことをやっていたとは!
“大丈夫なのか、コレ”
“相当にナニじゃないのか”
“信頼度ゼロ”
ゴソゴソと小声で話し合う小隊長達。
「お前ら、ナニを抜かしておるか!これこそが王都防衛の切り札だ!」
「「「なんか怪しそうな気がする・・・」」」
「ええい、性能はしっかりしておるわい。しっかりと証明してやるわい」
かくして王都上空にはドラゴン3体、そして王宮にはドラゴン相当の兵器が配備という手筈になった。
問題は相手が神龍だという点だろう。
並みのドラゴンでは相手にはならない。
今回神龍を叩き起こしたのはメフィストだ。
大三郎とトリスタンを回収して、マカオに逃走する前に敵を混乱させたかったのだ。
この国で一番怪しそうな霊圧を誇る富士の樹海の神龍を叩き起こして、王宮へ進撃するように焚き付けたのだ。
そうしておいて、大三郎たちをオランダ人に偽装させて海外へと逃走させるつもりだった。
メフィストは大三郎を24年間玩具にしたかったのだ。
今回は仲間を2人殺して、すっかりと大三郎の心は壊れてしまっている。このまま精々悪魔の使い走りとして堕落させていくつもりなのだ。
さて、叩き起こされた神龍である。
前回、相手にしてくれた小僧とまた遊ぶつもりでフラフラと外に出てみた。
しかし、今度は前回と様子がちがった。
待っていたのは1人の若者。
手にしているのはヤマタノオロチを切り裂いたと言われる神剣である。
神龍はひと目見て、その神剣は龍の天敵であることを悟った。
“グオオッ”
神龍は怒り狂った。目の前の若造は自分に挑む気なのだと理解したのだ。
ただの人間風情がこの神龍たる自分に挑む!
なんという身の程知らず。
一瞬で消してやる!
神龍は怒りを込めてブレスを発射した。
しかし、そのブレスは若者を通り過ぎてしまう。
炎の中から何事も無かったかのように若者は出てきたのだ。
なんと、馬鹿な!
神龍は更にブレス攻撃を行った。
それでも、ブレスは若者を通り過ぎてしまう。
炎の中から何事も無かったかのように若者は出てきてしまう。
ますます、怒ってブレスを連発する神龍。
しかし、若者には怯んだ様子はない。
涼しい顔をして、空中を神龍に向かって歩いて来る。
若者が近付くに連れて、神龍は恐怖を覚え出した。
攻撃が通じない。
そして敵の手には龍殺しの神剣が握られている。
神龍はもう自分がどれほど生きて来たのか覚えてはいない。けれども、自分が恐怖したことなど無いことだけは知っている。
生まれて初めての恐怖を、神龍は知ってしまったのだ。
さて、次回は房州騒乱の決着編です。
ポルトガル軍にも、神龍にもしっかりとした結末が待っています。
そして、勇者達の運命は如何に!
乞うご期待。




